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FENDER CUSTOM SHOP EXHIBITION REPORT #3

< Experience #3 Bass Pickups | ハマ・オカモト(OKAMOTO'S)>

フェンダー社のアーティストモデル製作30周年を記念し、日本では初となるFENDER CUSTOM SHOPによるエキシビション「FENDER CUSTOM SHOP EXHIBITION」が、6月16日(土)ベルサール渋谷ガーデンにて盛大に行なわれた。豪華アーティストがさまざまなテーマでFENDER CUSTOM SHOPを体験するステージエリアの模様を、全6回に渡りレポート。第3回目はOKAMOTO'Sのハマ・オカモト。

販売されている状態で、すでに完成度の高いフェンダー製ベースのピックアップ交換を行なったことのあるベーシストはそれほど多くないだろう。鈴木茂に次いで登場したハマ・オカモトもそんな1人。今回このステージでは、ハマの人生初となるピックアップ交換を、マスタービルダーのポール・ウォーラーとアビゲイルの愛弟子、ホセフィーナ・カンポスという世界最高クラスのタッグが手がけた。

FENDER CUSTOM SHOP EXHIBITION REPORT #3

(Photo by Yoko Yamashita)

ハマ・オカモトのステージの司会を務めたのは、ベース・マガジンの元編集長である近藤隆久氏。ベースのことを知り尽くした彼ならではの鋭い質問も飛んだ。サポートとしてFENDER CUSTOM SHOPのプロダクトマネージャーである大畑篤史も登壇。

今回、ハマが持参したベースは自身のシグネイチャーモデル “HAMA_OKAMOTO PRECISION BASS #4”だ。本人が愛用する、66年製のPrecision Bassを元に製作されているため、スパゲティロゴ、パドルペグなどの仕様が再現されている。ただし、手の小さなハマの希望でJazz Bassのネックになっているのが特徴だ。日本製のため、実売価格は8万円台というのも魅力。交換前のサウンドを確認するために、ハマがアンプから音を鳴らしたが、ストックのままでも十分にライヴ等で使えるほど良質なサウンドだ。完成度の高さを物語る。

ホセフィーナ・カンポス(以下:ホセフィーナ) ハマさんのために、私の中でも最高のピックアップを巻いてきました。ぜひ弾いてもらいたいです。

大畑篤史 スラップに適したピックアップというオーダーをさせてもらいました。

ハマ・オカモト(以下:ハマ) それは楽しみですね。Precision Bassはスラップをするイメージが世間的にはないかもしれないですけど、持論としては特徴的な音が出るのでアリだなって思っています。

やはり手巻きピックアップの秘密は誰もが知りたいようで、ポールがピックアップ交換作業をしている中、ハマがホセフィーナに質問をする。

ハマ 太い音にしたい時に、そうじゃない物と巻き方がどう違うのか。求める音に対して、巻き方を変えるパターンもあるのかなと素人目線で思っているのですが、手作業の中でこうやったら音がこう変わるという目測は実際にありますか?

ホセフィーナ それは、弾いた時にわかります(笑)。

ハマ では、作っている段階からというよりは、プレイヤーが弾いてみて、そこで初めてわかるということなんですね。

近藤氏も「アビゲイルから継承したことは?」と、ピックアップの手巻き術について迫っていく。

ホセフィーナ 彼女は師でもありますが、一番の親友でもあります。彼女から学んだことはパッション、すなわち情熱です。自分のすべてを注ぎ込んで作るということです。

ハマ あらゆるメーカーが、フェンダーのピックアップを再現しようと試みて、かなり細かいところまで頑張っていますが、それを再現しきれないのは愛が足りないということですね(笑)。細かな技術じゃないっていう話というか。愛情とホセフィーナの笑顔は真似できないってことですよ。

ギターであろうとベースであろうと、手巻きのピックアップに必要な要素は、深い愛とパッション、そして笑顔なのかもしれない。ではなぜフェンダー社の手巻きピックアップは、伝統的に女性が巻いているのだろうか。この疑問にポールが答えてくれた。

ポール・ウォーラー とても伝統を重んじているということもあります。50年代には、女性と男性で、それぞれ役割分担をしていて、ピックアップや配線などは女性スタッフが作業していました。きめ細やかな作業は、女性のほうが向いているんです。それを何世代もファミリーで受け継いでいます。20〜30年も働いていて、娘さんや息子さんがフェンダーで働いている人もいます。

ハマ フェンダーだけがやっていることではないですが、アナログな部分というか、手作業による人間味が音に出るということもすごい。僕もコロナ工場を見学に行きましたが、作業工程やマスタービルダーの作業部屋にまで人の性格が出ていました(笑)。未だにフェンダーが世界のスタンダードであり続ける上に、さらに新しいことにも挑戦し続ける姿勢が崩れないのは、伝統を守り続ける意思に加え、スタッフすべての愛と情熱が大きいということですね。

ピックアップ交換においても、ネジの場所が元入っていた場所から変わらないよう順番に並べる、ピックアップの線が暴れないように整えるなど、細かな作業まで短時間で行なっていく。ポールがステージで交換に使っていた工具は、カスタムショップのロゴが入ったセットで販売もされており、何とハマも所有しているというマニアックな一面も知ることができた。

ハマとともにフェンダー社の情熱に心を動かされていると、ピックアップ交換も終わり、いよいよサウンドチェック。

FENDER CUSTOM SHOP EXHIBITION REPORT #3

ハマ (最初のピックアップと)まったく違う! もう皆さんそっちのけで試奏したくなります(笑)。新しいピックアップは、音の外周にあるあまり鳴ってほしくない音も出てしまう印象があって。個人的に、その外周のギンギンした音は鳴ってほしくないタイプのベーシストなんです。ヴィンテージは、磁気が弱まっているせいか、個人的に鳴ってほしくない音は落ち着いて、芯の部分がきちんと出てくれる印象がある。最初のピックアップよりも、いいところは残しつつ、鳴ってほしくないところが落ち着いてくれている。すごい! アメイジング!! トーンを全開にしていてこの感じ、皆さんに伝わっていますか? これはすごすぎる(笑)!!

新たなピックアップがマウントされたベースの音を鳴らした瞬間、会場にいた誰もがわかるほど、落ち着いた芯のあるトーンが鳴っていることがわかる。ハマの演奏に的確に追随し、乾いた心地良いサウンドが響く。“ベースってカッコいい”と思える瞬間だ。

FENDER CUSTOM SHOP EXHIBITION REPORT #3

ハマ このまま僕を放っておいたら終わらないですよ(笑)。

ハマも、子供がおもちゃを渡された時のように、笑顔で演奏が止まらない。まさに会場そっちのけ(笑)。でも、これは仕方がない。それだけ響くトーンなのだ。

ハマ 人生で初めてのピックアップ交換だったので、正直フェンダーのスタッフにも打ち合わせの段階で、僕も含め来てくれる方に違いがわからないかもしれないと思って少し不安でした。まさか、ここまで変わるとは…。本当にびっくりしました。このピックアップはいただけるということで、(会場に大声で)ものすごく嬉しい(笑)! 今日こういう機会をいただけて本当にありがとうございました。1回だともったいないので、来週もぜひお願いします(笑)。

L'Arc〜en〜CielのKenに引き続き、ホセフィーナ、ポールの愛の込もったピックアップ交換に圧倒されたハマ・オカモト。普段の演奏等とはまた違った表情からは、心底楽器を愛しているということも伝わってきた。その愛情の伝播こそが、まさにフェンダーを芯から支え、そして素晴らしい音楽を生む源泉となっているのだろう。

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OKAMOTO'S

1中学校からの同級生で結成された4人組ロックバンドOKAMOTO’S。 メンバーは、オカモトショウ(Vox)、オカモトコウキ(Gt)、ハマ・オカモト(Ba)、オカモトレイジ(Dr)。全員が岡本太郎好きで、ラモーンズのように全員苗字はオカモト姓を名乗る。

2010年、日本人男子としては最年少の若さでアメリカ・テキサス州で開催された音楽フェス「SxSW2010」に出演。アメリカ七都市を廻るツアーや豪州ツアー、香港、台湾、ベトナムを廻ったアジアツアーなど、海外でのライヴを積極的に行っている。

これまでシングル8作品、アルバム7作品を発表。2015年9月にはメンバー渾身のロック・オペラアルバム「OPERA」を発売。2016年6月3日からは「OKAMOTO’S FORTY SEVEN LIVE TOUR 2016」と題した、キャリア初の47都道府県ツアーを敢行し、ツアーファイナルは日比谷野外大音楽堂にて開催された。

2017年8月2日には約1年半ぶりとなるオリジナルフルアルバム「NO MORE MUSIC」をリリース。また、同年10月には、東京・中野サンプラザにてキャリア初のホールワンマンを開催し、チケットは瞬く間に即完。その後アルバムを引っ提げ全国23か所を回るツアー「OKAMOTO’S TOUR 2017-2018 NO MORE MUSIC」を敢行。

2018年1月28日Zepp Tokyoにてツアーファイナルを開催、大盛況の内にツアーを完遂した。
› http://www.okamotos.net