#FenderNews / NICO Touches the Wallsインタビュー【後編】

Telecasterを試奏した瞬間「あ、これだ!」ってピンときました  | NICO Touches the Wallsインタビュー【後編】

Oral Cigarettes

【リード】 ライヴやレコーディングで、フェンダーのギターやベースを愛用するNICO Touches the Wallsの光村龍哉、古村大介、坂倉心悟。それぞれStratocaster、Telecaster、Precision Bassと、王道を行く使用楽器でありながら、やはりメンバー個々のこだわりがそこには盛り込まれている。彼らにフェンダーとの出会い、その魅力、存在について語ってもらおう。

テレキャスはどうやってもいびつなギラっとした音になる
 

―  フェンダーの魅力について伺いたいのですが、出会いはいつ頃ですか?

光村龍哉(以下:光村) 僕は高2でした。高校の軽音部でザ・ビートルズのコピーバンドを文化祭でやることになって、じゃあ、リッケンバッカーを買うしかないなと。それで、お茶の水の楽器店に行ってバイトで溜めたお金で買おうと思ったんです。そこで初めて試奏したんですけど、それまでアコギしか弾いてこなかったので、何て弾きづらいギターだと思って。ネックは細いし、あまり力強く弾くとチューニングに問題があるし、これは買いたくないと思って諦めたんですよ。“どうしよう、でもエレキは欲しいんだよな”と思いながら、別の楽器屋さんに行った時、今も使っている52年モデルのTelecasterのヴィンテージ、ボロボロの見た目だったんですけど、それがパッと目に入って。それを試奏した瞬間、あ、これだ!ってピンときました。

―  どのへんが気に入ったんですか?

光村 アコギに感覚が近かったんでしょうね。鳴りもいいし音も太かったし。エレキってアンプを通したり歪ませたりして、わりと誇張された音が鳴ることが多い中、テレキャスはあまりそういうものが出ないんです。どうやってもいびつなギラっとした音になるところがアコギと近いなと思って。これなら弾けるかもっていう感じで選びましたね。

―  そこからはずっとそのTelecasterですか?

光村 デビューまでそのテレキャスでしたね。今、ギブソンのセミアコも使うんですけど、フィーリングが非常にテレキャスに近いんです(笑)。何かテレキャスに近いギターを選んじゃう。見た目はES-335でミニハムバッカーが載っていて。335の音がしないって言うと怒られそうですけど(笑)。でも、テレキャスの遺伝子があるような感じがして使っていますね。

―  今日、持ってきていただいたギターは?

光村 Stratocasterです。家でデモを作る時に使っているギターで、これも、いろいろストラトを探して買ったんです。ジョン・メイヤーの来日公演を観に行って、メチャクチャカッコいいと思って。僕もストラトを1本ぐらい持っておきたいなと思って、スティーヴィー・レイ・ヴォーンみたいな感じのストラトを探してみたんですけど、どれもしっくりこなかったんです。そんな中、このストラトはテレキャスっぽい音がするピックアップが載っているんです(笑)。だったらテレキャスでいいじゃんって思われそうですけど(笑)。

光村 最初はそうだったね。曲がめっちゃできて、そこから選んでいったわけですけど、最初はバランスが取れていたんです。でも、決まりかけた最後の一歩手前で、みっちゃん(光村)が「VIBRIO VULNIFICUS」「FRITTER」の2曲を出してきて、そこでガラッと変わった。こっちのほうが今やりたい感じだなって。それがデカかったですね。

―  ピックアップは何を?

光村 普通のアメスタ(American Standardシリーズ)なんですけど、最初からFat '50sっていう太めの音のするピックアップが載っていて、それを買ったんです。そこに、さらに太めの弦を張って、それこそレイ・ヴォーンみたいにしているので音は太いです。しかも昨年、リアとフロントがテレキャスでいうところのセンターみたいな音になるよう、真ん中のノブを改造して。ボリュームでミックスのバランスを変えられるんです。

―  ベースみたいですね。

光村 だから、中途半端なセンターもできる。という具合に、どこまでもテレキャスっぽくしています(笑)。


ストラトはハスキーボイスっていう感じ
セクシーな感じで、大人っぽい音も出るんです
 

―  古村さんは?

古村大介(以下:古村) 俺も高2ですね。最初はヴィンテージだったんですけど、友達とそういうギターがあるって話をして、ペイズリー柄のTelecasterを買いました。それから、バンドを組んで最初ぐらいに57年ヴィンテージシリーズの黒いストラトを買いました。セールで朝早く並びに行って買ったのを覚えていますね。そのストラトもライヴで使っているんですけど、今のみっちゃんと同じ仕様にしていて。ノブをタップすると、リアとフロントのハーフトーンになる。レコ-ディングもそれを使ってます。それがなかなか独自の色があって、いい感じなんです。

―  フェンダーの魅力というと?

古村 ストラトはハスキーボイスっていう感じ。枯れた音って言いますけど、ハスキーな声みたいですね。だからちょっとセクシーな感じで、大人っぽい音も出るんです。ちょっと気合いを入れるというか、そういうモードで行かないと自分もストラトと仲良くなれないって思っていた時期もあったんですけど(笑)。

―  フェンダーの魅力というと?

古村 ストラトはハスキーボイスっていう感じ。枯れた音って言いますけど、ハスキーな声みたいですね。だからちょっとセクシーな感じで、大人っぽい音も出るんです。ちょっと気合いを入れるというか、そういうモードで行かないと自分もストラトと仲良くなれないって思っていた時期もあったんですけど(笑)。

―  使いこなすのが難しいということですか?

古村 自分の狙い次第でどうにでもなるんですけど、気合いが必要だと思っていて。でも最近は使い方で変えられるから、もっと使える余地はあったんだって思えるようになりました。今はリアとフロントのハーフトーンが出せたり、ボリュームを弱くして使ったり。ライヴだと特になんですけど、エフェクターを踏みに帰るのにローディさんに頼むのが面倒くさくて、帰らなかったりするんですね。そうすると、ボリュームでいける(コントロールできる)っていうのが一番ラクなんです。それが効くコンデンサーを入れて、ボリュームを下げても音がこもらないようにしたり。そうやって少しずつ自分の狙いに持っていったら、今まで考えていたことが解決して。ああ、そういうことなんだなって、ギターをちょっとずつ理解していけました。

―  ライヴだとテレキャスの比重が多いですよね?

古村 今のライヴだとテレキャスを半分ぐらいの曲で使っていますね。

―  テレキャスの魅力というと?

古村 瞬発力があるじゃないですか、音の立ち上がりが良くて。今やっている曲のタイプもそういうものが多いんです。ストラトはもっと使えるようになったら、より表現の幅が広がりそうだなと最近思っています。

―  テレキャスは鋭い音色も魅力のひとつですよね?

古村 好きだったのがポリスのアンディ・サマーズだったし、テレキャスにコーラスをかけて見よう見まねでやっていましたね。

―  今日、持ってきていただいたのは?

古村 テレキャスです。2本あって、アンプとの組み合わせで選びますけど、その中の1本です。フェンダーカスタムショップで2年前に買いました。最初からフロントがハムバッカーで真っ黒でカッコいいんです。見た目は大事です(笑)。黒なんだけどちょっと赤い部分もあって、それがまたいいですね。弾いてみたらメチャクチャ良かったし。自分が持っているテレキャスと比べると音が丸いんだけど、その丸さが気持ちいいんです。

―  坂倉さんは?

坂倉心悟(以下:坂倉) 最初は大学生の時で、このバンドを組んでからですね。Jazz Bassのヴィンテージでした。最初はミュージックマンを使っていましたけど、自分の中でベースのスタンダードってジャズベじゃないかと思って探していて。いろいろなお店を周って数軒行った時に、とある楽器屋の髭の生えた店長の方が、新宿のコメ兵にいいのがあるって教えてくれて(笑)。その日のうちに行って買いました。自分の中にそういう知識がなかったんですけど、70年代のジャズベですね。

古村 72年か74年ぐらいじゃないかな?

―  弾いてみて、予想と違いました?

坂倉 すっごく難しくて。ネックは弾きやすいですけど、ヴィンテージなのでちょっと出にくい音の部分があったり。そこからフェンダーの旅に出たんですけど、ある時、プレべに出会って。ピノ・パラディーノのベースを紹介してもらって、それをしばらく使ってました。

―  ジャズべからプレべになるとまた感触が違いますよね?

坂倉 すごく違いますけど、本当のジャズべらしいものが欲しくて。フェンダーの方に相談させてもらっていますけど、しっくりくるものがまだないですね。ピノモデルはプレべなんですけど、いかにもプレべというよりマイルドで伸びがあって、こういう音が弾きたいっていうベースに出会って買ったんです。でも、プレべを弾いているんだったら、もっとスタンダードなものを知っておきたいと思って、もう1本買ったのがレコーディングで使っている白いベースです。

―  新しいモデルですか?

坂倉 とは言え6年ぐらい前ですね、だから、ジャズべの旅はまだ終わってなくて、これだっていうジャズベに出会いたいですね。人によると思うんですけど、俺の中ではジャズべが一番スタンダードな気がして。いいジャズべに出会いたいですね。

―  坂倉さんにとって、いい音の基準というと?

坂倉 ジャズべってオールマイティなんです。どういうリクエストにも応えてくれる楽器。でもプレベは癖みたいな、アクみたいなものがあって、その感じがカッコいいなと思っています。

―  なかなか理想には出会えない?

坂倉 出会ってみないとわからないですけど、ベーシストの方って確実にこの1本は手放せないっていうベースがあるじゃないですか、そういうのに憧れますね。いろいろ弾いてみたいです。

› 前編はこちら


Oral Cigarettes

光村龍哉:American Standard Stratocaster(中央)
Fat '50sのピックアップがマウントされ、さらに太めの弦を張っているため、かなり太い音が出せる。Telecasterの音に近づけたいということで、リアとフロントのピックアップがミックス可能。

古村大介:Telecaster(右)
フロントにハムバッカーがマウントされた、カスタムショップモデルのTelecaster。本来の鋭い立ち上がりの音に加え、太さも得られる仕様のため、ジャンルを問わず使えるが、攻撃的な最新曲でさらに威力を発揮してくれるギターだ。

坂倉心悟:Precision Bass(左)
スタンダードなPrecision Bassが欲しくて購入した白いモデル。レコーディングでも本機をメインに使用。それまで使っていたピノベースがプレベにしてはマイルドな音だったこともあり、もう少しアクの強さ、クセのある音が欲しくて愛用している。

PROFILE


NICO Touches the Walls
04年結成。メンバーは、光村龍哉(Vo,Gt)、古村大介(Gt)、坂倉心悟(Ba)、対馬祥太郎(Dr)。バンド名は、光村がよろめいて壁に触れた時に、壁に触れるという行為は壁の向こうにある世界、日常から新しい世界を創造するというイメージにつながり、バンド名に由来。07年11月、ミニアルバム「How are you?」でメジャーデビュー。
› Website:https://nico-m.com

New Relese
TWISTER -EP-
¥2,300(tax in)
Ki/oon Music
2018/07/25 Release

Artist