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HSU インタビュー:ストレスフリーなアクティブベース

2016年の春から「AMERICAN ELITE JAZZ BASS® V」を使用するHSUこと小杉隼太。Suchmosの精神的支柱でもあり、バンド始動前はセッション・ミュージシャンとして経験を積んできた生粋の音楽家でありコンポーザー、そんなHSUにインタビュー。

HSU

アメリカンエリート・ジャズベースの5弦モデルを愛用しているHSU。Suchmosと並行してSANABAGUN.でも活動する彼は、2016年の夏フェスシーズン時は20本以上のステージをこなしたとのこと。そんなときでも常にベストパフォーマンスを引き出してくれたベースが、アメリカンエリートだった。抜群の安定感とタフさ。「何も偽りなく、リアルに良い」と語るHSUに改めてその魅力を語ってもらった。また、多彩なアンサンブルが堪能できるSuchmosの新作についても話を聞いた。

「足元に頼らなくても、このベースだけあればどうにかなる」
 

―  HSUさんが使っているアメリカンエリートの5弦ベース、昨年は夏フェスをはじめ様々なライブの現場で弾く機会があったと思いますが、率直な感想は?

HSU   普段、アンプ持って行けるときと持って行けないときがあるんですよ。それに会場に置いてあるアンプ一つとっても、あんまり良くないこともある。そういった周囲の環境に関わらず、安定したアベレージを叩き出してくれたなと。すごくいい意味でノーマル。フラットに鳴ってくれるというか。

―  アクティブでずっと使ってるんですか?

HSU   アクティブっぽくないところがいいんです。スラップするときに、ちょっとハイだけ上げたりできるのが調子良くて。

―  手元にアンプがある、みたいな。

HSU   その感じがちょうどいい。

―  ライブとの相性もいい?

HSU   めっちゃ威力発揮しますね。例えば「このアンプ、低音がぜんぜんダメだ」ってとき、アンプ本体の「BASS」ツマミは2くらいにして、ベースの「MIDDLE」ツマミを上げると、ちゃんとした輪郭のある音になる。足元に頼らなくても、ベースだけあればどうにかなるっていうのは、こいつがアクティブだからだと思いますね。

―  アクティブ回路は18Vで効きが結構強いのに、選択肢は豊富というか。

HSU   アプローチが広がりますよね。俺は昔からイコライザーめっちゃイジるタイプだから。毎回どうイジってるのか分からないけど、環境に合わせて変えたりするのが好き。そういう意味でも使えるんですよ。

―  アクティブベースって「パワーをガンガン出す」みたいなイメージだけど、本当は音の微調整にすごく適してる。

HSU   そうそう。アメリカンエリートのベースは、ジャズベースやプレシジョンベースっていうトラディショナルなモデルのサウンドの特徴を損なわずに肉付けされていて、その上でアクティブの幅広いアプローチが実現できている。それが他のブランドのアクティブとは違うところかもしれない。俺自身、そもそも楽器には無頓着なほうだったりするんです。良いところより悪いところに目がいく。楽器を弾いていると、気に入った部分より気に入らないところにフォーカスしちゃうことが多いんです。それを考えると、こいつは気に入らない要素が無い。ストレスが明らかに無いですね。

―  プレイアビリティに関していうと、コンパンウンドラディアス指板なのでハイポジションになるにつれてフラットになっている――そういう点もストレス軽減になっているかもしれないですね。

HSU   やっぱり「良い楽器」って、悪いところがぜんぜん目立たないってことが一番の特徴だと思うんですよね。すごく気になるところはあるけど、どこか一つだけ良いところがあって、その感じがめちゃくちゃ可愛いから許す……みたいなのって、見かけのことだったらいいかもしれない。でも、弾いてるときの障害としてあると致命的だと思うから。

―  この半年で電池交換ってしました?

HSU   一回変えましたね。でも、それはシールドを挿しっぱなしにしてた時期があって、そのせいだと思います。普通に使ってたら簡単には切れないから。夏の間、ハードケースに入れて持ち運んでたんですけど、機材車のトランクの中って過酷な状況じゃないですか。たぶん温度も50度くらいになるんじゃないかな。でも、こいつは20本以上のフェス現場を耐えましたからね。俺の場合、古い楽器とかトランクに入れっぱなしにして、2カ月くらい経ったら意味分からないくらい曲がってたことがあるんです。このベースも1カ月くらい弾かなかったときがあったけど、まったく平気でしたね。タフですよ。あとアンプに関してはBASSMAN500、BASSMAN410を使っていたから、ベースもアンプも20本以上の夏の現場を余裕で生き残りました。俺が実証済みです。たぶん、実証してみせたミュージシャンって、俺が初めてだと思う(笑)

―  (笑)会場で他のミュージシャンから「いい音だね」って言われたりすることも多いのでは?

HSU   言われることはあるけど、俺は自分の外音って聴いたことないし、果たして「いい音」がどういう感じなのかは分からないですよね。というか、元々がカッコいい音じゃなかったら、何を弾いてもカッコ悪いと思うんです。歌に喩えると「声」と一緒で、声がカッコいいと歌がカッコよくなる。だからベースの「音」もすごく大事。俺は指先で音を作るタイプなので、その妨げにならない相棒がベストなんです。そういう意味でも、こいつは細かいニュアンスも表現できるし、カッコいい音が出せる。

「カッコいいと評価されたら、それをやり続けないと意味がない」
 

―  Suchmosの最新アルバム『THE KIDS』ですが、HSUさんは今回の制作にはどういう意識で臨んだんですか?

HSU   いろんなジャンルを混ぜ合わせて新しい曲調を作りたいよねっていう感じで、アンサンブルのバランスを考えたりしながら皆で作っていって、その結果、Suchmosならではの秘伝のレシピが今回完成したんですよ。このバンドはメンバー6人が各自の楽器をフラットに見れるし、楽器への造詣もしっかりある。俺自身、鍵盤、ギター、ドラムのことが分かるし、鍵盤にボイシングのことを言ったり、ギターにリズムのことを言ったりする。他のメンバーも同じです。意外かもしれないけど、パズルを組み立てるように緻密に作ってあるんですよね。感覚だけじゃない。

ファースト(『THE BAY』)を出して、このセカンドで本当のSuchmosっぽさというか、いろんな要素が凝縮できたかなと。お洒落なサウンドって捉えられるのは別にいいんですけど、そういう雰囲気の音楽がいっぱいある中で俺たちは何が違うのか、そのスパイスみたいな部分を完全に確立した作品だと思う。もうこれでいよいよ、似たようなことをやるバンドが今後出てきたとしても、俺たちの二番煎じでしかないっていうか。

―  (笑)楽器への造詣について話してたけど、6人のやり取りにも興味があります。

HSU   バンドマンの中にはそういうことを話さない人もいると思うけど、俺たちは「そのテンション、ギターとぶつかってるよ」とか、とにかく会話をたくさんする。オンコードとか複雑な話もするし、全員がそれを共通して理解できるんです。スタジオでセッションしてボイスレコーダーで録音して、後から聴いて調整したり、尺を覚えて演奏したり……って、いわゆる「バンドの曲作り」を未だにアナログでやってる。だからレコーディングの段階でダビングとか殆どしないし、スタジオの時点でフレキシブルにいろんなアンサンブルが試せるんですよ。鍵盤とDJもいるから。

―  邦楽・洋楽関係なく、今こういうサウンドを鳴らしているバンドって、他にいないよなぁって思いましたね。

HSU   でも、海外の音楽のルーツはちゃんと取り入れてるから。それを俺たちが日本人流に解釈することで、Suchmosっぽさになってると思う。例えば、ディアンジェロが何に影響を受けたのかとか、オアシスが何を聴いていたとか、自分が好きなアーティストのルーツを調べて聴けば、彼らと同じファクターがあったとしても別のアプローチになる。そのルーツは大事にしたいなと思っていて。だから、そのルーツを欠いて同じような音楽を鳴らしているバンドは学習してないなって思いますね。この時代、感覚だけでは難しいですよ。もう少しいろいろ考えないと新しいもの作れないなって。

―  新しいものを作りたいのなら、そうあるべきですよね。

HSU   新しいことやりたいし、それってマインド的なロックっていう部分もあると思うんです。リアム・ギャラガーが「ロックは好きなことをやって勝つ」って言ってて、気持ち的にはまさにその通りで。好きなことをやるだけだから。たとえ誰かが「もっとポップな曲を作ってくれ」とか「“STAY TUNE”っぽい新曲を作ってくれ」とか言ってきても絶対に作らない。作らないっていうか、作れないですよ。作った時は、そういう時期だったんだから。ただ、一度カッコいいと評価されたら、自分たちがカッコいいと思うものをやり続けないと意味がないなとは思ってます。音楽に対して純粋でいること、それをバンドで作ること――。それができている今、すごく楽しいです。

HSU

AMERICAN ELITE JAZZ BASS® V
最先端のサウンドを求める、モダン・ベーシストに最適なベース。ピック弾き、指弾き、スラップなど、どんなプレイスタイルにも合うバリエーションに富んだサウンドは、フェンダーらしさのなかにも新鮮さを感じさせてくれる。第4世代ノイズレス・ピックアップや内蔵されている18Vのプリアンプにより、真のヴィンテージスタイル・サウンドをノイズレスで楽しむことができる。コンパンウンドラディアス指板を搭載し、速弾きやポジションチェンジも容易に。ネックシェイプはモダンCシェイプ、ネックヒールにかけてDシェイプになっている。

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HSU
神奈川県横浜市出身。家族の影響で音楽を聴いて育ち、自然とギターやベースをプレイするように。2013年1月にSuchmos結成。ベース担当のHSUの他、YONCE(Vo)、OK(Dr)、TAIKING(Gt)、KCEE(DJ)、TAIHEI(Key)の6人編成。ロック、ジャズ、ヒップホップなどブラック・ミュージックにインスパイアされた Suchmos。バンド名の由来は、スキャットのパイオニア、ルイ・アームストロングの愛称サッチモから引用。メンバー全員神奈川育ちで、都内ライブハウス、神奈川・湘南のイベントを中心に活動を続けている。1月25日には1年6カ月ぶりとなる最新アルバム『THE KIDS』をリリースした。HSUはSuchmosの他にSANABAGUN.のメンバーとしても活動中。

› Suchmos:https://www.suchmos.com