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ギターは魔法。どうせ魔法にかかるのなら最高の魔法がいい|清春【後編】

清春

94年に黒夢でメジャーデビューして以来、常に第一線で活躍し続ける清春。その圧倒的な歌が清春の魅力だが、ライブではギターを弾くこともあるし、作曲はギターで行っているという。ギターに関してのインタビューは自身初という貴重なインタビュー。後編では撮影で使用したAMERICAN ACOUSTASONIC TELECASTERの感想、そしてギターを始めたい人への熱いメッセージをいただいた。

突破できない人たちのために気持ちを後押ししていくのがロック
 

― 今回の撮影でAMERICAN ACOUSTASONIC TELECASTERを触っていただきましたが、いかがでしたか?

清春 アコギってネックが太いので、弾きづらい人には弾きづらいんですけど、これはめちゃくちゃ弾きやすいですね。しかもエレキにもなるし、ボディヒットした音も拾えるんですよね? 発明品ですね。

― ジャストアイデアでも構わないのですが、このギターをどんな風に使ってみたいですか?

清春 ライヴでも使いたいですし、もちろん曲作りにも使いたいです。そもそも、アコギの音がアンプで出せるっていうのがすごいですよね。普通のアコギだと、モニターからしか音が出てこない。でもこのAMERICAN ACOUSTASONIC TELECASTERだと、アンプを使えるので後ろから音に包まれるわけで、そこをまずは体感してみたいですね。

― 作曲にも使えるということですが、コロナ禍でも作曲は積極的に行なっていましたか?

清春 今年の3月に10枚目のソロアルバム『JAPANESE MENU/DISTORTION 10』をリリースしたのですが、そのツアーはコロナ禍で中止になってしまって。ツアーは中止になったのですが、〈A NEW MY TERRITORY〉という実験的なストリーミングスタジオライヴ&レコーディングを毎月行なっているんです。普通のライヴ配信とは全然違う試みで、シアトリカルで、コンテポラリーダンスに近いイメージのアドリブ全開ものです。その配信を毎月やっているんですが、11月からまた曲作りを始めます。

― 来年にはまたニューアルバムをリリースするのですか?

清春 まだ今年出したアルバムのツアーもしていないですからね。もちろん、新しい音を出すことは大事で、来年の春なら『JAPANESE MENU/DISTORTION 10』のリリースから1年経つので、来年の春ぐらいに向けて新しいアルバムを出してもいいんですけど。うーん…配信になって、みなさんすごく苦しい状況にいるでしょ。大きい音を鳴らすバンドは、配信では伝わらない。だけど、楽器にしてもよりクリアに聴こえるので、腕の見せ所なんじゃないのかなとは思っています。歌もそうですし。大音響の中ではわからないことってあるので。大音響でしか伝えられないこともあるけれど、大音響の中だとちゃんとプレイしても聴こえてこないものが、画面のモニター上では冷静に聴こえるんですよね。

― 確かに。

清春 だから、怖くて配信ができない人もいると思うんです。粗が見えちゃうから。それで、事前に録ったものを生配信と言って流している人もいて、きついなって思います。生配信で一発でやる時、僕はギターを弾いてないけれど、メンバーを見ていると、普通のライヴよりも緊張していますよね。アコギもエレキも、その楽器の音が鮮明に聴こえるよ。だから、ライヴDVDよりも何を弾いているかがわかりやすい。歌もそうですけど、音楽全体が鮮明に聴こえて淘汰される時代なのかなって気がしますね。下手くそでもガーン!と鳴らすカッコ良さがあるのは、もちろん知ってるんですけどね。

― ええ。

清春 時代は繰り返すので、激しい音楽が流行ったあとには、静かな癒される音楽が求められる。それが続いてポップになっていくと、また激しい流れが来る。その繰り返しだと思うんです。コロナで無理やり静かな音楽の時代が来たけど、そういう時代になろうとしていたんじゃないかなって最近は思っていて。ここ何年かは、夏フェスを見ていても、体育祭みたいなお祭りのような音楽が主流だったような気がして。もっと音楽らしい音楽に移行しつつあるタイミングでコロナ禍が来て、それが加速したんじゃないのかなって。今は静かなことをやらなきゃいけない時代なんだと思うんです。ミュージシャンもある程度、それに付き合って突破しなければいけない時代なのかなと。これが落ち着いたら、また激しい音楽の流れが来るのでしょうし。時代に関係なくずっと激しかったり、ずっと静かだったりするのは、時代から置いていかれるような気がします。

― 配信は続けていくのですか?

清春 11月と12月はやります。ただ、もう半年以上毎月やっていますが、12月以降もコンスタントにやっていくのかはまだわからないです。ライヴハウスが元に戻るまでにはまだまだ時間が掛かると思うし、僕も52歳なのでそんな悠長にはしていられない。だから、ライヴもある程度は突破しようかなと思っています。キャパの50%とか言われている中、70%くらいお客さんを入れちゃおうとか(笑)。今はそういうことも難しい時代じゃないですか。ロック的なことは悪とされるので。でも、それを突破するのがロックだとは思っていて。突破できない人たちのために、気持ちを後押ししていくのがロックだなと思うんですよね。ミュージシャンが一番怖がっていたら何も起きないので、変えていきたいとは思ってます。


ギターでコードが弾けると、また違うメロディーが浮かんでくる
 

― 最後に、これからギターを始めようと思っている人たちにメッセージを。

清春 歌いながらたまにギターを持つ立場の人間から言うと、そんなに上手くなくても、歌が良ければ何とかなるんですよ。でも、ギターを持っているのと持っていないのとでは大違いで、ちょっとコードが鳴らせるだけでも全然違う。コードが弾けると、また違うメロディーが浮かんでくるんです。バンドがいなければ浮かばなかったものが、自分1人でも浮かぶようになる。それが、僕の中ではギターを持って歌う最大の魅力ですね。もちろん練習したほうが上手くなるし、上手くて弾きながら歌っている人を見るとスゲェって思うんですけど、自分はそれをやりたくてロックやっているわけじゃないから、人生あと何年って考えたら、僕としては極める必要はないのかなと。

― なるほど。

清春 ギターを始める前は曲を口(鼻歌)で作っていたので、自分の既存曲をカヴァーする時はギターを弾いてみるんです。すると“あ、こんな風になっていたんだ”と発見がある。曲の解釈も変わってきて、歌のフレーズはもう少しメロディーを抑えてみようとか、派手にしてみようとか、曲を作る上でも、歌しか鳴っていないよりは、歌とギターが鳴っているほうがより豊かになる。上級者の段階ではなくて、ビギナークラスでもそれがわかるのが魅力だと思うんです。それがハマった時は、ライヴ中でもレコーディング中でも気持ちがいいのでちょっとした魔法なんですよね。

― 魔法ですか!

清春 ええ。僕は30歳を過ぎてからギターを始めたので、普通の人であれは当然わかっていることなんですけどね。でも、あの頃ギターを始めたおかげで、年を食ってからシンプルに発見があるので、飽きずに長くやれているところもあります。ずっと同じスタイルで作っていたら、たぶんできてないだろうし。初めからギターも上手い、歌も上手いだと、またそれは壁にぶつかると思うし。

― ええ。

清春 昔にバンドをやっていたけれど今はやっていない人とか、楽器経験はないけれど好きな曲を弾き語りしたいと思っている人って結構いると思うんですよ。安いギターでもいいけれど、大人は割と余裕があるので、初めからこのAMERICAN ACOUSTASONIC TELECASTERクラスのぐらいのギターを買ったほうが、弾けなくても大事にすると思うんです。僕も最初に安いギターを買って埃まみれにしたので(笑)。趣味でもいいと思うんです。家で1人でできるし、おじさんやおばさんになってからギターを習うってカッコいいですよ。別に人前で弾かなくて、趣味でやっていればいいじゃないですか。僕も娘がギターをやっているので、最初の頃は教えていたのですが、子どもは上達が早いんですよね。今では僕よりも全然上手い(笑)。だから努力すれば、僕みたいに練習はしないし曲作りでしか弾かない、ライヴの時にしか弾かないヤツでも、弾けるようになる。おじいちゃん、おばあちゃんになっても弾いていたらいいじゃないですか。気持ちが豊かになりますね。ギターは魔法ですよ。どうせ魔法にかかるのなら最高の魔法がいい。だから、買うならいきなりフェンダーとかがいいじゃないですかね。


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清春

清春使用機材

AMERICAN ACOUSTASONIC® TELECASTER®
常に進化を続けるフェンダーの精神を体現したAMERICAN ACOUSTASONIC® TELECASTER®。Fishman®と共同開発した強力なサウンドプロセッサーを内蔵し、スタジオワーク/ライブパフォーマンスの両方において、幅広いアコースティックギターのトーンとエレクトリックギターのトーンを融合した、全く新しいユニークな表現を実現します。

PROFILE


清春
94年、黒夢のヴォーカリストとしてメジャーデビュー。そのカリスマ性とメッセージ色の強い楽曲で人気絶頂の最中、99年に突然無期限の活動休止を発表。 同年にSADSを結成し、2000年、TBS系ドラマ『池袋ウエストゲートパーク』の主題歌「忘却の空」が大ヒット。同曲を収録したアルバム『BABYLON』は50万枚以上のセールスでオリコン1位を記録する。年間130本もの精力的なライヴツアーを行う中、アルバムごとに音楽性を急激に変化させ、黒夢時代のファンのみならず新たな層にもその存在を強烈にアピールした。 2003年、DVDシングル「オーロラ」でソロデビュー。同時期に立ち上げたアパレルブランド『moon age devilment』は、現在も東京/大阪のショップ『GLAM ADDICTION』で展開。2004年、David Bowie JAPAN TOUR大阪公演にオープニングアクトとして出演。清春として現在までに10枚のアルバムリリースとツアーを精力的に行っている。 そして近年は〈MONTHLY PLUGLESS KIYOHARU LIVIN' IN Mt.RAINIER HALL〉という驚異的な公演数を誇るシリーズライヴを継続。 2013年、初の歌詩集『mardigras』を発売。2017年に〈エレジー〉と銘打った66公演はアコースティック編成という概念を大胆に覆す、ダークかつシアトリカルなパフォーマンスで観客を魅了。同年、アルバム2作連続リリースとして、12月に1作目となるリズムレス・アルバム『エレジー』、 2018年3月には2作目となるニューアルバム『夜、カルメンの詩集』を発表。清春としてのメイン活動と並行してサッズが再始動7周年を迎えたが、2018年をもって活動休止。2019年1月、ポニーキャニオンへ移籍。デビュー25周年を迎えるアニヴァーサリーイヤーを記念して、カヴァーアルバムと10枚目オリジナルアルバム「JAPANESE MENU/DISTIRTION10」をリリース。2020年10月には自伝本を出版。

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