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Why We Play vol.2:うじきつよし インタビュー【前編】

音楽と人、そして楽器。さまざまな表現手段の中から、なぜギターを選んだのか?そんな素朴な疑問にフォーカスを当て、ギタリストの内面に深く迫る連載企画「Why We Play」。今回はうじきつよしさんの登場です。

Why We Play

そのユニークなバンド名とは裏腹に、TVアニメ『北斗の拳』の主題歌をはじめ本格的なロックサウンドを奏でて1980年代に一世を風靡した、「子供ばんど」のボーカル&ギターうじきつよし。吉川晃司やアンルイスらのサポート・ギタリストを務めた彼は、1990年以降はミュージシャンのみならず、俳優やテレビ番組の司会者など様々な分野で今もなおマルチに活躍し続けている。

子供ばんど時代は通算2,000本のライヴを行うなど、ギターに明け暮れる日々を送っていたといううじき。その反動からか、バンド解散後は全くギターに触っていない時期も少なからずあった。歳を重ねていく中、音楽やギターとの付き合い方について彼はどのように変えていったのだろうか。

グループサウンズがきっかけでギターを弾くようになった
 

―  まずは、うじきさんが音楽に目覚めたきっかけを教えてもらえますか?

うじきつよし(以下、うじき)   小学校三年生の時に、3つ違いの姉貴の同級生がすごくませた小学校六年生で。小学生のくせにバンドを組んで、モズライトもどきみたいなギターを弾いてたんですよ(笑)。当時はザ・ベンチャーズと日本のグループサウンズ・ブームの真っ只中で、姉貴がその子から借りてきたタイガースやスパイダースのレコードを、僕も聴いているうちにどんどん夢中になっていったのが、そもそものきっかけですね。さらに8つ違いの従兄弟は、グレコのリッケンバッカーモデルを持っていて(笑)。夏休みになると、彼のところへ行ってギターを教えてもらうようになったんです。家では姉貴が持っているクラシックギターで復習するんですけど、エレキとは音が全然違うわけじゃないですか。それでフォークギター用の弦をクラシックギターに張って、ネックが思いっきり反って怒られたりしていました(笑)。

―  (笑)。自分で本格的にバンドを始めたのは?

うじき   中学校に上がってからですね。すでにベンチャーズのギターをマスターしているやつがいたんですよ。「金井くん」っていうんだけど(笑)。ギターの金井くんは野球も上手い上に、ノーキー・エドワーズ(ベンチャーズのギタリスト)のプレイを完コピするんです。あと、クリーニング屋の日詰(昭一郎)くんっていうのは、同じ中学だったけど軟派なのでグループサウンズや歌謡曲が好きで。彼もめちゃくちゃ上手くて、後にTMネットワークのサポートベースをやったりするんです。それからドラムの豊田(邦仁)くん。この4人でバンドを結成するんだけど、僕が一番ギターが下手で、残ったベースをやらされてた。

―  最初はベーシストだったんですね。

うじき   そのうちに、世の中はハードロックが主流になっていくんですね。中学に上がったのがウッドストック直後だったから、ディープ・パープルやレッド・ツェッペリン、などが登場して。「どうやらギターの音が、ベンチャーズとは違うぞ」という話になり。ファズというエフェクターを使っていることが判明するんだけど(笑)、ベンチャーズの上手い金井くんとは相性が合わなかったみたいで。そのうち野球も忙しくなり、辞めてしまうんですよね。しかも、今までインストだったのがヴォーカルも必要になって。試しに僕が一番高い音が出たんですよ。それで「お前歌え」ということになり、「グランド・ファンク・レイルロードならジミヘンよりも弾きやすい」という理由でヴォーカル&ギターに転向させられた。マーク・ファーナー役になったわけです。

―  望んでヴォーカル&ギターになったわけでなく、余ったパートがたまたまそこだったと(笑)。ギターはどうやって練習していたんですか?

うじき   まずはグランドファンクを完コピしようと思ったのだけど、当時YouTubeなんてもちろんないし、動いているマーク・ファーナーを見る術がなかったんですよね。なので、とにかく聴きまくってコピーしていました。昔、テープの再生スピードを変えられる「英会話用の録音機」があって、それで曲をゆっくり再生しながら練習していましたね。あとは、アマチュアのバンドコンテストなんかがあると、それを最前列で見て勉強していました。「おお、こういう音を出したい時、ギターはこう動くんだ」みたいな感じで。それが一番の上達法だったかな。『A ROCK』という、神田商会が主催していたアマチュアロック祭が始まって、キャロルやファニー・カンパニー、キャプテンひろ & スペースバンド……。とにかく、食い入るように見ていました。

―  高校に入って、スティーヴ・マリオットに傾倒したそうですね。

うじき   そうなんですよ。「バンドやるのは女の子にもてたい軟派」みたいに言われるのに抵抗してたころ、「新宿厚生年金会館で見たハンブルパイのコンサートに衝撃を受けて。スティーヴ・マリオットの「男としてのかっこよさ」というか、「これぞ男が惚れるロックだ!」と思ったんですよね。ブラックベリーズっていう黒人女性コーラスグループを従えて、MCもほとんどせずにフルパワーで歌い続けるんですよ。「これだ! 俺はスティーヴ・マリオットになるんだ」と。その頃には完全にバンドに夢中になっていました。徐々にオリジナル曲も作るようになり、本気でプロを目指そうと考えるようになったのもこの頃です。

―  他のメンバーも同じ気持ちでした?

うじき   それが、全員辞めちゃうんですよ。高校卒業する頃、豊田くんはコスモスファクトリーに引き抜かれ、大友くんは「カタギになる」って言って脱退し(笑)、日詰くんも「俺はソロになる」と言い出して。メンバー俺一人になっちゃった。だから、高校卒業の時はやる気だけが空振りしている状態で、結構どん底だったんです。それを見かねた当時の音楽仲間が、僕にメンバーを紹介してくれて。のちにバービーボーイズに加入する安部(隆雄)くん、谷平こういち (ギター)くん、山戸ゆう(ドラム)くん。安部くんはすぐにやめてしまって、そのあとに湯川トーベンが、「俺が手伝ってやるよ!」とものすごい上から目線で入ってきた(笑)。それが子供ばんどのデビュー時のメンバーです。

› 後編に続く

 
うじきつよし 使用機材
 
Why We Play

PM-1 STANDARD DREADNOUGHT ALL-MAHOGANY
ParamountシリーズPM-1 Dreadnought NE, All-Mahoganyは、シンプルなスタイリングとオーガニックなフィニッシュを組み合わせた、レスポンスの高いアコースティックギター。トップだけではなく、ボディ、サイドも単板マホガニーを使用することでリッチなサウンドを出力。

› PM-1 STANDARD DREADNOUGHT ALL-MAHOGANY 製品ページ


うじきつよし
1957年、東京都生まれ。子供ばんどのヴォーカル、ギター。1980年、アルバム『WE LOVE 子供ばんど』でメジャーデビュー。88年にライヴ通算2000本を達成、活動休止となる。2011年に再始動。以降、2枚のアルバムをリリース。ライヴも不定期ながらコンスタントに行っている。

› 子供ばんど:https://kodomoband.jp