#FenderNews / INORAN インタビュー「ジャズマスターには夢がある」

INORAN インタビュー「ジャズマスターには夢がある」

LUNA SEAがREBOOTした2010年以降、ソロを含めアグレッシブに活動を続けているINORAN。今回は愛器である「INORAN JAZZMASTER® #2LTD, Masterbuilt by Dennis Galuszka」、そしてシグネイチャーモデル「INORAN ROAD WORN® JAZZMASTER®」とともに登場してもらい、ジャズマスターへの思いを存分に語ってもらった。

Inoran

ど派手なギターヒーローというよりは、ギターを操る名優といった雰囲気。LUNA SEAファンの間では「いぶし銀にも彩り役にもなれる」と評価されるギタリストが、INORANである。ギターの下げ位置に特徴があり、クリーントーンのアルペジオを流麗に聴かせる彼のスタイルは、多くのアーティストを魅了してきた。「ギターを弾いて20〜30年、どの年代も実りのあるものだけど、2016年は特に多かったと思う」と本人が語るように、LUNA SEA、ソロ、Muddy Apes、Tourbillonを通してフルスロットルで活動を続けるINORAN。その傍らには、いつもジャズマスターがあった。

ジャズマスターとの関係は
深まっていく一方です
 

―  2016年を振り返ると、ライブDVD発売から始まって、SUGIZOさんとツーマンのライブをこなし、Muddy ApesやTourbillonの新しいアルバムを発表、VISUAL JAPAN SUMMITへの出演、そしてMuddy ApesのライブDVD発売......と、リリースもライブも多かった印象があります。

INORAN   自分絡みの今年リリースされた音源と映像、7作品ですからね。

―  凄いですね。

INORAN   2カ月に1作品以上。プロになってからの音楽人生で、一番よく動いた年だと思います。これでLUNA SEAのアルバムがあったら、コンプリートですよ(笑)。

―  アハハ。

INORAN   今の自分のプロジェクトは大きく捉えると、LUNA SEA、ソロ、Muddy Apes、Tourbillonの4つあって、それぞれ気持ちや熱は一緒なんです。そうすると相互作用でいい影響を与え合うんですよ。VISUAL JAPAN SUMMITにLUNA SEAで出演して、その2日後にはTourbillonのツアー のリハーサルがあったり......。それくらい忙しすぎた一年だったので、頭であれこれ考えずに各プロジェクトの魅力を自分なりに体感しながらプレイできる。LUNA SEAのように途中で活動が止まったものもあるけど、ずっと続けているものもある。その時間の流れの中で、いろんなファミリーと知り合うことができた。どれも自分にとって外せないプロジェクトでありバンドであり、今もその人たちと一緒に何かできることが、すごく幸せなので、スケジュール的には当然ハードですけど、結果的に良かったです。まあ、こんな経験ができるミュージシャンってそんなにいないと思います。レコード会社も全部違うから。

―  自分のギタースタイルに関してはどうですか。年々変化しているっていう実感はあるんですか?

INORAN   気づいたら......という感じです。でも、音源、映像、ライブを通じて変わっていってるとは思いますよ。特にジャズマスターに出会ったことが、ここ数年の変化のきっかけになっているのかなと。INORANといえば、いわゆるクリーン、アルペジオっていうイメージがついてるじゃないですか。でも気がついたらLUNA SEAでもうほとんどやっていなくて、むしろTourbillonの方がそういうアプローチは多かったんですよね。

―  INORAN さんのプレイスタイルは、LUNA SEA、Muddy Apes、Tourbillon、そしてソロと本当に幅が広いですよね。

INORAN   そうですね。

―  でも、それらを同じジャズマスターを使って表現している感じが、ライブを観ていてもすごく楽しいです。いろんな可能性を感じさせてくれる。

INORAN   12月23、24日にLUNA SEAのライブ(「LUNA SEA The Holy Night -Beyond the Limit-」)があるんですけど、会場で限定販売する曲 (「HOLY KNIGHT」)のレコーディングをこの間してきたんです。自分のジャズマスターで弾いたんですけど、めちゃくちゃ極上の音してますよ。クリーンのサウンドで、これまでで一番いいかもしれない。

―  最近では INORAN さんのシグネイチャーモデルを弾くアーティストもいるんです。カスタムショップの「INORAN JAZZMASTER® #1LTD」を米津玄師さんが使っていたり。

INORAN   フェンダーというブランドの強さでもあるんじゃないですかね。このジャズマスターはオルタナっぽいサウンドだったらバッチリだと思うし、それ以外のスタイルにも使える実は万能なギターなんですよね。用途が限られてるんじゃないかってイメージがありますけど、実は何にでも使える。

―  INORAN さんがジャズマスターを選んだ理由は、どこかのバンドのギタリストが使っているからとかじゃなく、単に見た目が気に入ったからなんですよね。直感的にいい!と思って、弾いてみたら最高!みたいな。

INORAN   最初は直感的でしたけど、エンドースメントさせてもらってからはフェンダーのファクトリーに行ったりとか、スタッフと親しくさせてもらったりすることで、ギターと一緒に時間が流れている感じなんです。だからジャズマスターに対する思いっていうのは、すごく強いですね。「このギターにはファクトリーで働いている人たちが何百人って携わってるんだ」って考えると、愛おしくて仕方がない。作り手の顔が浮かんできますから。そういう意味でも自分とギターの関係は深まっていく一方です。

Inoran
アメリカ製にはない魅力を持った
ロードウォーン
 

―  アジア・ツアーに行ったとき、香港か上海で音楽関連のメディアの取材を受けたんですよね。そのインタビューを受けた理由が、アジア地域でジャズマスターってそんなに普及してないから、自分がどんどんプッシュしていきたかったと。

INORAN   はい、インタビューしましたね。

―  すごく嬉しかったです。フェンダーのあまり知られていないモデルをアーティスト自らが語ってくれる。なんて素敵なことなんだろうって。

INORAN   ギターの魅力やジャズマスターの良さについて話したりとか、あとは現地のこととか、これから何をしたいかとか話したり......あの時のツアー、現場がかなり混沌としていて僕はあまり覚えてないんですけど(笑)。

―  あら(笑)。

INORAN   そのインタビューで僕が伝えたかったのは、「いいギターを使うと、音楽がもっと楽しくなるよ」ってことですね。値段とか関係なく、本当にいい音がするギターってこと。現地で貸してもらったギターとかリペアがぜんぜんされていなくて、「これって売り物なの?」っていうも のもあったし、だから「いいギター」が広まればいいなって。取材の後、インタビュアーさんに自分のジャズマスター弾いてもらったんですけど、凄い感動してました。そうやって触れるタイミングや出会いも大事ですよね。だから、アジアでも皆がジャズマスターに触れる機会が増えるといいなと思います。きっかけは何でもいいんですよ。僕のギター選びの大事なポイントはルックスですからね(笑)。ルックスがカッコよくないと弾かないですし。ただ、そのおかげで今があるので。

―  INORANさんのシグネイチャーモデルを製作するにあたって、白のジャズマスターのデザインをどれだけ細かく落とし込めるかが第一のポイントだったんです。例えば、横方向(弦と並行)にセットされたスライド・スイッチとか。あとはバズ・ストップも実際あると便利。

INORAN   そうですね。弦が安定するというか。ジャズマスターって割と弦がユルユルになりがちなので、バズ・ストップ・バーがあることで安定性が増すしハリも出る。だからハードなプレイもできる。あとはメキシコ製ってところかな。アメリカ製にはない魅力がある。オールド加工(レリック)を再現するには、ロードウォーンでしかできないなと。

―  確かに。

INORAN   シグネイチャーモデルを出すときに考えたのは、長く弾いてほしいということでした。自分が気に入ってるサウンドをとりあえず体験してもらいたいなっていうのもあるんですけど、できるだけ長くギターと付き合ってもらいたい。そういう意味でもフェンダーでシグネイチャーモデルが作れて良かったです。楽器は見た目もサウンドも変わっていくものだから、ギターに愛情のあるブランドで自分のモデルが出せて、今はパーフェクトな状況ですね。

―  サウンド的にもこだわりましたよね。

INORAN   メキシコ製なんだけど、色々試して USA のアメリカン・ヴィンテージのピックアップが使えるという話になって、実際に使ってみたら「ジャズマスターらしい音がするね」って。

―  ジャズマスターって、例えばソニックユースやニルヴァーナみたいに歪ませるっていうイメージが強いと思うんですけど、INORANさんのライブに行くと毎回驚きます。ジャズマスター1本で、これだけのことができるんだって。

INORAN   ストラトキャスターやテレキャスは分かりやすいスタイルがあるじゃないですか。例えば、「リアとセンターのハーフトーンの音はこれ!」みたいな。そういうイメージが皆の中にあると思うんですけど、ジャズマスターはまだそこまで共有されていないので、そこを開拓していく夢があるんですよ。「ジャズマスターのハーフトーンの音といえばこれ!」というのは、すぐに思い浮かばないですよね。

―  そういう意味ではINORANさんにぴったりのギターですよね。

INORAN   そうですね。逆に「こんなにも自分に最適なギターがあるんだ」と思わせてくれたことに感謝したいです。2010年頃からの付き合いですけど、いろんなことを教えてもらったし、いろんな人に出会わせてくれた。そのすべてを楽器が象徴してますね。

―  2017 年の活動も楽しみにしてます!

INORAN   来年はソロ20周年ですし、たぶんLUNA SEAで動くこともある気がします。LUNA SEAは2019年で結成30周年なんですね。そういったことを見据えながら走り始めていこうと思います。


Inoran

INORAN ROAD WORN® JAZZMASTER®
2013年にFENDER®の最高級ラインFENDER CUSTOM SHOPよりリリースされた「INORAN JAZZMASTER® #2LTD, Masterbuilt by Dennis Galuszka」のスペックを基に、メキシコはエンセナダ工場にて生産。ネック・シェイプやスライド・スイッチ、バズ・ストップなど、INORAN こだわりの仕様を反映し、ピックアップに「American Vintage ‘65 Jazzmaster® Pickups」を搭載するなど、ルックス、サウンドともに本人納得のモデルを実現した。

› INORAN ROAD WORN® JAZZMASTER®製品ページ
› American Vintage ‘65 Jazzmaster® Pickups


Inoran
 
 

INORAN
ロックバンドLUNA SEAのギタリストとして活躍後、1997年よりソロ活動をスタート。2010年にはフェンダーとのエンドースメント契約を締結し、日本人初のシグネイチャー・ジャズマスターを発表するなど、世界に向けて活躍の場を広げている。2016年12月23日(金・祝)、24日(土)には、さいたまスーパーアリーナ 2days公演「LUNA SEA The Holy Night -Beyond the Limit-」が開催。LUNA SEA初のクリスマスソング「HOLY KNIGHT」のCDが会場限定販売される。また、年末恒例のINORAN FCイベント「NO NAME? PRIVATES? #28」が、12月28日(水)心斎橋Music Club JANUS、29日(木)渋谷duo -MUSIC EXCHANGE-にて開催される。

› INORAN:https://inoran.org/
› NEW GEAR:INORAN ROAD WORN® JAZZMASTER® 20th Anniv. Edition