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エフェクター・ガイド:トレモロ編

真空管からトランジスターまで、王道エフェクトの魅力を徹底解説

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トレモロは音量を周期的に変化させるモジュレーションエフェクトであり、ギターのトレモロアームで音程を変化させるヴィブラートとは異なります。リズミカルである点は共通しているものの、両者の仕組みは大きく異なります。

サウンドにドラマチックな効果をもたらすトレモロを多用するギタリストとして、ジョニー・マー、マーク・リボット、デュアン・エディ、ジョニー・グリーンウッドなどが挙げられます。


トレモロとは?

トレモロはサウンドの音量をリズミカルに変化させるモジュレーションエフェクトです。

同様の効果を生み出す方法はいくつかあります。LFO(Low Frequency Oscillatorの略)が生み出す波形を使ってシグナルのレベルを上下させる方法は、最もメジャーなもののひとつです。

クラシックなトレモロ効果を得るには、サイン波か三角波が適しています。サイン波がリッチでパワフルなトレモロ効果を生み出すのに対し、三角波を用いたトレモロはミックス内でサウンドの存在感を際立たせることができます。

トレモロ効果を音楽的に活用するためには、LFOが生み出す波形をコントロールする必要があります。トレモロ機能があるアンプやペダルには、ほとんどの場合「Rate」(あるいは「Speed」)と「Depth」という2つのコントロールが用意されているはずです。レートは音量変化のスピードを楽曲のテンポに合わせるのに対して、デプスは音をマイルドにフェードさせたり完全に途切らせたりと、効果の深さを調整することができます。

一昔前は真空管アンプにのみ搭載されていたトレモロですが、現在では多くのストンプボックスやマルチエフェクターで使うことができます。中には矩形波のように、より特徴的な効果を生み出す波形を扱うことができるモデルも存在します。矩形波を選択したLFOのデプスを最大値に設定すれば、シグナルを交互にオンオフさせる極端な効果を得ることができます。


チューブトレモロ

トレモロ効果はLFOが発する波形の種類だけでなく、その波形で音量をどのように変化させるかによって左右されます。

好みは人それぞれに違いありませんが、現在でも昔ながらのチューブトレモロを好むギタリストは少なくありません。このタイプは、LFOの波形(通常はサイン波)で真空管のバイアスを変調させる仕組みになっています。この方法でシグナルを上下させると、ヴィブラートに似た効果が得られます。

実のところ、フェンダーのアンプにおける「ヴィブラート」はこのエフェクトのことを指しています。

デュアン・エディの大ヒット曲『Rebel Rouser』は、かつて一世を風靡したこのエフェクトの効果的な活用例です。歴史に名を残すこの曲のイメージを決定づけているのは、音を途切らせてしまわない程度にデプスを設定することで生まれる、リッチでリズミカルなギターのテクスチャーです。

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オプティカルトレモロ

オプティカルトレモロもまた、多くのギタリストに愛され続けるフェンダーのアンプに見られたエフェクトです。このタイプは光に反応する「フォトカプラ」、あるいは「フォトセル」と呼ばれる抵抗器を活用しています。

このタイプの回路では、LFOが電球のオンオフを切り替えによってフォトカプラの抵抗値を変動させることで、シグナルを上下させるという仕組みになっています。このタイプのトレモロはとても滑らかな一方で、音波に偏りが生じがちだと言われています。印象としては矩形波のトレモロに近く、バイアスによるものよりもこのタイプを好むプレイヤーは少なくありません。

このトレモロの代表的な活用例としては、The Smithの『How Soon Is Now』が挙げられます。ジョニー・マーによるその印象的なギターサウンドは、ステレオ効果が得られるよう左右に2台ずつ設置されたFender Twin Reverbのアンプトレモロを駆使しています。

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ストンプボックストレモロ

ストンプボックスという形に落とし込む過程で、トレモロのテクノロジーは飛躍的な進化を遂げました。

容易に入手できるギターペダル型のトレモロでは、LFOはあらゆるタイプの波形を扱うことができます。またこのタイプには、多くのアンプに見られるオプティカルサーキットと同じ回路が採用されています。これによって、様々なタイプのクラシックなトレモロサウンドを再現できるほか、矩形波を用いたイレギュラーなトレモロなど、アンプトレモロでは得られない効果を生み出すことができます。

Radioheadのアルバム『The Bends』に収録されている『Planet Telex』では、ギタリストのジョニー・グリーンウッドが強烈なトレモロを使って生み出した、シンセサイザーのようなテクスチャーのギターサウンドが全編で使われています。


既存のセッティングにトレモロを追加するには

ペダルボードにトレモロを追加する際には注意すべき点があります。

トレモロをどの部分に組み込むべきかは、現在のセットアップやペダルの数によって異なりますが、シグナル全体のボリュームを上下させるためには、チェーンの最後部に近い部分に挿入する 必要があります。

また組み合わせ次第では、トレモロの効果が損なわれてしまうため注意が必要です。

  • ■ ボリュームの上下を抑えるコンプレッサーをトレモロの後に繋ぐと、控えめなトレモロであればその効果が失われてしまう場合があります。
  • ■多数のエフェクトを含むセットアップにおいて、トレモロ以降にディレイペダルが繋がれている場合、ディレイ音によってトレモロの効果が隠れてしまう場合があります。ただ使い方によっては、2種類のディレイを使っているような複雑なリズムパターンを生み出すことができます。
  • ■ペダルトレモロとアンプトレモロを併用する場合は、レートとデプスをそれぞれ異なる値に設定することで面白い効果が得られます。


まとめ

リズミカルで繊細な揺らぎやドラマチックなテンションを生み出すトレモロは、単にボリュームを変動させるためのものではありません。使い方次第で、トレモロはサウンドにムードや感情を添えることができます。気分を高揚させてくれるトーン、突然変異のようなリズム、あるいはたゆたうようなサウンドスケープを生み出すトレモロは、ディストーションやコンプレッサー、そしてリバーブなど以上に自由度の高いエフェクトなのです。