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キダ モティフォ インタビュー「イメージしている音を形にできるアンプ」
フェンダーのギターアンプといえば「ツインリバーブ」。この名機にスポットを当てた特別企画。第2回はtricotのキダ モティフォの登場です。
1963年、大会場でのコンサート/ライブに対応できる高出力アンプとして華々しいデビューを飾ったTwin Reverb。鐘の音のように美しく澄んだクリーントーンは“ベルサウンド”と形容され、ウォームで奥行きのあるアナログリバーブも相まって不朽の名機として君臨している。
日英同時リリースとなる新作『3』をリリースしたtricot。日本国内のみならず、海外でのツアーも多い彼女たちだが、キダ モティフォ(Gt, Cho)は現地でツインリバーブをレンタルして使用するくらい、今では彼女にとって欠かせない愛機の一つである。通称“銀パネ”で親しまれている’68 Custom Twin Reverb®とともに登場してもらった。
― 音作りの意識も変わってきました?
キダ モティフォ(以下、キダ) 最近、TREBLEはそんなに上げなくてもいいんじゃないかって思い始めてきました。以前は高音を出した方が抜けるサウンドになると考えてたんですけど、どうやらそれだけではないなと。全体のバランスを念頭に置きつつ、ミッドローも上げた方が結果的に良くなるかなと思ってます。
― キダさんのギターといえば、とにかく音がデカい印象がありますが、ボリュームはどういう基準で合わせてるんですか?
キダ うーん、「ここまでボリュームを上げたら、いい音になる」みたいなラインがあるじゃないですか。自分的には上げられるところまで上げたいんですけど、海外行くと小さめに出してくれって言われることが多くて、しぶしぶ下げたりしてます(笑)。
― (笑)メンバーからクレームはないですか? 大きすぎるぞって。
キダ クレームは今のところないです(笑)。アンプで上げつつ、足下のオーバードライブのボリュームで気持ち絞ったりすることはあります。
― 中嶋イッキュウ(Vo, G)さんとのツインギター編成ですが、お互いに役割分担みたいなものがあるんでしょうか?
キダ 私はあまり考えたことがなくて、自分の音を優先している感じですね。うまいこと向こうが合わせてくれているので、自由にやらせてもらえてます。
― キダさんのお父さんはギタリストなんですよね。家にもアンプが置いてありました?
キダ はい、父親が置いていたフェンダーのアンプがありました。練習用って感じで使ってたと思うんですけど。田舎だったので家で大きな音を出しても文句を言われることなく、ガンガンに鳴らして弾いてました。今は一人暮らしなので、さすがに無理ですけどね。
― リハーサルスタジオで初めてアンプを鳴らしたときの記憶で、何か印象に残ってることはあります?
キダ 初めてバンドでスタジオに入ったときは、ギターの音が小さかったですね。家の中で鳴らすのに慣れてたので、そんなに大きい音を出すこともなく、今より控えめにしてました。
― 当時、キダさんが「こういうギターの音を出してみたい!」ってインスピレーションを受けたアーティストって誰かいますか?
キダ 最初は、ACIDMANの大木(伸夫)さんのような音が出したかったんですけど、自分が使ってるギターはシングルコイルなので、シングルコイルにオーバードライブの組み合わせでは出ないことに気づいて(笑)。そのあとはNUMBER GIRLに行き着き、向井(秀徳)さんのテレキャスのジャキっとした音がカッコいいなと思い、向井さんのサウンドをもうちょっとふくよかな感じにしたものを目指してましたね。
― tricotになってから今に至るまで、自分がイメージしている理想のギターサウンドっていうのは本質的に変わらないですか?
キダ 出したい音は変わらないと思います。ただ、昔はどうしたらこういう音が出るんだろうという仕組みがまったく分かっていなくて、やみくもにやってた記憶はありますね。
― 新作『3』のレコーディングでもツインリバーブを使用されたとか。
キダ 1曲だけ別のアンプで弾きましたけど、それ以外は全部このツインリバーブですね。前作でも使っているので、エンジニアさんと一緒に音作りがしやすいというか、私がイメージしている音を共有しやすかったです。
― 全編通してキダさんのギターの軸はしっかりありつつ、曲に合わせて細かい変化をつけてますよね。
キダ 本当に細かいことなんですけど、ピッキングや指弾きの違いもそうですし、ピック弾きでもアタック感を変えてみたりとか、だいたい感覚的なアプローチで弾いてますね。
― パソコンに繋げてイヤフォンで聴くように、アンプを使わない人も最近は多いんです。でも、ピッキングのニュアンスで音量じゃなくて音色も変わる感覚って、やっぱりアンプを通さないと分からないですよね。
キダ そうですよね。
― だから、キダさんの場合はギターを弾き始めたときから、アンプで鳴らせる環境にあったのも大きいのかなと思いました。
キダ アンプに繋いで弾くのと、繋がないで弾くのとでは出てくるフレーズもだいぶ変わってくると思いますね。アンプで鳴らしてるとパワフルだし、勝手にじゃんじゃん弾きたくなるというか。まったく別のものになる。
― 今回の特集に出演してくれるギタリストの皆さんへの共通質問なんですが、ギターとアンプの音って何対何の割合で成り立っていますか?
キダ 7:3ぐらいですかね。アンプが7、ギターが3。ギターはある程度ショボくても、アンプでなんとかなるような気がします。
’68 Custom Deluxe Reverb®
1968年に発売された通称“シルバーフェイス”を、現代のコンセプトを基に復刻した’68 Custom Twin Reverb。1691年、ザ・ビートルズの『ルーフトップ・コンサート』で使用されたモデルとしても有名だが、ただの復刻ではない大胆なモディファイが施されている。シルバーフロントパネル、ドリップエッジと呼ばれるグリル、パールブルーブロック体のロゴ、青に輝くパワーインジケーターなどの外観は当時のモデルを踏襲しているが、CustomとVintageという2つのクリーンチャンネルを装備。従来のトーンを奏でるVintageチャンネルに対し、Customチャンネルは’59 Bassmanのモディファイトーンコントロール回路を基に設計。さらに、スピーカーをCelestion製のG12V-70に変更することで、伝統のクリーントーンを継承しつつ、現代のニーズに対応するパワフルなトーンを獲得することに成功している。
「最初はツマミをすべて“5”にしてから、TREBLEをちょっと上げて音作りしていきます。アンプで土台を作ってから、エフェクターで味付けしていく感じです。あまり歪みすぎないようにはしていて、クリーンに近いオーバードライブというか、基本的にオーバードライブは踏みっぱなし。あくまでアンプを下地にして、コンプレッサー的な意味も込めつつオーバードライブを使ってます」
› ’68 Custom Deluxe Reverb®製品ページ
キダ モティフォ
2010年9月に中嶋イッキュウ(Vo, G)、ヒロミ・ヒロヒロ(B, Cho)とともにtricot結成。2011年8月にライブ会場および通販限定で1stミニアルバム『爆裂トリコさん』をリリースし、11月には自主企画イベント「爆祭-BAKUSAI-」を初開催した。2012年5月には初の全国流通作品となる2ndミニアルバム『小学生と宇宙』を発売。継続的なリリースや、大型フェスなどへの出演、海外ツアーの開催など精力的に活動を行う。ドラマー脱退を経て、2015年2月に4thシングル「E」、3月に2ndアルバム『A N D』を発売した。9月にバンド結成5周年を迎え、10月から翌2016年3月まで北米、日本国内、ヨーロッパツアーを実施。同年4月には2015年夏に実施したドラマーオーディションの応募者から選ばれた4名とともに制作した新作CD「KABUKU EP」を、2017年5月には3rdアルバム『3』をリリースした。
› toricot:https://tricot.tv/