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高みを極めたミュージシャンシップ|ハマ・オカモト インタビュー【前編】

8月2日に最新アルバム『NO MORE MUSIC』をリリースするOKAMOTO’S。フェンダーを代表する日本人ベーシスト、ハマ・オカモトに改めて話を聞いた。

HAMA OKAMOTO

4人組ロックバンド、OKAMOTO’Sが通算7枚目のオリジナル・アルバム『NO MORE MUSIC』をリリースする。古今東西のロック~ポップ・ミュージックをコラージュし、“ロックオペラ”に仕立て上げた前作『OPERA』から一転、ブラック・ミュージックの持つグルーヴを積極的に取り入れOKAMOTO'S流に昇華した本作は、彼らの新たな方向性を指し示す意欲作となった。

もちろん、そんなサウンド・プロダクションは強烈な個性が光る各メンバーが織りなすグルーヴによるものだ。今回はその中でも日本の音楽シーンを牽引するベーシストとしての地位を確立したハマ・オカモトに『NO MORE MUSIC』の制作エピソードを紹介してもらいつつ、フェンダーのエンドース契約から4年経った今、彼が見つめている視線の先はどこにあるのかを伺った。

近年ではベースを一番持ち替えたアルバムかもしれない
 

―  通算7枚目のニューアルバム『NO MORE MUSIC』は、どんなコンセプト、テーマで制作されたのでしょうか。

ハマ・オカモト(以下、ハマ)前作『OPERA』を出した後、昨年暮れに配信とアナログのみでリリースした『BL-EP』という音源があるのですが、そこでの手応えを落とし込んだのが今作です。つまり、今回のアプローチは『BL-EP』から始まっていて。これまでOKAMOTO’Sは、クロマニヨンズなどを手がけている川口聡さんというエンジニアさんと一緒に音源を作り上げてきたのですが、最近ショウとコウキが作ってくる楽曲の傾向が、どちらかというと16ビートを基調としたダンス・ミュージック寄りになってきていまして。そこで、今回はロック畑の川口さんではなく、別のエンジニアさんとやってみるのも面白いんじゃないか?という話になりました。

―  なるほど。

ハマ  「誰がいいだろう?」と考えた時、僕が星野源さんのレコーディング現場で一緒に仕事をしている渡辺省二郎さんがいいんじゃないかと。省二郎さんの録る音、特にリズムセクションには最高だとずっと前から思っていて、今のOKAMOTO’Sの音楽性にもバッチリ合うと思いました。

―  実際にやってみてどうでしたか?

ハマ  素晴らしかったです。元々ダンス寄りだった楽曲が、スタジオで省二郎さんが録る音に触発され、アレンジから何からどんどん変わっていきました。それは『BL-EP』だけでなく、今回のアルバムでも同じでした。実は、よく聴けば今まで通りさまざまなアレンジの楽曲が並んでいるものの、「省二郎サウンド」という柱が1本真ん中にあるだけで、非常に統一感のあるサウンドに仕上がったと思います。

―  よく、楽器や機材に触発されて楽曲が変わっていくという話を聞きますが、それと同様にエンジニアリングによって楽曲が進化していくというのは、とても興味深いです。ビートルズにとってのジェフ・エメリックと、あるいはエルヴィス・コステロにとってのチャド・ブレイクみたいな。

ハマ  まさにそうですね。よく、「エンジニアはもう1人のメンバー」と言いますが、その意識は今回でより高まったと思います。

―  ハマさんのベースのアプローチは、どのように変わっていきましたか?

ハマ  いわゆる、黒人による本格的なブラック・ミュージックというよりは、「ロックバンドが時代の流れでダンス・ミュージックを取り入れました」というイメージで(笑)。AOR、あるいはトーキング・ヘッズのような、ファンキーなニュー・ウェーヴのエッセンスを取り入れたフレーズの方が、きっと合うだろうなと思いました。ただ、そういうアプローチは個人的にはかなりチャレンジでしたね。

―  え、そうなんですか。得意分野かと思っていました。

ハマ  たぶん、他のメンバーよりもそういったジャンルが好きで詳しいが故に、どうしてもハードルが上がってしまって。「Star Light」のベースなんて、一人で5時間以上弾きましたよ……(笑)。今回、初回盤には特典映像としてメイキングがついているので、それを観てもらうと分かりますが、最初サビのベースが自分的にまったくしっくりこなくて。でも、それが他のメンバーには全然伝わらない。「え、どこがダメなの?」という反応がありつつ。いつもだったら僕も、「みんながそう言うなら、じゃあいっか」と、事を済ませていましたが、今回に限っては譲れなかった。そうやってこだわりまくったぶん、今回とても満足のゆく仕上がりになりました。

―  アルバムのレコーディングで使用したベースは?

ハマ  NEKO」と言う楽曲は、70年代仕様のメイプル指板のベース、型番は覚えていないのですが ここ(フェンダー)で借りました。手元にあるPrecision Bassは59年製で、Jazz Bassは元々66年モデルのカスタムショップ。リード曲を録るにあたっては、珍しく「絶対にこういう音」というイメージがありました。それを100パーセント体現してくれるJazz Bassがたまたまここに入ったので、それを購入しました。マスタービルダーはデニス・ガルスカです。あと、さっきお話しした「Star Light」では、絶対にミュージックマンStingrayで弾きたいと思っていたので、79年製をレコーディング中に買いました。アンプはすべて、私物のフェンダーBassman。それに、アクミ・オーディオMotown D.I. WB-3という、「嘘でしょ?」という名前のDIを通して録りました(笑)。

―  そんなD.I.があるんですね(笑)

ハマ  雑誌で紹介されていて、「俺が使わずに誰が使うんだ?」と思って購入しました(笑)。説明書を読んだら、「本機種の性能を100パーセント活かすには、ALTEC 1567Aを組み合わせることを奨励します」と書いてあって。追加で機材が必要なのかよ!と驚きつつ(笑)。仕方ないので、毎日のようにオークションサイトを覗いて、たまたま出品されていた1567Aを落札しました。今回のレコーディングは、すべてこの組み合わせで弾いています。ちなみに星野源さんの「恋」も、その組み合わせで弾いたベースが入っています。

―  結構、ベースは曲ごとに持ち替えたのですね?

ハマ  近年では一番持ち替えたアルバムかもしれないです。今作を作るにあたって聴き直していた、例えばシックやタワー・オブ・パワーのベースサウンドを求めたというか。特にシックはよく聴き直していた時期でもありました。彼らのサウンドの要は、やっぱりStingrayなんだろうなとか。考えてみれば、Stingrayって最近まったく見ないですよね? 僕が中学生の頃は、フリー(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)の影響もあって、結構人気のあるベースだったはずなのに。

―  そういえば、コウキさんがメインヴォーカルを取る「WENDY」が、本作の中でもとりわけ異彩を放っていますよね。

ハマ  今回のアルバムのコンセプトからは相当外れている曲調ではあるのですが、そんなコンセプトやテーマをぶっ飛ばすくらいいい曲じゃないですか。埋もれさせておくのは勿体ないし、こういう楽曲をアルバムに1曲混ぜることで生じる違和感や、ヌケ感、そういう要素も大事だと思って。

―  堂島孝平さんのプロデュースもハマりまくっていました。

ハマ  どうせやるんだったらポップスのプロフェッショナルにガッツリ絡んでもらい、僕たちには思いつかないようなアレンジにしてもらいたいと思い、堂島孝平さんにお願いしました。それだけに、レコーディングに最も苦労したのはこの曲でした。やっぱり他の曲は、メンバーそれぞれの「手グセ」の様なものがあるし、それはもう長い付き合いの中で知り尽くしているところもある。でも、堂島アレンジに「手グセ」の要素は一切ないというか。予想外のコードチェンジだったりするので、「いつもの感じ」では全然弾けないんです。そういう意味では「Star Light」の次くらいに苦労しましたね。

› 後編に続く


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› OKAMOTO'S ニューアルバム "NO MORE MUSIC 8月2日発売!


HAMA OKAMOTO

HAMA OKAMOTO PRECISION BASS® #4
「ありそうでなかった弾き易いプレシジョン・ベース」をテーマに、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)が提案するシグネイチャー・モデル、HAMA OKAKMOTO PRECISION BASS® #4(ナンバーフォー)。ジャズベースのスリムなネック・シェイプを採用し、スムーズな演奏性とプレベ特有のサウンドを備えたユニークなモデル。ハマ・オカモト印ともいえるパドルペグ、ブリッジカバーを採用し、ボディ材には、発色の明るいバスウッドを使用。

› HAMA OKAMOTO PRECISION BASS®製品ページ


ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)
中学校からの同級生で結成された4人組ロックバンド、OKAMOTO’Sのベーシスト。2010年、日本人男子としては最年少の若さでアメリカ・テキサス州で開催された音楽フェス「SxSW2010」に出演。アメリカ七都市をまわるツアーや豪州ツアー、香港、台湾、ベトナムをまわったアジアツアーなど、海外でのライヴを積極的に行っている。これまでシングル8作品、アルバム6作品を発表。2015年9月にはメンバー渾身のロック・オペラアルバム『OPERA』を発売。また、同年11月からは自身初となる東阪ZEPPワンマン公演を含む、全国22カ所をまわるツアー「OKAMOTO’S TOUR 2015-2016 “LIVE WITH YOU”」を年またぎで敢行し、大盛況のうちに終了した。2016年6月からは「OKAMOTO’S FORTY SEVEN LIVE TOUR 2016」と題した、キャリア初の47都道府県ツアーを敢行し、ツアーファイナルは日比谷野外大音楽堂にて開催された。2017年8月2日には約1年半ぶりとなるオリジナルフルアルバム『NO MORE MUSIC』をリリース。また、2017年10月には、東京・中野サンプラザにてキャリア初のホールワンマンの開催がアナウンスされたが、瞬く間に即完し、10月30日より全国23カ所を回るツアー「OKAMOTO’S TOUR 2017-2018 NO MORE MUSIC」の開催も決定している。

› OKAMOTO’S:https://www.okamotos.net/


FENDER×SMA「SUNBURST SOUL SESSIONS」

ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)やOKAMOTO'Sも参加するこの夏のイベント。詳細はこちらから

  • ■ 日時:2017年8月23日(水)
  • ■ 場所:恵比寿 LIQUIDROOM
  • ■ 出演者:山内総一郎(フジファブリック)、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)、澤 竜次(黒猫チェルシー)、Rei、OKAMOTO’S(オカモトショウ(Vo.)オカモトコウキ(Gt.)オカモトレイジ(Dr.))、黒猫チェルシー(渡辺大知(Vo.)宮田岳(Ba.)岡本啓佑(Dr.))、金澤ダイスケ(フジファブリック)
  • ■ チケット料金:立見¥4,320(税込)+ 1ドリンク(別途) ※未就学児童入場不可

チケット情報
 

下記のプレイガイドで一般発売中