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MIYAVI×宮下貴裕 スペシャル対談インタビュー【後編】

世界で活躍するギタリスト、MIYAVIの活動15周年を記念し、宮下貴裕によるブランド〈タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.)〉とのコラボが実現。世界で15本のフェンダー製オリジナルギターが完成した。両者の対談インタビュー後編では、アーティスト・クリエイターとしての“姿勢”を語ってもらった。

MIYAVI

インタビュー後編では、MIYAVIとタカヒロミヤシタザソロイスト.が、普段どういう点を意識してクリエイティヴに臨んでいるのか聞いた。

MIYAVIくんの音楽は、もはや“MIYAVI”っていうジャンル(宮下貴裕)
枠にはまらず、その結果、ギターがカッコいいと思われればいい(MIYAVI)
 

―  MIYAVIさんは音楽の世界で、宮下さんはファッションの世界で、それぞれグローバルな活動をしていると思うんですけど、日本っぽさみたいなのは意識したりすることはあるんですか?

宮下貴裕(以下、宮下)   僕は「日本人だから…」っていうのは、ほとんど意識していなくて、そもそも“洋服”の歴史自体、日本だとまだ短いわけです。MIYAVIくんの音楽も同じだと思っていて、もはや“MIYAVI”っていうジャンルじゃないですか。だからギターも本人にしか似合わないようなものにしようと思ってデザインしました。

MIYAVIすごく嬉しいです。完成したギターにも俺らなりの“日本人”の姿勢が、無意識のうちに出てると思います。

宮下   以前は自分の考えというより、「こういうことをやったら面白いだろうな」というやり方だったんです。でも今は自分の意思を極限まで突き詰めて考えて、「これだったら作る意味がある」と判断したものにしか興味がないですね。

MIYAVI   俺はそのイディオムを持った上で、自分の音楽をどう広めていくのかを考えることが、今すごく大事な気がしていて。マーケットに合わせることはできるんです。例えば、自分の子どもが甘いもの食べたいと言ったら甘いものをあげて、辛いもの食べたいと言ったら辛いものをあげてっていう話でしょ。そうじゃなくて、これも必要だから食べなさいっていう勇気と、それをやり続ける忍耐。クリエイターとしてもやっぱりお客さんに新しいEXPERIENCE(体験)を与えたいですし、「なんだこれは!」っていう興奮を俺は共有していたい。そもそも俺たち作り手が感動しなかったらお客さんも感じてくれないだろうし、そこはこだわって続けてます。ただ、同時に独りよがりにならないようにしないといけない。だから、その前にまず己と向き合うことも大事だと思う。これは死ぬまで変わらない。イチローさんやスティーブ・ジョブズもそうだと思いますけど、自分と向き合って壁を乗り越えて、その結果を周りとリンクさせていく。その作業は孤独ですし、とても険しいですけど、やり続けるのみだと思います。

MIYAVI

―  大変なことも多いですか。

MIYAVI   うん、でもやりがいはあります。世界にどうやって自分の音楽を鳴り響かせられるかっていうのが、俺にとってのチャレンジなんだと思います。

―  海外ツアーから帰ってきたばかりですが、海外に行く度に初めてMIYAVIさんのギターのサウンドやプレイを体験するオーディエンスも多いと思います。そういう人たちの「なんだこれ!?」というリアクションや興奮はMIYAVIさんにも伝わるんじゃないですか。

MIYAVI   そうですね。

―  それって国籍とか性別とか思想とかを乗り越えて、音楽がダイレクトに感動を与えているってことですよね。

MIYAVI   今のこの時代、、なかなかギターミュージックが聞こえてこないじゃないですか。ギターが存在する音楽はあるけど、それがギターミュージックかっていうと別だと思うんですよ。じゃあ、ギターは化石なのかっていうと俺は違うと思うし、初めてジミヘンを聴いた人たちと同じ感覚を今の人たちにも与えたい。でも、俺がジミヘンになろうとしても無理ですし、海外で勝負するとなると、アジア人っていうだけで彼らと同じスタートラインに立てないわけで、やっぱり彼らより2〜3倍凄いことをやって初めてスタートラインに立てる。で、今はエンターテインメントの質が変わってきてるから、普通にギターを弾いてることが必ずしもカッコいいというわけではない。ギターを大音量で弾くだけではなく、人間として何をどう表現するのか。今の時代とリンクする自分なりの音を創り出したいと思っています。

俺は自分のステージにDJを入れたり、曲によってはヴォーカリストをフィーチャリングしたり、俺が今作ろうとしてるのはカリフォルニアロール。寿司職人からしたら寿司じゃないんだけど、でもあれがあったから、これほど日本食が世界に広がったと思うんですよ。それって野茂(英雄)さんがメジャーリーグでやったことにも通じるし、俺は音楽でそれをやらないといけないなと思っています。で、自分には寿司のネタもライスもソイソース(醤油)もワサビもあるけど、カリフォルニアロールで使うアボカドがまだないんです。そのアボカドを、今アメリカに行って収穫してるところ。それは言葉のことでもあるし、メロディラインのことでもあるし、グルーヴのことでもあるんだけど。

―  ジミヘンの演奏を初めて観たレオ・フェンダーが、アームはそうやって使うもんじゃないと言って怒って帰ったっていうエピソードがあって(笑)。

MIYAVI   そうなの!? へえ。

―  レオ・フェンダーは楽器を弾けなかったので、完成したギターやベースの意味づけはミュージシャンに委ねるってところもあったりして、それはすごくロマンがあることだと思ってるんです。

MIYAVI   邪道でいいかなと思ってます。ギタリストの“王道”ではない気がするし、別にそれでいいと思ってる。だって俺、ギタリストよりもパフォーマンスするし、ギタリストよりも叫ぶし。それに、たまに演技もするしファッションの仕事もするしね(笑)。そういう意味では、ギタリストって枠にハマろうとは思わないし、その結果、ギターという楽器を通じてカッコいい、衝撃とワクワクが伝わればいいです。

―  MIYAVIさんの存在感やギタリストとしての考え方は、我々のようなギターメーカーからするとすごく新鮮ですし励みになります。

MIYAVI   だから今日、宮下さんがこのギターを“宝石”と言ったのは、すごくヒントかもしれないよね。フェンダーにとっても。だって、このギターだったら服屋に置いても違和感ないでしょ。もちろん、フェンダーの他のギターでも成り立つと思うけど、これは明らかにそういう要素が強い。

―  確かに。では最後に、このギターを今回手に入れた方にはどういう風に楽しんでもらいたいですか?

MIYAVI   似たような価値観を持った両者がクリエイションに向き合ったコラボレーションだと思うので、ありのままを感じて欲しいです。俺は音で、宮下さんはデザインでスピリットをこめたので。あとは何より手に取って、飾ってもらっても、弾き倒してもらっても自由に感じてもらっていいと思います。

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MIYAVI

Fender / MIYAVI x TAKAHIROMIYASHITATheSoloist. オリジナルギター
すべてのパーツが〈タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.)〉によるオリジナル仕様となっており、ボディ側面にはカービングの施された継ぎ目のないレザーが埋め込まれ、15周年を記念したソロイストオリジナルデザインのコインが一周にわたり打ち込まれている。さらにダイヤルにはオニキスが埋め込まれ、ネック部分にはコラボ名が美しいシェルで刻印されておりステージライトの入射角に応じて刻々とそのギラつきを変化させ、ピックガードはスケルトン仕様でサステイナーの基盤が透けて見え少年心をくすぐるデザインとなっており、さらに2mmの厚さの側面を凹凸加工にしているため、こちらもステージングの際浴びた照明をきらめくように反射させるよう従来のギター製作では考え得なかったファッションブランドならではの見え方に対する工夫がなされている。

また、ストラップもオリジナルレザータイプとなっており勢の限りを尽くしたこれ以上ないスペシャルな一式となっている。宮下氏の数学的であり、様々な生地や付属の特性を活かし、更にスタイリングバランスをも計算されているという洋服作りにおける根幹的な思想、洋服に携わる各個人が“独奏家”として孤高の精神を持ち合わせて欲しいという“TheSoloist.”の願いの部分と、ギターを手に“独奏家”として世界を革新的に駆け抜けるギタリストMIYAVIという存在とがクロスオーバーした作品となっている。

また、楽器としても妥協のないユニークなギターとなった。トレモロ機能付きのテレキャスターブリッジや、フロントに搭載されたサステイナーなど、MIYAVIが愛用しているメイン機の特殊な仕様をそのまま受け継いだ仕上がりになっている。近年のMIYAVIサウンドには欠かせない機能とサウンドが詰め込まれた唯一無二のテレキャスターだ。

デザイン:TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.
メタルパーツ:END
レザー:GROK LEATHER,Rooster King & Co.
https://myv382tokyo.com/15th/


MIYAVI
ソロアーティスト / ギタリスト。1981年大阪府生まれ。ピックを使わず指でエレクトリックギターを弾く、独自のスラップ奏法で注目を集めている。2010年10月リリースのアルバム『WHAT’S MY NAME?』では、ギターとドラムのみの編成でオリジナルのサウンドを確立。2012年11月にさまざまなジャンルの“サムライアーティスト”とのコラボレーションアルバム『SAMURAI SESSIONS vol.1』を発表し話題を呼んだ。ほかにも布袋寅泰、野宮真貴、Good Charlotteらの作品への参加など精力的な活動を続け、2013年6月には自身の名を冠した海外デビューアルバム『MIYAVI』をリリース。さらに2014年にはSMAPのシングル『Top Of The World』を作曲し話題を集めた。また同年の12月には俳優として出演したアンジェリーナ・ジョリー監督によるハリウッド映画『UNBROKEN』が全米で公開された。2015年4月にDrew & Shannonをプロデューサーに据えロサンゼルス、ナッシュビルにて制作されたフルアルバム『The Others』を発表。2016年4月には前作から約1年ぶりとなる音源『Afraid To Be Cool / Raise Me Up』を両A面シングルとして配信でリリースした。8月にニューアルバム『Fire Bird』を発表。2017年、デビュー15周年を記念したオールタイムベストアルバム『ALL TIME BEST "DAY 2”』をリリース。現在は対バンライブ企画「NTT DOCOMO presents MIYAVI 15th Anniversary Live ''NEO TOKYO 15''」を開催中。

› MIYAVI:https://myv382tokyo.com/


宮下貴裕
デザイナー。1973年東京都生まれ。 服飾学校には通わずショップでアルバイトをしながら独学で洋服を学ぶ。 株式会社ネペンテスで企画・バイヤーなどを経て独立しデザイナーとなる。 2009年、「NUMBER (N)INE(ナンバーナイン)」解散・脱退後、一年の沈黙を破り、2010年に「Soloist,Inc.」を設立。「TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.」として再び洋服創りを始動させる。“TheSoloist.”とは、洋服に携わる各個人が、“独奏家”として孤高の精神を持ち合わせて欲しいという願いであり、また再び洋服の世界へ戻ってきたという自分への不退転の決意の表れである。

› TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.:https://www.the-soloist.net/