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Takaakira 'Taka' Goto「ツインリバーブ以外浮気したことがない」

フェンダーのギターアンプといえば「ツインリバーブ」。この名機にスポットを当てた特別企画。第3回はMONOのTakaakira 'Taka' Gotoの登場です。

Twin Reverb

1963年、大会場でのコンサート/ライブに対応できる高出力アンプとして華々しいデビューを飾ったTwin Reverb。鐘の音のように美しく澄んだクリーントーンは“ベルサウンド”と形容され、ウォームで奥行きのあるアナログリバーブも相まって不朽の名機として君臨している。

世界で最も聴かれている日本人バンド、それがMONOであることに疑いを持つ人は少ないだろう。99年の結成当初より、一度も他のアンプに替えることなく、Takaakira 'Taka' Gotoが愛用し続けているモデルが現行品の'65 Twin Reverb®だ。曲作りやパフォーマンスにおいて、彼にとって必要不可欠である“相棒”について、じっくりと話を聞いた。

大地みたいに広いのに、最後にキラッとした部分が残る
 

―  20年近く使っているツインリバーブですが、そもそも使い始めたきっかけは?

Takaakira 'Taka' Goto(以下、Goto)   18年前、メンバーを集めて初めて練習したのがこのスタジオで、そこにあったのがツインリバーブだったんですよ。その時はもちろんローディーもいないし機材も運べないし、どういう音でどういう絡みでっていうのは分からない状態だったから、とりあえず集まってスタジオに置いてあったアンプとギターとシールド、あとは3~4台くらいのペダルを持って行って、セッティングして4人で音を出したときにすごく感動して。それ以来、機材は一切替えてないんですよ。あと、結成した年にニューヨークに行こうと思っていたから、当時はフェンダーとかマーシャルってどこにでもあるもんだろうと思っていたのもありますね。

―  特に日本で生活しているとそう思うかもしれないですね。

Goto   そうそう。ニューヨークに行ったときもフェンダーアンプを借りて、それでしばらくしたらアメリカツアーを廻ろうということになって、レンタルすると高いから安いフェンダーアンプを買ったんです。2回くらいツアーを廻ったあとに売って、そのあとにやっとツインリバーブを手に入れた。

―  このスタジオがMONOの始まりであり、ツインリバーブとの出会いでもあると。

Goto   本当に。ツインリバーブ以外浮気したことがないので。

―  言葉では説明できない部分もあると思いますが、ツインリバーブの魅力を挙げるならどんな点でしょうか。

Goto   立ち上がりの音が艶やか。レスポンスが早いし、見て分かると思うんですけど基本的にツマミは全部「5」で、このセッティングで全曲弾いてるんですよ。ギターのツマミも全部「10」で、いい音がするからあとは何でもできるっていう状態。弦のセパレーション(分離)がクリアなくせして、ひとつひとつのフィードバックが長い。要するに共存、グランドピアノみたいな。「5」でいい音が出れば、あとはいかようにもなるっていう発想です。このギターとツインリバーブできちんと成立しているから、あとは足したり引いたりするだけ。

―  安心感があるというか。

Goto   素晴らしいですよ。真空管の音なんですよね。上(高音域)の倍音が豊かで、ベルトーンっていうのかな、キラッとした部分がある。最後に残るじゃないですか、美しい部分が。

―  フワッと鼻に抜けるような後味がありますよね。

Goto   そうそう。大地みたいに広いのに、最後にキラッとした部分が残るのは本当にクオリティの高いチューブだと思うんです。エレクトリックギターにおいて、ギターアンプって大体ハイゲインになっていくじゃないですか。ハイゲインはいいんだけど、クリーントーンが本当にしょぼいっていうか。基本の音がオーバードライブとか歪んだアンプでは僕はダメなので、基本はハイゲインなクリーン。

僕らはインストゥルメンタルバンドなので、ドンシャリで作ってしまうとカラオケみたいになっちゃうんですよ。歌の帯域に誰かいないとカラオケになってしまうから、僕は男性ボーカルの帯域を出して、Yodaがきちんとしたギターの帯域を出す。メロディである男性の歌の帯域、ミドルをきちんと出してあげるのがツインリバーブだったっていう。アンプのソフトウェアのシミュレーターってあるじゃないですか。デモを作る際、あれを使うときもフェンダーですから(笑)。欲しい音はもう決まってるんだなって。

―  MONOのプリセットがあるんですね(笑)。

Goto   そうそう(笑)。テンプレがあって。あとはこの間、西海岸でレコーディングをしたときにしきりに「ボリュームを上げろ」って言われるんですよ。ヨーロッパでライブをするときは音量規制があるんだけど、レコーディングでは上げ気味にして、そうすると実に音が太いんです。

―  Yodaさんがいる中で、ライブでの音量は場所場所で違うんですか。

Goto   ほぼ一緒です。会場によってドラムの聴こえが悪いから僕が「0.5」落とそうというときは、ベースもギターもすべて「0.5」落として、上げるときは全員が「0.5」上げる。生でドラムを聴いて、多少返している状態。フェスとかステージが大きくても、どんな環境でも僕ら音量がピッタリなんですよ。何があっても人のせいにできないし、ミスらないように生音を聴けるように。曲の中で、僕がすごく小さく弾く必要がある時は、ドラムのTakada君にスティックを替えてもらいます。要するに、ドラムがギターに音量を合わせていくんです。

―  ボリュームが「5」っていうのは後藤さんの中で絶対的なものなんですね。真空管アンプは音量でトーンも変わってきますもんね。

Goto   全然変わってきますよ。あとは、チューブの音が好きなんですよ。チューブの音にはソウルがあると思っていて。チューブファンかと言うとそうじゃないんですけど、音が大好きなんです。目をつぶった状態で“どのギターとアンプを使っていいです”って言われても、多分この組み合わせに辿り着くっていう(笑)。こんなにアンプがあるのにね。

フェンダーの組み合わせじゃないと曲は生まれない
 

―  ボリュームはずっと「5」なんですか?

Goto   MONOを結成したときは「8」だったんですよ。アメリカツアーに出たとき。ただ、ライブ中に焦げ臭くなってしまうことがあって(笑)、それでだんだんボリュームを落としていって、そのうちヨーロッパが法律で音量規制されて、ヨーロッパでは音量制限のためにアッテネーターを使ってるんですよ。「6」くらいに設定して、アッテネーターでちょっと下げて。レコーディングではアッテネーターを取ってそのまま出してます。

―  「8」を「5」にしたのは単純に耐久性の問題というか。

Goto   もうね、本当に壊れるんですよ(笑)。単純に僕の使い方が悪いんじゃないかっていう。しかもツアー中に。移動もあるし、30本を休みなしでライブするじゃないですか。この間、アメリカツアーのサポートバンドに「何でツインリバーブを使ってるの?」って言われて、逆に「何で?」って聞いたらツインリバーブはザ・ベンチャーズだろうって。アメリカ人にとってはそういうイメージなんだろうね。アメリカ人の感覚ではない音だから、ファンは張り付くように機材を見てるよね。ライブが終わった瞬間に30人くらいボードを見に来るんですよ(笑)。どうやったらあの音が出るんだみたいな。

―  最近は自宅の環境が良くなっているのもあって、アンプを鳴らさない人が増えていますが、スタジオで大きい音で鳴らすのと、家でアンプに差さないで弾くのとでは 違いますよね。

Goto    僕なんか、背中で音圧を感じないとライブをやっている気がしないから。中学生の頃から毎日スタジオに入っていたし、高校の頃にはツアーもまわっていたし、でかい音でやるのが当たり前だった。最近のバンドってすごく音が小さくて、小さなファンタジーみたいな音ですよね(笑)。でもPAで出すと迫力がある音になる。バンドがそういうものだとしても、何か物足りない。音楽って結局、空気を震わせる芸術じゃないですか。空気が圧迫し、鼓膜を揺らし、体が乗る体験。それを暴れ馬みたいなやつ(機材)をコントロールして総合的なクオリティの高い音楽を作るわけだから。

―  今回の企画の共通質問なんですが、ギターとアンプの音って何対何の割合で成り立っていますか?

Goto   5:5ですよ。僕は13歳のときにフォークギターからギターを始めたんですよ。3年くらい弾き続けてエレキを初めて持ったときに、どこから音が出てるの!?みたいな、遠くから音が出る違和感、ずっと胸元で鳴っていた音が遠くから出るあの日の感覚っていうのを未だに覚えているんです。それがエレキなんだなって思うから5:5なんですよね。ギターとアンプがいないと。

―  高価なギターは持っているけど、アンプをおざなりにしている人が多いので、両方大事だよっていうところで5:5。

Goto   一流の音がないと、演者として自分が出したい音を表現できない。だから僕は自分の音に絶対的な自信があるんですよ。それ以外に興味がない感覚なのかな。この組み合わせがあれば、僕は満たされるというか。

―  その中にフェンダーの現行品があるっていうのは光栄ですね。

Goto   一流の音を持ってるんです。言い換えると、「あなたはこの機材と音を使って何ができますか?」ってミュージシャンが楽器に試されている。そのくらいのポテンシャルがある、インスピレーションを与えるものが楽器だから。僕はフェンダーからインスピレーションをもらって、その音から曲を書いているから常に楽器と一体なんですよね。もし他のアンプが気に入ったら作曲も変わるし、バンド自体が変わるかもしれない。でも僕に関しては絶対にフェンダーですね。フェンダーの組み合わせじゃないと、曲は生まれない。


Twin Reverb

’65 Twin Reverb®
Gotoが所有する現行品のツインリバーブ。フェンダートーンを決定付けた、多くの音楽スタジオにも常備されている名機。NORMAL/VIBRATOの2チャンネル仕様で、それぞれにハイゲインのインプット1、ローゲインのインプット2という2つの入力端子を装備。クリーントーンは恐ろしいほどピュアで、現在に至るまで数多のギタリストを虜にし続けている。最大の特徴は、底に仕込まれたスプリングによる太く温かなリバーブ効果。どんなアンプやエフェクターにも真似できない圧倒的な奥行きで、トーン自体にも温かみが付加されるため常にかけた状態で使用するギタリストも少なくない。MONOでは、Yodaのギターアンプ、キーボードのモニター用を合わせて3台のツインリバーブを使用。後藤はNORMALチャンネル、YodaはVIBRATOチャンネルに接続することでサウンドの差別化を図っている。

Twin Reverb

「ツマミはすべて“5”から始めて微調整します。トーンはほとんどいじることがなくて、張りたての弦のときにTREBLEを少し落とすくらい。これってEQがすごくて、パライコが最初から完璧な状態に設定されていて“5”が一番いいっていう。すごくないですか(笑)。エフェクターを見てもらえば分かると思うけど、ツマミは3時、9時、12時とかで、ディレイもこんなに多用するのにひとつのディレイタイムで全曲弾く人なんですよ(笑)。ややこしいのが嫌なんです。でも、これが本当に素晴らしい」

› ’65 Twin Reverb®製品ページ

Twin Reverb

Takaakira 'Taka' Goto
1999年、Takaakira "Taka" Goto(Gt)、Yoda(Gt)、Tamaki(Ba)、Yasunori Takada(Dr)によって結成されたインストゥルメンタルバンド。00年、1st EP『Hey,you』をリリース。結成当初より海外での活動を精力的に行い、毎年およそ150本に及ぶワールドツアーを敢行。パフォーマンスを行った国は55カ国以上で、オーケストラとシューゲイズギターノイズを融合させた唯一無二のスタイルは、イギリスの音楽誌NMEで“神の音楽”と賞賛されるほど高い評価を得ている。2004年リリースの3rdアルバム『Walking cloud and deep red sky, Flag fluttered and the sun shined』でカルテット(弦楽四重奏)を導入。2009年には23名のオーケストラを従えた編成でのスペシャルショウを、ニューヨーク・東京・ロンドン・メルボルンで行う。2016年10月、ニルヴァーナの『イン・ユーテロ』でも知られるレコーディングエンジニア、スティーヴ・アルビニを迎え、通算9枚目となるニューアルバム『Requiem For Hell』をリリース。

› MONO:https://www.monoofjapan.com/