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WHAT IS ORIGINAL? studied by HAMA_OKAMOTO

WHAT IS ORIGINAL? studied by HAMA_OKAMOTO #2 -Fingerboard-

The NAMM Show 2018にて発表された、50〜70年代のフェンダーをリイシューした新シリーズ「American Original」。その誕生を記念し、フェンダーがどのような変遷を辿ってきたのかを各パーツごとに紐解く連載。Precision Bassをメインに愛用し、フェンダーに造詣の深いOKAMOTO'Sのハマ・オカモトを迎え、時代背景やプレイ・スタイルの変化といった考察も交えながらパーツの変遷について軽妙なトークを展開する。


常識に捉われずメイプルワンピースを作った

 

―  まず指板とは何なのか?ってところですよね。

ハマ・オカモト(以下:ハマ)   ネックという木材の棒の表面に貼る板と言えばいいですかね。ちなみに、メイプルワンピースというひとつの木材から成るネックはフェンダーが初めて作りました。基本的にギターは、フィンガーボード(指板)という木材をネックに貼っています。でも弦楽器の歴史上、ヴァイオリンにしても何にしても、ネックと指板が一体化しているのはそれまでなかった。それがこのメイプルワンピースという存在。いわゆるフェンダー最初期のネックで、カナダ・アメリカ北東部にあるハードロックメイプルという木材を使用しているそうです。弦を張っているからものすごい張力がネックにかかっているわけですが、それに耐えうる木材であると。

―  ベースだと成人男性がぶら下がれるくらいの張力(約70キロ)がネックにかかっています。

ハマ   とにかく硬い。ハードロックメイプルはボーリング場のレーンや野球のバットなどにも利用されるそうです。だからボーリング場に行く度に思い出すことが可能です(笑)。

―  強度と加工の面で優れているんですよね。

ハマ   当時、ほぼすべての弦楽器のネックにはネック材とは別の種類の木材、つまり指板が貼られていたのですが、開発者のレオ・フェンダーが楽器を演奏していなかったということもあり、弦楽器の常識に捉われずこのメイプルワンピースという指板なしのネックを作り上げた。

WHAT IS ORIGINAL? studied by HAMA_OKAMOTO

―  生産工程がひとつ減りますからね。

ハマ   いくら硬い木材とは言え、成人男性がぶら下がるくらいの張力に耐えうるため、ある挑戦をするわけです。それが曲がったネックを調整するために、トラスロッドという金属製の棒をネックに仕込むということ。楽器をやらない人は知らない人も多いのではないでしょうか。

―  最初はトラスロッドを仕込んでいなかった。

ハマ   男って感じですよね。それで、このトラスロッドをネック背面のグリップ側から埋め込んだ。このネック背面の線は"スカンクストライプ"というそうです。初めて口に出したかもしれない(笑)。色が違うのはメイプルと違う木材で埋めているからだそうで。指板というよりはネックの話になってしまいましたが。で、50年代後期になると一流ブランドとしての自負心を持つようになり、59年中期に高級感のあるローズウッド指板に変更。表面ツラが黒っぽい木材は、いわゆるここで初めて出てくるローズウッド指板というもので。翌年の60年にJazz Bassが出ますが、そこからはローズウッド指板が採用され、つまり指板ありで発売されます。指板ありって違和感がある表現ではありますが(笑)。高級感の点で変更したと考えると、ブランドとしての意地があったんでしょうね。

―  現在ではカッコいいとされているレリック加工(ヴィンテージを再現した仕様)のように、塗装が剥がれるのが嫌な人も多かったんでしょうね。

ハマ   "何か汚れてるんですけど"という(笑)。超面白いですよね。で、ローズウッド指板を貼る。ベースで言うとここでスラブ指板が登場します。指板とネックの接着面が平面なものをスラブ指板と言います。

―  そして、62年後期に登場するのがラウンド指板です。

ハマ   つまり指板とネックの接着面が平面ではなくカーブになっているものですね。このほうが経年変化による材の狂いを抑えることができる。トラスロッドの仕込みはラウンド指板のほうが簡略化されるんですか?

―  そうなんですよ。ただ、異なる木材を貼り合わせると、接着時に収縮率の違いで変形が生じてしまいます。だからレオ自身はメイプルワンピースを推奨していたんですけど、ローズウッド指板でもできるだけローズウッドの体積を減らしたかった。そうすると狂いも少ないでしょうし。

ハマ   なるほど。スラブ指板とラウンド指板ではローズウッドの厚さが違いますから、音がどう違うという議論がよく出ますよね。

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貼りメイプルは直接的な音の跳ね返りがする

 

―  ちなみにAmerican Originalシリーズは全部ラウンド指板です。

ハマ   62年以降の仕様ということですね。大きな歴史の変化で言うと、スラブ指板とラウンド指板の話は外せない。そのあとに貼りメイプルが登場するわけで。

―  なんだかんだでメイプル指板のニーズが高まってきて。

ハマ   59年中期以降はローズウッド指板でしたが、67年にローズウッドの代わりにメイプル材をラウンド指板として貼り合わせた、通称"貼りメイプル指板"のネックがカタログで正式オプションとしてアナウンスされます。

―  メイプル指板だけどスカンクラインがないんですよ。ネック背面ではなく上からトラスロッドを仕込んで、メイプル指板で蓋をするように貼っているので。

ハマ   蓋!? だからメイプルキャップネックと言うんですね。キャップをするということか。初めて知りました。これもまたひとつの革新ですよね。

―  ボディ材もそうですけど、当時のフェンダーってローズウッド指板でやりますって言ったらその時に手に入るものがローズウッド指板だけなので、少しづつメイプル指板の要望も出てきたってことなんでしょうね。10数年の間で音楽も幅広くなっていって、メイプル指板とローズウッド指板の弾き心地や音の違いなどがわかっていったんだと思います。

ハマ   単純に言うと、スカンクストライプの有り無しで貼りメイプルかどうかがわかる。ネック裏を見て、スカンクストライプが埋められていたらワンピース。そして69年、市場の要望に応える形でジャズベースにメイプルワンピースネックが復活する。だからスカンクストライプも復活するわけですね。かなりマニアックですが、埋めるための木材がハワイアンコアからウォルナットに変更。スカンクストライプ自体の幅も、50年代に比べて少し広くなっているそうです。

WHAT IS ORIGINAL? studied by HAMA_OKAMOTO

―  何となく一緒に見えますけど…。

ハマ   ハハハハ! そもそもネック自体の太さが違いますからね。でもヘンな話、50年代にあったものがまた70年代に復活するって、指板に関してもボディと同じように巡って復活するんですね。ちなみに"ベースあるある"ですけど、69年にメイプルワンピースのジャズベが復活しますが、プレベのメイプルワンピースは71年。2年も空くんです。その理由は、工程を大幅に変える大掛かりな仕様変更があったため、まずは上級モデルであるジャズベースを優先したと。差別ですよね(笑)。

―  プレべはまだいいやって。

ハマ   ひどい話ですよ(笑)。

―  先に生まれたのに。

ハマ   本当ですよね! それから、71年にようやくプレべにもメイプルワンピースが復活してからは、ローズウッド指板、メイプル指板という選択肢ができた。そうか、ボディが変わる流れに付随して仕様変更があるのもこのあたりなんですね。仕様の変わり目の年になってる。

―  指板材の違いによる音の印象ってありますか?

ハマ   貼りメイプルを使い始めて思ったのが、ローズウッド指板が1枚あるだけでそれを通過した音がするというか、貼りメイプルは直接的な音の跳ね返りがするので、パチンとした感じというかハリのいい感じが印象としてあります。ギターで言うとどうなんですか?

―  メイプルのほうが明瞭で、ローズウッドのほうがミッドや粘りが出てくると一般的には言われていますね。

ハマ   確かにそういう印象ですね。持ってみた感触に伴った音がするというか。それこそボディの話もそうですが、70年代に重量のあるアッシュボディで貼りメイプルやジャズベが流行るわけじゃないですか。実際に弾いてみるとそういう音がするし懐が違う印象です。パチンパチンとする感じかな。見た目の製品価値に基づいて変更した割には大きな変化ですよね。今話したような音の違いで変更していたら説得力がありますが、それもまた気まぐれというか。

―  真相はわからないですけどね。レオ・フェンダーは元々楽器を弾かなかったですから。

ハマ   それがやっぱり大きいかもしれないですね。今はこうやって比較して言えますけど、当時は実際にやらないとわからないでしょうし。でもトラスロッドのスカンクストライプは、知っている人からしたら常識かもしれませんが、僕は意識したことがなかったなぁ。

―  あとホットな話題としては、今やローズウッド自体が貴重な木材になっているという。

ハマ   確かにそうですね。見慣れていますが、もしかしたら見られなくなるかもしれない。それじゃ次の僕のシグネイチャーモデルは、一番高価なハワイアンコア指板でお願いします(笑)。

AMERICAN ORIGINAL SERIES

OKAMOTO'S


中学校からの同級生で結成された4人組ロックバンドOKAMOTO’S。 メンバーは、オカモトショウ(Vox)、オカモトコウキ(Gt)、ハマ・オカモト(Ba)、オカモトレイジ(Dr)。全員が岡本太郎好きで、ラモーンズのように全員苗字はオカモト姓を名乗る。

2010年、日本人男子としては最年少の若さでアメリカ・テキサス州で開催された音楽フェス「SxSW2010」に出演。アメリカ七都市を廻るツアーや豪州ツアー、香港、台湾、ベトナムを廻ったアジアツアーなど、海外でのライヴを積極的に行っている。

これまでシングル8作品、アルバム7作品を発表。2015年9月にはメンバー渾身のロック・オペラアルバム「OPERA」を発売。2016年6月3日からは「OKAMOTO’S FORTY SEVEN LIVE TOUR 2016」と題した、キャリア初の47都道府県ツアーを敢行し、ツアーファイナルは日比谷野外大音楽堂にて開催された。

2017年8月2日には約1年半ぶりとなるオリジナルフルアルバム「NO MORE MUSIC」をリリース。また、同年10月には、東京・中野サンプラザにてキャリア初のホールワンマンを開催し、チケットは瞬く間に即完。その後アルバムを引っ提げ全国23か所を回るツアー「OKAMOTO’S TOUR 2017-2018 NO MORE MUSIC」を敢行。

2018年1月28日Zepp Tokyoにてツアーファイナルを開催、大盛況の内にツアーを完遂した。

› OKAMOTO'S:http://www.okamotos.net