HOLIDAY STORIES =The BASICS & FENDER=<

一年のうちで、人々の心がもっとも躍り、街がきらめきに包まれる季節がやってきた。大切な人へ贈るなら、フェンダーが提案する音楽のパワーがぎゅっと詰まった個性的なギフトはいかがだろう? 世界中で永く愛され続けるスタンダード名品とともに、ちょっとユニークな4つのストーリーお届けしよう。

4th Story: OUR NATION(少年たちを変えるパンク)

HOLIDAY STORIES =The BASICS & FENDER=

Photos: Tomoka Tanaka   Cooperation: AWABEES

韓国人デザイナーBAJOWOOが手がける『99% IS-』というブランドが大人気だ。

12歳のときにライヴハウスでバンドの生音に触れて以来、彼は人生を掛けてパンク・カルチャーを敬愛している。問題だらけの社会を"クソ"と呼び、GREEN DAYのBillyよりもダークなアイシャドウで目の周りをべったり囲み、ビリビリに破いた白とか黒のマスクをつけて(役割台なし)、モヒカンをある日突然レインボー坊主頭にしたりして行動が読めない。

スタッズや安全ピンを山盛りあしらった上からスプレーでアートしためちゃくちゃなヴィンテージレザーライダースを羽織り、ボロボロのスキニーパンツに戦車みたいなブーツを履いている。単身でもヤバいのに、さらに仲よしのアーティストやモデルたちと集団でつるむ姿は圧巻の一言で、街ですれ違おうものなら絶対避けて通りたいタイプだ。でもそれこそが彼の"スタイル"だ。自分をクローズアップしてくれる私たち関係者まで"家族"と呼び、ひたむきに愛を注いでくれる。そして24時間365日服作りと自己表現とに真摯に向き合い続ける、正真正銘のクリエイターだ。

そんな彼が2017年3月、地元ソウルの有名セレクトショップ『10 CORSO COMO SEOUL』で『OUR NATION』と名打ったアーカイブ展を行った。デニス・モリスが撮り下ろしたセックス・ピストルズや、マルコム・マクラーレン、ヴィヴィアン・ウエストウッドら、1970年代パンクシーンの写真や映像を中心に、彼が長年収集してきたCDやレコード、雑誌、レザーブルゾン、デニム、Tシャツ、シューズ、キャップなど、約1000点を超えるコレクションピースを揃えた、凱旋ともいえるエキシビジョンだった。有名アーティストの衣装やアートワークを手がけ、韓国モード界を代表する若手ヒーローである彼のフォロワーは実に多い。この日も、ニキビの残る顔がまだあどけない少年が一人、熱心に見学していた。「おい、学校はどうした?」と問いかけたくなるド平日の真っ昼間だ。

「BAJOWOOが好きなの?」

チェックのネルシャツにデニムにスニーカーと、どこにでもいそうなごく普通のいかにも生真面目風味なスタイルの彼と、その彼がいま心奪われているパンキッシュなものたちの不良全開ムードとのギャップが面白くて思わず声を掛けたら、目を輝かせながらものすごく丁寧にこう答えた。

「はい、尊敬しています。だって彼は有名人だから!」。

どうやらパンクが好きなのではなく、海外で成功しているBAJOWOOを腹の底からリスペクトしているらしい。うーん、どうにかしてこの純朴そうな少年に、これを機会にアンダーグラウンド・カルチャーそのものに興味を持ってもらいたい。私は彼を、デニス・モリスが撮影したセックス・ピストルズの写真の前に引っ張っていった。アンプに足を引っ掛けてオーディエンスを煽るように歌うジョニー・ロットン、スティーヴ・ジョーンズそしてシド・ヴィシャスが写っている。

「彼らがBAJOWOOのオリジンだよ」と伝えると目を見開いた。「BAJOWOOさんと同じTシャツを着ていますね!」。…違うぞ逆だ少年、BAJOWOOが真似てるんだ…そう突っ込みかけたが、写真に添えられた"1978"という数字を確認して、自分が生まれるはるか前、ロンドンのはちゃめちゃなステージへと、彼が一生懸命思いをめぐらせているのがわかった。

帰り際、彼は60万ウォン(当時の日本円で¥7000)くらいするデニスの分厚い写真集を買い求め、満足そうに去っていった。別に楽器が弾ける様子ではなかったから、かつての少年BAJOWOOがそうだったように、こっそりダウンロードしたパンクな音源のアレコレを大音量で聴きながらエアギターに興じたり、持っているTシャツを破いたり、ブルゾンに安全ピンを死ぬほど刺してみたり、めちゃくちゃな絵を描いてみたりするのだろうか。真面目な彼がそんなことを始めたら、親たちはきっと驚くだろうな。そう考えると、パンクが少年の人生を変え"そう"なリーチの瞬間に立ち会った気がして、なんだかものすごくワクワクした。


99% IS-(ナインティーナイン パーセント イズ)
韓国・ソウル出身のデザイナーBAJOWOO(バジョウ)が手がけるブランド。パンクとロックカルチャーをバックグラウンドに、モードなストリートスタイルを提案している。とくに、1stコレクションから展開している本格派レザーアイテムが大人気で、コム デギャルソン、マッキントッシュなど有名ブランドとのコラボレーションや、ファレル・ウィリアムス、レディー・ガガ、クリス・ブラウン、ジャスティン・ビーバー、BIGBANGなど世界中のセレブから熱い支持を集めている。

MUSTANG™ GT MASTERBUILT FLAME MAPLE
デジタルアンプのモダン・レジェンド「MUSTANG™」アンプが、世界初・Wi-Fi機能を搭載してアップデートし『MUSTANG™ GT』として新登場。多彩なアンプ機能はもちろん、指一本でエフェクトを操作できるBluetooth対応アプリ『Fender Tone』と連動させることで、より幅広い音楽表現が可能。希少なフレイムメイプルのウッドを贅沢にあしらったこのモデルは、なんと日本に一台のみ存在するスペシャル仕様。この機会にぜひ手に入れて。