#FenderNews / WHAT IS ORIGINAL? studied by HAMA_OKAMOTO #1

WHAT IS ORIGINAL? studied by HAMA_OKAMOTO

WHAT IS ORIGINAL? studied by HAMA_OKAMOTO #1 -BODY-

NAMM Show 2018にて発表された、50〜70年代のフェンダーをリイシューした新シリーズ「American Original」。その誕生を記念し、フェンダーがどのような変遷を辿ってきたのかを各パーツごとに紐解く連載がスタート。Precision Bassをメインに愛用し、フェンダーに造詣の深いOKAMOTO'Sのハマ・オカモトを迎え、時代背景やプレイ・スタイルの変化といった考察も交えながらパーツの変遷について軽妙なトークを展開する。


歴史に紐づいて木材も選ばれている

 

―  American Originalシリーズは50年代、60年代、70年代それぞれの特徴がモデルごとに出ているので、おさらいするにはちょうどいいのかなと。

ハマ・オカモト(以下:ハマ)   改めてパーツがどういう風に構成されているのかが知れる連載になればいいですね。持論を展開したいわけでも、上から目線で教えたいわけでもなく、同じ目線で“なるほどな”と思えたらいいかなと。

―  第1回目は、音にも影響を与えると言われるボディ材です。

ハマ   51年、オリジナルPrecision Bassという、Precision Bassの大元となったモデルはアッシュ材でしたね。ギターを見ても、TelecasterやStratocasterも誕生当時はアッシュ。フェンダーはアッシュから始まったと。

―  American Originalシリーズも50sのボディ材はアッシュとアルダーが用意されています。

ハマ   55〜56年、Precision Bassがオリジナル・プレシジョンではなくなったタイミングで、ベースもギターもボディ材がアルダーに切り替わった。アルダーのほうが質量も木目も安定していると気付いたんでしょうね。アルダーのほうが加工しやすいという理由もあったのではないかと。

―  実際には加工しやすいです。アッシュは導管が太く、普通に塗装をすると塗料を吸って穴ぼこができてしまうので、それを埋める作業のフィーラーが必要になります。アルダーであればその作業を省けるので。

ハマ   その工程だったり供給の安定性に優れているという理由でアルダーに移行していくと。

―  ちょうどコンター(演奏性を高めるためにボディの一部を滑らかに削る加工)が入って、ボディに丸みが増す時期でもありますね。

ハマ   テレキャスの時は気付かなかったのかもしれないですね、加工のしにくさに(笑)。テレキャスは割と木材を切りっぱなした感じですから、ストラトを作ろうと思った時に“おいおい”と思ったのかも(笑)。

―  ストラトはテレキャスに比べて工程数も多いですからね。

ハマ   いかに人の手で作業していたかっていう。54年にストラトが登場して55年からボディ材が変わり始めるということは、そういうことなんでしょうね。それを経て、57年に基本的にはアルダー・ボディになる。

―  60年代はアルダーの時代ですよね。

ハマ   きちんと説明をすると、アメリカン・バスウッドが使用された例が60年代にはあるそうです。バスウッドは軽くて発色も良いので、僕のモデル(HAMA_OKAKMOTO PRECISION BASS® #4)にも採用しましたが…知らなかった。60年代はベースもギターもほぼアルダーで突っ走るんですかね。ジャズベース、ジャズマスター、ジャガーも登場しますし。

―  フェンダーの楽器でアルダーの印象が強いのはそこでしょうね。


弾き手が楽器を作っていったと言っても過言ではない部分もある

 

―  60年代からロック・ミュージックも大きく発展していく時に、音楽と一緒に広まったのがアルダー・ボディのフェンダーだったという。

ハマ   簡単に言うと、加工のしやすさでアッシュからアルダーになっていく。そして、70年代に突入するにあたり72年にはナチュラル・カラーが登場して。いわゆる木目が見えているハチミツっぽい色のもの。“アッシュは木目がキレイ”と覚えるといいですね(笑)。

―  ナチュラル・カラーを生かすためにアッシュが使われたという側面もあると。

ハマ   70年代はナチュラルをメインに売り出していたので、それによってアッシュの調達量も増大。カラーやモデルによって材を使い分けるのではなくて、大量購入していために、どんなカラーでも70年代以降はアッシュが増えるわけですね。ボディ材の変遷としてはアッシュ、アルダー、アッシュと移行していく。

―  アルダー材とアッシュ材でそれぞれ音の印象はありますか?

ハマ   たとえば“体を鍛えてます”とひと口で言っても、上半身を鍛える人と下半身を鍛える人って違うじゃないですか。そんな印象で、音の比重が違う感じがしています。個人的な意見にはなりますが、特にベースの場合はどんどん音が腰高になっていく印象です。幼稚な言い方かもしれないけど腰高なはっきりとくっきりとした聴き取りやすいサウンドになっているイメージはあります。70年代に第一次ディスコブームが到来しますが、そのあたりの録音を聴くと70年代のジャズべの音は、はっきりわかりますから

HAMA_OKAMOTO presents
FENDER ORIGINAL HISTORY SEMINAR

あとは、弾き方や弾いている人によって楽器も変えられていると言っても過言ではないと思っています。そもそも50〜60年代はスラップ奏法などは一般的ではないですから。もしかしたらメーカーの人たちは“こんな使い方をするんだ”と見ていたかもしれないし、それに対して“だったらこうだろう”と改良を加えた部分もあると思う。なので、そういう意味でも弾き手が楽器を作っていったと言っても過言ではない部分もあるのかなと。

―  興味深い話ですよね。

ハマ   今はこのAmerican Originalシリーズのように“何年代仕様”とか選択肢がありますが、当時はこれしかないという状態なので、その時代の音楽とすごく密接ですよね。すると自ずとベースラインが立ってきたり、ダンスミュージックが流行る理由も納得できる。歴史に紐づいて木材も選ばれていますから、これからギターを購入する人はひとつ目安にしてみて、楽器店で“アッシュなのにけっこう軽いですね”なんて、そういう会話ができたらいいですね(笑)。それもひとつの楽器の歴史ですし楽しみ方だと思うので。

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L to R: AMERICAN ORIGINAL '50 PRECISION BASS® / AMERICAN ORIGINAL '60 PRECISION BASS® / AMERICAN ORIGINAL '70 JAZZ BASS

AMERICAN ORIGINAL SERIES

OKAMOTO'S


中学校からの同級生で結成された4人組ロックバンドOKAMOTO’S。 メンバーは、オカモトショウ(Vox)、オカモトコウキ(Gt)、ハマ・オカモト(Ba)、オカモトレイジ(Dr)。全員が岡本太郎好きで、ラモーンズのように全員苗字はオカモト姓を名乗る。

2010年、日本人男子としては最年少の若さでアメリカ・テキサス州で開催された音楽フェス「SxSW2010」に出演。アメリカ七都市を廻るツアーや豪州ツアー、香港、台湾、ベトナムを廻ったアジアツアーなど、海外でのライヴを積極的に行っている。

これまでシングル8作品、アルバム7作品を発表。2015年9月にはメンバー渾身のロック・オペラアルバム「OPERA」を発売。2016年6月3日からは「OKAMOTO’S FORTY SEVEN LIVE TOUR 2016」と題した、キャリア初の47都道府県ツアーを敢行し、ツアーファイナルは日比谷野外大音楽堂にて開催された。

2017年8月2日には約1年半ぶりとなるオリジナルフルアルバム「NO MORE MUSIC」をリリース。また、同年10月には、東京・中野サンプラザにてキャリア初のホールワンマンを開催し、チケットは瞬く間に即完。その後アルバムを引っ提げ全国23か所を回るツアー「OKAMOTO’S TOUR 2017-2018 NO MORE MUSIC」を敢行。

2018年1月28日Zepp Tokyoにてツアーファイナルを開催、大盛況の内にツアーを完遂した。

› OKAMOTO'S:http://www.okamotos.net