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ますますフェンダーと僕は シンクロしているなぁって思いました

ASKA

琴線に触れる美しいメロディーと、圧倒的で独特な歌唱で国民的ヒット曲を連発してきたASKA。そのASKAがステージやMVなどでギターを弾く姿を観たことは何度もあるが、ギタリストとしてのインタビューを読んだ記憶がない。6月と7月にリリースされた新曲でもフェンダーのアコースティックギターを弾いているASKAのギターにまつわる話と、今秋から全国ツアー「billboard classics ASKA PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2018 -THE PRIDE-」などを行い、シーンに本格的に復帰するその心情を聞いた。

ギターを覚えたいというよりも “歌う”ためにギターが必要だった
 

―  ASKAさんとギターの出会いは?

ASKA 中学生の時です。中学生の時に僕はウクレレを弾いていたんです。その後、クラスにギターを持ってきた奴がいて、ギターを持ってドーンって弾かれると、ウクレレって飛んじゃって(笑)。カッコいいなと思いながらも、その時はギターを手にしなかったんですけど、ギターの圧倒的な存在感はインプットされちゃったわけです。当時、僕は剣道一筋だったんですけど、高3で剣道にひと区切りついたんです。で、やることがなくなって、昼間家に帰るようになったわけですが、友達と一緒に帰りながら“俺は違うんだ”って心のどこかで思ってたんです。本当にあの時は…心にポッカリ穴が空いた感じで…。

―  何となくわかります。

ASKA その時に耳にしたのが井上陽水さんだったんです。それまでは歌謡曲を専門に聴いていたので、陽水さんのアルバム「氷の世界」「陽水II センチメンタル」を聴き始めた時に“この音楽は何だろう?”と思ったんですね。明らかに自分がいいと思ってきたものが覆されたんです。それで、陽水さんみたいに歌ってみたいと思うようになって、友達からギターを借りたのが初めてでしたね。

―  井上陽水さんがきっかけだったんですね。

ASKA 陽水さんの曲を聴くようになって自分で歌いたいと思って、それで初めてギターのコードを覚えました。普通ギターを始めた時って誰かの曲のコピーから入るんですけど、僕は陽水さんみたいに歌いたかったから、コードを3つくらいしか知らないのに“だったら3つで曲を作ってみよう”と思って曲作りを始めたんです。なので、僕の歴史の中でギターで曲をコピーしたことがないんです。

―  それはすごい!

ASKA コードを4つ覚えたら、コード4つで曲を作り、5つ覚えたら5つで曲を作っていました。それで秋の学祭ではもうステージで歌うようになってました。だからギターを覚えたいというよりも“歌う”ためにギターが必要だったんですね。

―  今でもASKAさんはステージでギターを弾きますが、ASKAさんとギターの関係って今はどんな感じですか?

ASKA 質問の答えから少しズレるかもしれませんが、実は左手の親指に問題があってバレーコードが押さえられないんですよ。

―  えっ!? そうなんですか!

ASKA そうなんです。知らないのも驚くのも無理はなくて、この話、メディアで言うのは初めてです。学生の時、スキーで左手の親指を折ってしまったんです。しかも3回も。一応骨はくっついたんですけど、斜めにくっついちゃっていて、未だにしっかりとギターのネックが押さえられないんですよ。バレーコードってネックの後ろ側を親指で固定しなきゃいけないんですけど、1曲演奏すると曲の半ばから左の親指が痺れてきちゃいます。それでもギターはやりかったので、省略コードで演奏していますが、バレーコードが入っている曲は途中で痺れてきちゃうんです。ステージの映像をよく観てみると、間奏で左手を振って痺れを取っているのがわかります。未だにそういう状態だから、ギターも上手くならないんですけど…。先日、フェンダーさんのショウルームにお邪魔した時に、素敵なアコースティックギター(MADE IN JAPAN PM-4CE AUDITORIUM CUSTOM)に出会って買わせていただいたんです。とても気に入ったので“じゃあこのギターで楽曲作ります”と、約束しました。その後すぐに作ったのが6月にリリースした「イイ天気」という楽曲です。

―  ありがとうございます。フェンダーのアコギの弾き心地はどうでしたか?

ASKA これはお世辞じゃなくて、最初にジャランって弾いた時の第一印象が6弦から1弦までバランスがいいなって。ギターってどこかに音が溜まるんですよ。一番溜まりやすいのはローなんですけど、ローの溜まりもないし。ネットで調べると、楽器屋さんのコメントでも“バランスがいい”って書いてありました。やはりそこが売りなんですね。

―  フェンダーアコースティックギターの音の良さ、ギターのクオリティの高さに「イイ天気」は呼ばれて生まれたんでしょうか?

ASKA それは絶対にあります。ギター曲で、Aポジションから展開していく楽曲を書いたのは今回が初めてです。 ギタリストにとって「E」「G」「A」「D」は、基本ですが、どういうわけか始めてでした。もちろん、カポタストを、2フレット目につければ「Gで弾けますので、それはありました。あのフェンダーのアコースティックギターとの出会いがなければ、ポジションAからの曲は書いていなかったですね。それと…。

―  それと?

ASKA 今年、還暦なので、赤いギターを探していたら、フェンダーさんで素敵なアコギ(REDONDO CLASSIC)を見つけて購入させていただきました。7月にリリースした「憲兵も王様も居ない城」という曲はその赤のアコギを弾いています。オープンチューニングでイントロを弾いてますが、あれもすごくいいギターです。しかも、SNSにギター写真もアップしたらみなさんがすごく喜んでくれましたね。“見た目がキレイだ”と。なので、ステージにあの赤いアコギを持って上がっただけでお客さんも盛り上がると思いますよ。もうすっかり浸透していますから。

人生に一度は“ギターを鳴らして歌ってみる” っていうコンセプトを思いついたんです
 

―  ASKAさんが活動を再開していく上で、活動の礎になっているのが去年立ち上げた配信サイト「Weare」だと思うんですけど、あらためてコンセプトを教えてください。

ASKA 「Weare」は利益を追求しないのが特色で、アーティストのための配信サイトです。その構想は20何年前からありました。当時からいつの日か音楽産業は衰退していくと思っていました。時が流れ…海外でストリーミングが主流になってきた時に、これは大変なことだなと思ったわけです。ストリーミングは僕個人としては反対です。ですが、時代が生んだ産物なので、これはもう文化です。文化を否定しちゃいけない。なので、ストリーミングは受け入れなきゃいけない。でも、ストリーミングだとミュージシャンはみんな食えないです。イギリスでは、500万回アクセスで、15万円そこそこしか還元されなかった事実が露呈しました。あまりに酷すぎます。ちゃんと音楽は買っていただき、そのままミュージシャンに還元できるシステムを作らなきゃダメだと思いサイトを立ち上げました。音源を出してもミュージシャンが食えないと、いつかミュージシャンはいなくなるし、若い人がミュージシャンになる希望もなくなります。

―  ええ。

ASKA で、驚いたのが、フェンダーさんも次世代のミュージシャンを応援したり、アーティストの声を自社コンテンツで直接発信する 取り組みをしているのをスタッフから聞いたんです。ますますフェンダーと僕はシンクロしているなぁって思いました。それとやっぱり、ギターってカッコいいですよ。人生の中で誰もが一度はギターを弾いてみたいな、覚えてみたいなっていう時期が必ずあるはずです。そんなこと思わない人は誰もいない。だから、“人生に一度ギターを弾くことがあっていいんじゃない?”って思っているんです。ギターを弾けるってことは特別である必要はなくて、ギターへの距離がどんどんなくなっていって“ギターって誰でも弾けるよ”ってものになってほしいです。

―  あらためて、ギターを弾く魅力って何だと思いますか?

ASKA みんな歌うの、好きなんですよ。“私は歌わないんだ”っていう人は確かにいます。それは、カラオケで歌った時に自分が上手くないのを知っているから人前で歌わないだけの話で、歌を嫌いな人なんかいないですよ。人前に出て歌を歌うことが嫌いな人たちも、家でギターをポロポロと鳴らして好きな曲を歌ってみたら楽しいはずなんです。なので、人生に一度は“ギターを鳴らして歌ってみる”っていうコンセプトを思いついたんです。

―  と言いますと?

ASKA 僕はキーボードで曲を作るようになって、ASKAのコード進行は難解だって言われてきたし、それは確かに自分でも認めているんです。狙っているところもあるので。だけど、いつかギターだけでアルバムを1枚作ってみようと思ってたりもします。しかも、難しいコードじゃなくても、これだけの曲を作れるんだぜっていう曲を作って、誰もがギターで歌ってみたい、そんなアルバムを作ってみたいですね。

―  ビギナーでもコピーできる、しかも名曲ばかりのアルバムですか?

ASKA そうです。コピーしやすい曲を作って集めたら、“人生に一度ギター弾くことあっていいんじゃない?”と“ギターを鳴らして歌ってみる?”を実現してもらえるかなって。

―  そのアルバムは楽しみです! 楽しみと言えば、ベストアルバム「Made in ASKA」が10月17日にリリースされますね。

ASKA ファンの方たちが春に「We are the Fellows」というベストアルバムを作ってくれたんですけど、見事な曲順でしたね。今回は僕自身が選曲したベストアルバムです。曲順は時代順に並べただけなんだけど、すっごくいい曲順になりました。あと、以前からステージで歌っていた楽曲をボーナストラックとして入れたのと、もう1曲新曲加えました。全15曲入りです。さっき事務所で聴いて来ました。ジャケットではフェンダーのアコースティックギターを弾いてます(笑)

―  タイトル「Made in ASKA」もシンプルでいいですね。

ASKA このアルバムタイトルはすごく気に入ってて。よくこんなタイトルが誰にも使われずに残っていたなと思いましたね。個人的には、小田和正さんの「自己ベスト」に張り合ったタイトルです(笑)小田さんのベストアルバムのタイトルを知った時「やられた!」と、思いました(笑)。今回、僕は、“どうだ! 小田さん!”っていう感じですね(笑)。

―  そして、11月からツアー「billboard classics ASKA PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2018 -THE PRIDE-」も始まりますね。

ASKA ツアーは2013年の春以来なので、5年ぶりの本格的なライヴです。

―  いろんな思いが込められていると思いますが。

ASKA いろんな思いを込めすぎて、あまり感傷的になったり激情したくはないんです。淡々とステージをこなしていく、ついこの間までステージをやっていた続きが行われてるような状態でやりたいなと思っています。なので、感動の名場面にいかにならないようにするかがテーマです。普通に出てきて普通に歌います。でも、誰にも歌えない歌に向かわなきゃですね。



PROFILE


ASKA
79年、CHAGE and ASKAとして「ひとり咲き」でデビュー。「SAY YES」「YAH YAH YAH」「めぐり逢い」など、数々のミリオンヒット曲を世に送り出す。音楽家として楽曲提供も行う傍ら、ソロ活動も並行し、91年にリリースされた「はじまりはいつも雨」がミリオンセールスを記録。同年のアルバム「SCENEⅡ」がベストセラーとなり、99年にはベストアルバム「ASKA the BEST」をリリース。また、アジアのミュージシャンとしては初となる「MTV Unplugged」へも出演するなど、国内外からも多くの支持を得る。2017年には、自主レーベル「DADA label」より、アルバム「Too many people」「Black&White」 等をリリース。同年、ミュージシャンのための配信サイト「Weare」を立ち上げ、2018年3月から毎月新曲配信を行う。今秋には、ASKAが選ぶベスト盤とビルボードクラシックス公演を控える。
› Website:ASKA Official Web Site「Fellows」

New Relese
BEST ALBUMbr /> Made in ASKA
¥3,800(tax in)
ヤマハミュージックコミュニケーションズ
2018/10/17 Release

Artist