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FENDER CUSTOM SHOP EXHIBITION REPORT #6

< Experience #6 ʻ59 Stratocaster Burgundy | Char>

フェンダー社のアーティストモデル製作30周年を記念し、日本では初となるFENDER CUSTOM SHOPによるエキシビション「FENDER CUSTOM SHOP EXHIBITION」が、6月16日(土)ベルサール渋谷ガーデンにて盛大に行なわれた。豪華アーティストがさまざまなテーマでFENDER CUSTOM SHOPを体験するステージエリアの模様を、全6回に渡りレポート。最終回はCharが登場。

FENDER CUSTOM SHOP EXHIBITION REPORT #6

(Photo by Yoko Yamashita)

数々のトップミュージシャンが出演したイベント「FENDER CUSTOM SHOP EXHIBITION」もついにラスト。ステージに登場したのは、長年フェンダー製ギターを愛用し、数々の伝説を生み出してきたギタリストCharが率いるバンド。バックを固めるのはベースの澤田浩史と、ドラムの古田たかしという鉄壁の布陣。まだ受け取ったばかりという、バーガンディーミストフィニッシュの“CHAR 1959 STRATOCASTER® BURGUNDY, MASTERBUILT BY PAUL WALLER”を使い、カヴァーを含む数曲を披露してくれた。フェンダー製ギターを弾きまくるCharの姿は、いつの時代もギターキッズ(ファン)の憧れだ。フェンダーのギターは、やはりライヴで輝く。それを再確認させてくれた。

FENDER CUSTOM SHOP EXHIBITION REPORT #6

このイベントで初披露された“CHAR 1959 STRATOCASTER® BURGUNDY, MASTERBUILT BY PAUL WALLER”は、Char本人がPINK CLOUDやPSYCHEDELIXなど、長年弾いてきたヴィンテージのStratocasterをベースに製作。カスタムショップで、隅々までプロファイリングされ、細かな傷まで再現されている。このギターを手がけたのは、マスタービルダーのポール・ウォーラー。プロファイリングした中で、このギターは59年に製造されたことがわかったという。かなり貴重な個体を再現したということだ。

新たなシグネイチャーモデルを手に行なわれたライヴ冒頭は、Charがギターに目覚めたきっかけでもあるベンチャーズのカヴァーから。極上のクランチトーンで「ダイアモンド・ヘッド」「10番街の殺人」を立て続けに披露。楽しそうに新たなギターを弾きまくるCharの姿が印象的で、お決まりのテケテケもバッチリ決め、滑らかなアーミングも心地良く響く。

さらにPSYCHEDELIX時代の「I'M HERE FOR YOU」「NAMELESS LAND」「FOR YOUR LOVE」、PINK CLOUD時代の「MISSIN' YOU」と代表曲を次々と弾いていく。Charの渋い声、粘りのあるブルージーな乾いたストラトの極上クランチトーン、そしてバックが生み出すグルーヴ感が見事に調和し、会場を熱気の渦に包んでいく。音も立ち姿も、すべてがクールだ。これが日本を代表するロックと言わんばかりのステージ。わずかな時間だったが、CharとStratocasterの魅力が凝縮された密度の濃いライヴだ。ファンだけではなく、その場にいた誰もが、音楽と楽器の魅力を感じることができたはずだ。

熱気に包まれたライヴが終わると、フェンダーミュージック株式会社の社長で、アジアを統括するエドワード・コールが登壇し重大発表を行なった。

エドワード 皆さん、そしてCharさんにメッセージを贈りたいと思います。我々の創設者レオ・フェンダーは生前こう語っていたそうです、“アーティストは天使であり、その天使に飛ぶための羽を与えてあげる事が、私の使命です”と。もちろん我々も同じ気持ちです。私が行った61カ国の中で、日本ほど卓越性をしっかり習得している国はないと思います。卓越性や匠のような心意気は、日本人のDNAに盛り込まれていると感じています。我々フェンダーカスタムショップも、その精神ですべての製品を作っています。そして天使の皆様に羽を授け続けていると信じています。一度目をつぶって耳を澄ましていただくと、このレオ・フェンダーの精神を感じられるはずです。

そして、ここで我々は重大発表をします。今日はCharさんの誕生日です。おめでとうございます!

Char ありがとう。最後までフェンダーを弾き続けたいね!

ステージにはサプライズとして、大きなケーキが運ばれてきた。Charがロウソクを吹き消すと、会場からは拍手が起こった。さらにCharには、フェンダー製スピーカー”MONTEREY BLUETOOTH SPEAKER”のプレゼントも渡された。

FENDER CUSTOM SHOP EXHIBITION REPORT #6
FENDER CUSTOM SHOP EXHIBITION REPORT #6

そんなサプライズの後に、新たなシグネイチャーモデル“CHAR 1959 STRATOCASTER® BURGUNDY, MASTERBUILT BY PAUL WALLER”について、製作したポール・ウォーラー、サポートにフェンダーカスタムショッププロダクトマネージャーの大畑篤史氏、そして司会として元ギター・マガジン編集長の野口広之氏も加わり、Charとトークが繰り広げられた。まずは、新たなシグネイチャーモデルについて。

FENDER CUSTOM SHOP EXHIBITION REPORT #6

Char 昨日、初めてポールが作ったこのギターを見たけど、どっちがオリジナルかわからなかった(笑)。よくこの色が出たなって。アメイジング!

ポール すべてをバラバラにして、細かなところまで測定して、詳細なメモを取って作りました。

大畑 Charさんのシグネイチャーは、“カリズマ”から始まりました。それで、このギターを作るにあたり、ベースとなるStratocasterを見せていただきたいということになりまして。その時は、この印象深いバーガンディーと、カスタムショップ製のダフネブルーの良いところをコンパイルして製作しました。でもその当時から、Charさんのギターをぜひ日本人では初となるプロファイリングによる本人ギターの再現をしたいと思っていて、ようやく今回実現しました。海外だと、エリック・クラプトン、イングヴェイ・マルムスティーンなどをこれまでにリリースしてきています。

Char そういうこと(笑)!

ポール Charさんと最初にお会いした時に、とてもエネルギーに溢れていて、私よりも若いと思いました。だから、それに追いつくのがとても大変でした(笑)。でも、Charさんと仕事ができて楽しかったです。満足していただけて、すごく嬉しいです。

このギターを作るにあたり、もっとも難しかったのは、やはり時を経て風格を増したバーガンディーミストフィニッシュの再現だったという。

ポール フィニッシュはとても苦労しました。経年変化まで再現するのが難しいんです。元々の色は、もっと明るいんです。常に実機が手元にあるわけではないので、写真を参考に作っていきました。それから傷も難しかったですね。日本は湿度が高いので、余計にクラックが入っているんです。パーツもすべてエイジングしていきました。

Char 鉄の部分もしっかり加工していて、すごいよね。老眼で見えないけど(笑)。それに音もいい。見た瞬間にわかった。もちろんオリジナルとは少し違うけど、それって当たり前。これが5年、10年と弾き込めば、この子独自の音になっていくと思う。まだ音が若いからね。

ポール ギターを仕上げた後に、そのギターを使ってのライヴを観ることが私にとって至福の時なんです。まるで娘が結婚したような気持ちです(笑)。今日の Charさんのライヴを観て、正しい男性を見つけた娘を誇りに思いますよ。

Char 良かった!3〜4年前に彼の仕事場まで会いに行ったことがあるけど、みんな一生懸命で、スピリットが工場中に溢れていて、最後は泣きました。そこからの付き合いがあるから、今回もプロファイリングしてもらう際に、安心して預けることができました。ポール、オリジナルの中に何か書いてない(笑)?

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ポールとのやり取りから、お互いの信頼関係の強さが伝わってくる。弾き手と作り手、相互の絆が聴き続けられる音楽を生む。Charは、すでに4本のシグネイチャーモデルをフェンダーと作っている。それだけ、フェンダー社もCharを高く評価し、そしてCharもまたフェンダーを信頼している。

Char (フェンダー社にシグネイチャーモデルを作ってもらったことは)グラミー賞を獲るよりも夢が叶った感じ。まさか東京の楽器屋さんで、フェンダーのギターを買うことをずっと夢見て必死にお小遣いを貯めていた自分が、フェンダーからシグネイチャーモデルを作ってもらえるなんて。ギタリストとして、これ以上ない最高の夢が実現したと思っているよ。ポールは、すでに10年以上もカスタムショップにいるけど、なぜポールに作ってもらいたくなったかと言えば、最初に紹介されたときに息子と同い年だったから。何かを繋いでいく時には、次の世代と一緒に作ったほうが新しいギターができると思ったからね。やっぱり思った以上に素晴らしい仕事をしてくれて、もう最高だよ!

最後は、気分が高揚したCharから会場のファン、フェンダー社に向けて、最高のサプライズプレゼントが贈られた。

Char Stratocasterの話をした後だけど、もう1曲弾いていい?

舞台袖から渡されたのは、なんとペイズリー柄のMustang。このギターが出てきた時点で、ファンの気分は最高潮だ。そのギターを手に弾いたのは、日本のロックを代表する名曲のひとつ「Smoky」のレゲエバージョン。途中、ベースの澤田浩史とドラムの古田たかしのソロも挟みつつ、最高の気分で「Smoky」を味わえた。会場は、この日一番の熱気に包まれたのは言うまでもない。

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Charのライヴも含め、まさに創設者レオ・フェンダーが目指した、“プレイヤーは天使であり、その天使に羽を授けたい”という信念が、今でもフェンダーに息づいていることを感じさせてくれるに充分なイベントだった。

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Char

本名・竹中尚人(たけなか ひさと)。10代からバックギタリストのキャリアを重ね、1976年『Navy Blue』でデビュー。ソロと平行してJohnny, Louis & Char、Phychedelix、BAHOなどのバンド活動も積極的に行い、2009年にインディペンデントレーベル「ZICCA RECORDS」を設立し、2017年WebメディアOfficial ”Fun”club「ZICCA ICCA」を開設。ギターマガジン主催の「ニッポンの偉大なギタリスト100」でグランプリに選出されるなど、日本を代表するプレイヤーのひとり。
› http://www.zicca.net/