#FenderNews / WHAT IS ORIGINAL? studied by HAMA_OKAMOTO #4

WHAT IS ORIGINAL? studied by HAMA_OKAMOTO

WHAT IS ORIGINAL? studied by HAMA_OKAMOTO #4 -Pickup-

The NAMM Show 2018にて発表された、50〜70年代のフェンダーをリイシューした新シリーズ「American Original」。その誕生を記念し、フェンダーがどのような変遷を辿ってきたのかを各パーツごとに紐解く連載。Precision Bassをメインに愛用し、フェンダーに造詣の深いOKAMOTO'Sのハマ・オカモトを迎え、時代背景やプレイ・スタイルの変化といった考察も交えながらパーツの変遷について軽妙なトークを展開する。


ピックアップは弦振動を拾うマイクの役割

 

ハマ・オカモト(以下:ハマ)   そもそもピックアップとは?という話からですが、弦振動を電気信号に変えて音を大きくするということですよね。ピックアップが搭載されていることがエレキ楽器たる所以でもあるわけで。わかりやすく伝えるのであれば、マイクの役割と言えばいいでしょうか。

―  弦振動を電気信号に変えるわけですが、すごく微弱な電気信号なのでアンプで増幅して音を出す必要があると。そう聞くと改めてアンプって大事だなと。テーマが変わっちゃいますけど(笑)。

ハマ   ぶっ飛びますね(笑)。この連載でアンプを取り上げるかどうかはわかりませんが、覚えておいてほしいですよね。アンプによって音が違うということは、もちろんアンプで決まります(笑)。で、ピックアップの構造についてですが、磁石にコイルを巻いていて。

―  ざっくり言うと、磁石にコイルと呼ばれるエナメル線を巻いて、磁性体が動くことでコイルに電流が流れるという仕組みです。

ハマ   手巻きとも聞きますが?

―  今は機械化されて自動巻きになっていますが、昔は手巻きでしたね。

ハマ   だからよくフェンダーのピックアップの話になると、絶対に出てくるのが伝説の手巻き職人のおばあちゃん(アビゲイル・イバラ ※通称アビー)。記事にとんでもなく大きなアビーさんの写真を貼っておいてください(笑)。彼女が巻いたピックアップが未だに音がいいと言われてますよね。


WHAT IS ORIGINAL? studied by HAMA_OKAMOTO

“伝説のピックアップアーティスト”として知られるアビゲイル・イバラ(写真:右)と 後継者として“イバラの手巻き術”を引き継いだピックアップマスターのホセフィーナ・カンポス(写真:左)


―  これまで取り上げてきたボディやネックとは違って、ピックアップはエレクトリック楽器の心臓部なんですけど、ぱっと見で歴史の変遷がわからないですよね。

ハマ   確かに。ピックアップにも歴史はあるんですか?

―  ありますね。

ハマ   ベースは見た目に変化があるからわかりやすいですが、とは言えビジュアル面でいうと外観からではわかりづらい。ベースで言うと、見た目はOPB(オリジナルプレシジョンベース)、Precision Bass、Jazz Bassで変更がなされている感じですかね。ギターに関してはどうですか?

―  あまり変わらないですね。TelecasterとStratocasterで言うと、Telecasterはリアピックアップの形が違いますけど。でもOPBから今のPrecision Bassへの変わり方は面白いですよね。今のPrecision Bassってああ見えてハムバッカー構造なんですよね。だからPrecision BassとJazz Bassは、ハムバッカーかシングルコイルかでものすごく違いがあります。

ハマ   Precision Bassはピックアップが2つ独立しているように見えますが、ひとつのピックアップですもんね。

―  そうですね。2つのピックアップを直列に繋いでいるので。だから“Precision Bassはハムバッカーだ”って思っている人も意外と少なくないんじゃないですかね。

ハマ   ハムバッカーを簡単に説明すると?

―  シングルコイルを2つ並べて、それぞれを逆に巻くことでハムノイズをキャンセルしたものです。もともとの開発目的はノイズキャンセルでしたが、結果として音も太くなったのでそれが良しとされたのかなと。

ハマ   なるほど。マイクで電気信号を拾うとなると、どうしてもノイズが発生してしまう。そのノイズを解消するための構造だったと。ここで毎回出てくるのが、もう少し試行錯誤しなくてよかったのか問題(笑)。成功したから60年以上もレイアウトが変わっていないということで、それはすごい話ですよね。でもそれがJazz Bassのシングルコイルへとつながっていくということですかね。


“なるほど”と思うと同時に“何て構造なんだ!”とも思いました(笑)

 

―  51年に誕生したPrecision Bassはシングルコイルで始まり、57年に今の ハムバッカーになりました。

ハマ   ちなみに僕も割と最近知ったのですが、スタッガードポールピース(各弦の出力バランスを保つためにポールピース=磁石の高さをバラバラにしたもの)って面白いですよね。3弦の信号を拾う2本のポールピースだけ若干高いという。

―  今のAmerican Originalシリーズはその仕様まできっちりと再現されています。

ハマ   E弦の音量を抑えたかったということですかね? ウッドベースはE弦をあまり弾かない、と言ったら語弊がありますが、フレージング的にE弦で細かく弾くことが少なく、A弦(3弦)を一番使ったりするので、なぜ3弦をひいきしたのかと考えるとそういう理由もあるのかもしれない。そもそもエレキベースを使い始めた人たちはジャズミュージシャンが多かったわけですし。

―  確かに。ウッドベースをフェンダーがエレキ化したと考えると、対ウッドベースの発想はあるんでしょうね。とにかくA弦の音量を大きくしたかった。

ハマ   根本の話になりますが、各弦に銀色の丸(ポールピース)が2つあるのは本を読んで知りました。つまり、弾いた時の弦の揺れを2つのポールピースで両サイドから捉えているわけですけど、“なるほど”と思うと同時に“何て構造なんだ!”とも思いました(笑)。

―  ベースはギターよりも弦の振幅が大きいから、振幅をキャッチするためにポールピースが2つ採用されていると。

ハマ   OPBは各弦にポールピースがひとつじゃないですか。無理に決まってますから(笑)。大誤算ですよ。

―  OPBから普通のPrecision Bassへの変更はめちゃくちゃ考えた感じはしますよね。

ハマ   これはダメだ!と思ったんでしょうね。捉え切れなさすぎるって(笑)。

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設計ミスを10年後に補った可能性も!?

 

ハマ   あと、僕が気になるのがボビン。ざっくり言うとボビンとは何でしょうか?

―  マグネットとコイルを巻くための台座ですね。カーボンでできています。

ハマ   年代によってグレイやブラックなど色が違いますが、どういう違いがあるんですか? よく音が変わるとは言いますけど。

―  超マニアックですけどね(笑)。

ハマ   でもよく話題に上がるじゃないですか。64年まではブラックで、64年後期からグレイだそうです。

―  ギターも一緒ですよね。ボビンの供給事情が変わったんでしょうね。

ハマ   どのくらい音に影響があるかですよね。ちなみに資料によると、Stratocasterはフォームバー皮膜のワイヤーを使用していたのに対して、Jazz Bassはフォームバー皮膜よりも絶縁体の厚みが薄く、細めの形状のエナメル皮膜線を使用しているらしいです。

―  Jazz Bassは最初からエナメル線だったんですね。細めのコイルはブライトなサウンド傾向となんですが、それを低音楽器であるベース用として意図的に選択したと。

ハマ   あまりブーミーになりすぎないようにという配慮ですよね。

―  それゆえにシングルコイルになっている。

ハマ   だからああいう音なんですね。Jazz Bassはローがブワー!っと出る感じがしないというか。

―  細めの形状ということは、同じ厚みでも巻き回数を増やせるということですね。

ハマ   多く巻くほど何が変わるんですか?

―  ざっくり言うとパワーですね。

ハマ   なるほど。低音に対応するための工夫でもあるのかな。

―  ある程度パワーを稼ぎつつ、低音もすっきりさせたいと考えたんでしょうね。ボビンのカラーは純粋に色だけかもしれないですね。グレイボビンのほうが、エッジが効いててロック向きと言われがちですけど。

ハマ   だとすると、仕入れ先が変わったようなものですかね(笑)。あとは単純に希少価値の証明。ボビンがブラックだからオールドだ!といった、フルオリジナルであることのひとつの証拠にもなりますし。そんなに長い時期ではないのでブラックボビンは貴重ですよね。グレイボビンの期間のほうが長いわけじゃないですか。

―  生産数も多いでしょうし。あと、ベースのピックアップで言うとJazz Bassのリアピックアップの位置移動。

ハマ   確かに。手元の資料によると69年頃からリアピックアップの位置がブリッジ寄りに移動したと書いてあります。ブリッジ寄りだと“ブライトな音”になりますよね。ブリッジに近いからより硬めの音になる。メイプル指板とアッシュボディが復活するくらいのタイミングで、よりブライトなサウンドへの変更が興味深いですね。

―  ピックアップの移動は、ピックアップがピックアップフェンス(ピックアップ保護のためのスチール製カバー)からはみ出ているのを納めるためだったとの説も…。

ハマ   そういうことなんですか!?

―  60sのモデルを見ると、ピックアップの頭がちょっとはみ出しちゃってるじゃんっていう(笑)。ブリッジ寄りだと音がブライトになると言ってますけど。

ハマ   設計ミスを10年後に補った可能性も!? そんな噂がまことしやかに囁かれていると(笑)。嫌な人は70年代のものを選びましょう(笑)。失敗を10年越しに隠そうとしたことが大きい理由だと僕らは思っておこうかな。でも偶然の産物かもしれませんが、音はきちんと変わってきている。直接的に誰かが何かを感じたかどうかはわかりませんが、絶対に感じたでしょうね。実際に音が変わってしまうので。よほど好きだった人は気づいていたでしょうしね。想像の世界でしかないですが、ブリッジ寄りで弾くことによって生まれたフレーズもきっとあると思いますし。

―  アッシュボディ、メイプル指板を含めて、時代的にそういう波が来ている時期と重なるのが不思議だし面白いですよね。

ハマ   しかし電気系統の話は、 楽器好きの中でも全く興味ない人と、熟知している人に別れるくらい極端ですよね。

―  エレキはピックアップで決まるっていう人もいれば、ピックアップは関係ないっていう人もいるし、木材で決まるっていう人もいるし。

ハマ   僕はそんなにベース本体を改造しないタイプで。その個体を使う意味がなくなる気がしてあまり改造をしないのですが、何を求めるかによっての個性ですから何が正解で何が不正解ということではありません。

―  最初の話に戻りますけどピックアップはマイクですからね。

ハマ   ボーカルマイクも歌う人の声の特性によって替えるわけじゃないですか。もちろんマイクにも種類があるということはわかっていると思いますが、意外とマイクはシビアに替えるものなわけで。マイマイクを持っている人も多いですし、バンドの中には各パートで違うマイクを使うこともザラですし。そういうことがわかってくると、ピックアップの違いも面白くなっていくでしょうね。

AMERICAN ORIGINAL SERIES

OKAMOTO'S


中学校からの同級生で結成された4人組ロックバンドOKAMOTO’S。 メンバーは、オカモトショウ(Vox)、オカモトコウキ(Gt)、ハマ・オカモト(Ba)、オカモトレイジ(Dr)。全員が岡本太郎好きで、ラモーンズのように全員苗字はオカモト姓を名乗る。

2010年、日本人男子としては最年少の若さでアメリカ・テキサス州で開催された音楽フェス「SxSW2010」に出演。アメリカ七都市を廻るツアーや豪州ツアー、香港、台湾、ベトナムを廻ったアジアツアーなど、海外でのライヴを積極的に行っている。

これまでシングル8作品、アルバム7作品を発表。2015年9月にはメンバー渾身のロック・オペラアルバム「OPERA」を発売。2016年6月3日からは「OKAMOTO’S FORTY SEVEN LIVE TOUR 2016」と題した、キャリア初の47都道府県ツアーを敢行し、ツアーファイナルは日比谷野外大音楽堂にて開催された。

2017年8月2日には約1年半ぶりとなるオリジナルフルアルバム「NO MORE MUSIC」をリリース。また、同年10月には、東京・中野サンプラザにてキャリア初のホールワンマンを開催し、チケットは瞬く間に即完。その後アルバムを引っ提げ全国23か所を回るツアー「OKAMOTO’S TOUR 2017-2018 NO MORE MUSIC」を敢行。

2018年1月28日Zepp Tokyoにてツアーファイナルを開催、大盛況の内にツアーを完遂した。

› OKAMOTO'S:http://www.okamotos.net