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FENDER CUSTOM SHOP EXHIBITION REPORT #4

< Experience #4 Custom Order | 布袋寅泰>

フェンダー社のアーティストモデル製作30周年を記念し、日本では初となるFENDER CUSTOM SHOPによるエキシビション「FENDER CUSTOM SHOP EXHIBITION」が、6月16日(土)ベルサール渋谷ガーデンにて盛大に行なわれた。豪華アーティストがさまざまなテーマでFENDER CUSTOM SHOPを体験するステージエリアの模様を、全6回に渡りレポート。第4回目は布袋寅泰が登場。

エリック・クラプトンをはじめ、これまで数多くのシグネイチャーモデルをミュージシャンとともに生み出してきたフェンダーカスタムショップ。ミュージシャンが求める理想の1本は、どのようにして生まれるのか。その疑問に答えるべく、日本を代表するギタリストのひとり、布袋寅泰が理想のTelecasterを求め、マスタービルダーのポール・ウォーラーにオーダーするファーストコンタクトを、何とライヴで観ることができるという夢のような企画が行なわれた。布袋が登場すると、会場は大歓声と布袋コールに包まれ、ファンの熱気が空気を揺らしていた。

FENDER CUSTOM SHOP EXHIBITION REPORT #4

(Photo by Yoko Yamashita)

布袋寅泰は現在、ジェフ・ベックモデルを2本、他にStratocaster、Telecaster、Esquire、Jazzmaster、合計6本のフェンダーカスタムショップギターを使っているという。それ故、フェンダーやカスタムショップに対する想いも強い。

布袋寅泰(以下:布袋) 僕らギタリストにとって、フェンダーカスタムショップのギターというのは、かけがえのないものですし、こうして伝説のビルダーと新しいTelecasterのお話しが直接できるということでとても楽しみにしております。

今回の司会は、元ギターマガジン編集長の野口広之氏が務めた。野口氏からさっそく、さまざまな質問が飛ぶ。

FENDER CUSTOM SHOP EXHIBITION REPORT #4

布袋 14歳でギターを始めた頃から、どちらかと言うとカッティングが好きなタイプで、ナイル・ロジャースとかファンクのギタリストから影響を受けていまして。どちらかと言えば、ハムバッカーよりもシングルコイルの歯切れのいい音が好きでした。

メロディアスで印象的なソロフレーズも布袋寅泰の魅力だが、カッティングこそ彼のギタースタイルのベースになっているという。だからこそ、究極のTelecasterを求める。

布袋 プロになって独自のサウンドを求めていくうちに、いろんなギターと出会って、それぞれの良さを知り、その中で自分のスタイルを模索してきたわけです。僕が使っているジェフ・ベックのシグネイチャーモデルも、彼のスタイルを反映していて、とても特徴があるギターだと思っています。もちろん、ジェフの超絶的なテクニックはコピーできないけど、ギターを持った時に“なるほど!”と感じました。ジェフ・ベックの音のコントロールに関して、このギターを持ったことで初めて気づいたことも多かったです。もし僕のシグネイチャーモデルができたら、それを手にした人は、僕と同じプレイはできないかもしれないけど、僕の気持ちやスタイルはそのギターを通じて伝わっていくはず。

アーティストと同じシグネイチャーモデルを手にすることは、そのモデルに込められた想いやスタイルを感じることのできる、もっとも身近な方法なのかもしれない。もちろんシグネイチャーモデルを製作するアーティストは、自分が究極的にほしい仕様をオーダーするのだが、それが製品化された際、多くのファンが手にすることも、どこか頭の片隅にあるのかもしれない。楽器を通じて、もっと自分の音楽やスタイルを知ってもらえたらと。そのことをジェフ・ベックモデルで知っている布袋だからこそ、自らのシグネイチャーモデルへかける気持ちも強い。

布袋 Telecasterは、ロックが始まる以前から存在する、言ってみればひとつのマスターピースだと思う。だからその進化系がほしい。新しいTelecasterを、ぜひポールさんと作りたい。カッティングが冴えて、音の歯切れも良く、ソロも弾くけど、カッティングのキレがそのままソロに生きるような、そんなモデルが欲しい。

布袋のイメージに近づけるべく、具体的にどんなボディやネック材が合っているかを知るために、ステージには5本のバリエーション豊かなTelecasterが並べられている。オーソドックスなヴィンテージタイプから、ローズウッドボディ、シンライン、さらにネックにローステッドメイプル(木の水分を飛ばし安定性を高めた材)を使った新たなTelecasterもあった。それぞれを、ステージで試奏していく。当たり前だが、同じTelecasterでも、それぞれ音の表情が異なる。

FENDER CUSTOM SHOP EXHIBITION REPORT #4
FENDER CUSTOM SHOP EXHIBITION REPORT #4

布袋 アッシュボディで、ローズウッドでスラブ指板の白いTelecasterがピンときたかな。でも、少し弾きやす過ぎる。もう少し大胆で、乗りこなすのに、こちらもチャレンジする必要があって、なかなか弾きこなせないほうが、ギターとともに成長できるからいい。

ポール・ウォーラー(以下:ポール) では、アッシュボディをスタート地点にしましょう。まずはここがスタート地点です。

布袋 ギターを作る上で、そのギタリストのスタイルを知ることは大切なことだと思います。僕の好きな音楽や好きなサウンドを伝えるとか、ポールとコミュニケーションを取りながら進めていきたいね。

ポール では、Eメールで連絡し合いましょう(笑)。

布袋 カラーや最終的な仕上げには、すごくこだわりがある。でもやっぱり、サウンド。ギターとしての一番の魅力はサウンドだと思う。せっかく伝説のビルダーさんと出会えたわけだから、やっぱり彼らしいギターを僕が引き出したい。僕が10代の頃にたまたま手書きで書いたストライプ柄、布袋モデルと言われているデザインを施してもいいし、あえてここは新しいギターということで離れてもいい。まずは彼のアイディアを僕が受け止めて、ここいる皆さんとどういうギターができるかを楽しみにしたいなと思う。

ポール 何でも聞いていただければ、ギターの方向性が定まるようにお手伝いします。

布袋 ポールはすごく話しやすい方だし、とてもいいギターができそうな気がする。こういう機会もなかなかあるわけじゃないでしょうから、一生大切にできるような、僕と年を重ねていくうちに、どんどん味が出てくるようなギターにしたい。それに世界に1本のギターでありたいし、誰かの物と似ていたくはない。我々プロは、指先に感情や夢とか、さまざまなことを込めて音楽を成り立たせている。その音が出る瞬間を与えてくれるのが、職人ひとりひとりのギターに対する愛情だと思う。ギターが完成したら、そういった情熱に負けないようなプレイで、皆さんにもお返ししたい。

最後に野口氏から、「もし名前を付けるとしたら?」という質問が飛んだ。

布袋 僕の最後のシグネイチャーモデルになるかもしれないし、“Telecaster King”はどう? キングオブTelecaster!!

FENDER CUSTOM SHOP EXHIBITION REPORT #4

近い将来、布袋寅泰とポール・ウォーラーがともに作った“Telecaster King”を携えて、大舞台でのライヴが実現するかもしれない。その最初の物語が始まった場所にいることができた幸せは、会場にいた多くのファンが共有したことだろう。布袋とポールのタッグが生むトーンは、どんなサウンドだろう。今から想像するだけで胸が高鳴った。

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布袋寅泰

伝説的ロックバンドBOØWYのギタリストとして活躍し、1988年にアルバム『GUITARHYTHM』でソロデビューを果たす。プロデューサー、作詞・作曲家としても才能を高く評価されており、自身の楽曲が映画『KILL BILL』のテーマ曲に選ばれるなど、世界へ活躍の場を広げている。2012年よりイギリスへ移住し、三度のロンドン公演を成功させる。2014年にはThe Rolling Stonesと東京ドームで共演を果たし、 2015年海外レーベルSpinefarm Recordsと契約。2017年4月にユーロツアー、5月には初のアジアツアー、日本ではNew Album「Paradox」を 10月にリリースし、 全国ツアーも大盛況のうちに終了。2018年10月にはロンドン公演を予定している。
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