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Special Interview: 春畑道哉(前編)

MICHIYA HARUHATA

TUBEのギタリスト、春畑道哉のシグネイチャーモデルMichiya Haruhata StratocasterがこのたびMADE IN JAPANラインでリリースされることになった。本モデルはFENDER CUSTOM SHOPのマスタービルダー、ジェイソン・スミス製作のMichiya Haruhata III Stratocaster Trans Pinkを忠実に再現したもの。鮮やかなトランスピンクカラーに塗装された、フレイムメイプルトップのアッシュボディはノーピックガード仕様。HSH構成のピックアップも、まるで歌うような春畑のギターサウンドを支えるべく、オリジナルモデルと同様、ボディにダイレクトマウントしている。そこで今回は、前編・後編の2回にわたって春畑のインタビューをお届けする。前編では、コロナ禍を春畑はどう過ごしたのか、来るべきTUBEの新作はどのようなものになるのか、じっくりと話を聞いた。

何とかして音楽が止まらないように したいと、ずっと今も考えています
 

― 新型コロナウイルスの感染拡大により、世界中が大きな変化を余儀なくされました。そんな中、春畑さんはどのような日々を過ごしていましたか?

春畑道哉(以下:春畑)  ちょうどTUBEのレコーディング中だったんですよ。リズム録りがほぼ終わり、あとはギターのダビングと歌入れを残すだけという中で、段々事態が深刻化していきました。そのうち自粛要請が東京都から下り、“これはもうレコーディングも難しい”という話になって一旦ストップしました。今となっては少し落ち着いてきてはいますが、その時はもうどうなってしまうのか…という感じでしたね。

― しかも、世界中が同じような状況でしたからね。

春畑  まさかこんなことになるとは…。ただ、ずっと家にこもっていると演奏したいし、それを人に聴いてもらいたい気持ちが沸々と湧き上がってきて。何とか聴いてもらえる方法はないかな?と思った時に、SNSというツールはとても便利でした。ちょうどヴォーカルの前田亘輝も、“この状況下で何かできることはないか?”と模索していたので、それこそフェンダーのAcoustasonic Stratocasterを使ってリモート演奏動画をアップしてみました。

― コロナ禍で、周りのミュージシャンやスタッフの声も聞きましたか?

春畑  聞きました。コンサートが軒並み中止になり、知人のトランポ(トランスポーター)の会社が大変だったり、特効(特殊効果)などコンサートの演出に関わるスタッフが窮地に陥っていたり。もう、何とかして音楽を止めないように、音楽が止まらないようにしたいと、ずっと今も考えています。

― ステイホーム期間中、音楽以外のこともしていましたか?

春畑  やっぱりレコーディング中ということもあり、“このままレコーディングできなくなっちゃうのかな”“コンサートどころの騒ぎではないしな”なんてことばかり考えていましたね。とにかく、最小限の人数で仕上げていこうということになって、スタジオにはエンジニアとプレイヤーだけという状況。かなり孤独なギターダビングでした。

僕ら、世代的にもかなりアナログなバンドなので(笑)、SNSでライヴ配信をするにしてもどんな機材が必要なのかよくわからないんですよ。今までは、携帯電話のボイスメモ機能を使って、それでメンバーに音のアイディアを送る程度のことしかしていなかったですからね。

― でも、春畑さんがアップしていた配信動画はギターが数本重なっていましたよね?

春畑  あれは、まずバッキングギターをクリックも何もなしでケータイに録音して、次はそれをヘッドホンでモニターしながら次のギターをダビングしていくという、まさにラジカセでピンポン録音していた時と同じ原理で多重録音をやっていたんです(笑)。Twitterでファンの人たちに“何の曲を聴きたいですか?”とリクエストを募って、それに応える形で配信していました。以前の僕らには、SNSでリクエスト曲を募り、それを演奏するなんていう発想はなかった。やはり時間がたくさんできたおかげで、いろいろな方法を模索することができたのかもしれないですね。

― 緊急事態宣言が解除され、9月にはTUBEの有料配信ライヴ『TUBE LIVE AROUND SPECIAL 2020 HELP! 〜NEVER GIVE UP SUMMER〜』が開催されました。

春畑  TUBEとしては、今までやったことがなかった無観客の配信ライヴにチャレンジしました。とにかく“初めて尽くし”で手探り状態。横浜スタジアムで演奏するのはこれが連続30回目だったんですけど、それがまさか無観客になるとは…。本番になっても、リハーサルと風景が変わらないのが不思議でしかたなかったです(笑)。

― そうですよね(笑)。今後、ライブのあり方や音楽のあり方はどう変わっていくと春畑さんは考えますか?

春畑  まず配信ライヴに関しては、いま多くのバンドが試行錯誤しながらさまざまな方法を試みていて、このままひとつの選択肢になっていくのでしょうね。世界のどこにいてもライヴが見られるという、大きなメリットが配信ライヴにはあります。例えば北海道に住んでいて、なかなか横浜まで出て来られない人にもライヴを見てもらえる。コロナによって生み出された“苦肉の策”ではあるんですけど、そこにはいい面もありますよね。

― そう思います。

春畑  それと同時に、リアルのライヴも少しずつ復活していくのでしょうね。僕は今度、お客さんを半分だけ入れたソロツアーを廻る予定なのですけど、それも状況によってどう変わっていくのか今は何とも言えない部分があります。お客さんには必ずマスクをしてもらって、なるべく声も出さないようにしてもらうんですけど、それだと楽しんでくれているのかどうかわかりにくいし…仕方のないことですが。

― とは言え、やっぱりお客さんのいる前で演奏するほうが楽しいですか?

春畑  もちろんですよ。無観客ライヴだと、演奏がバーン!と終わった瞬間に拍手や歓声が起こらず、シーンってなるじゃないですか(笑)。“あれ、これでいいんだっけ?”って、その度にメンバーと目を見合わせちゃう。まだあの瞬間には慣れないですね。

― コロナ禍で制作されたTUBEのニューアルバムも、やはりこれまでとは違ったトーンになりましたか?

春畑  特に歌詞の部分は変わってきたと思います。日々ニュースが深刻になっていく状況の中、前田も歌詞を何度も書き直していました。基本的にTUBEは“みんなで外に出て楽しもうぜ!”という音楽じゃないですか。そんなことを歌っていていいのだろうか?と思う瞬間が、僕も何度かありました。いつもならラブソングや友情を歌った歌詞になるものが、“さすがにこの状況下でコロナをまったく無視したアルバムはおかしいよね?”となって。この状況をストレートに歌った歌詞もアルバムに入りました。

自分たちは音楽しかできないので、聴いてくれた人が少しでも元気になってくれたり、やる気を出してもらえたらいいなと思っています。でもそれは、こうなる前からずっと思っていたことなんですけどね。いずれにせよ、一刻も早くコロナが終息し、以前の様にLIVEが出来る日が来る事を願っています。


› 後編に続く


MICHIYA HARUHATA

MICHIYA HARUHATA STRATOCASTER® TRANSPINK

TUBEのギタリストであり、ソロアーティストとしても幅広く活躍する、日本屈指のギタリストの一人である春畑道哉のこだわりを凝縮した日本製シグネイチャーモデル。

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PROFILE


春畑道哉
85年、TUBEのギタリストとして「ベストセラー・サマー」でレコードデビュー。86年、3rdシングル「シーズン・イン・ザ・サン」の大ヒットでバンドとしての地位を確立。87年、TUBEと並行してソロ活動を始め、現在までにシングル3枚とアルバム12枚をリリース。92年、シングル「J’S THEME(Jのテーマ)」が日本初のプロサッカーリーグであるJリーグのオフィシャルテーマソングとなる。93年のJリーグオープニングセレモニーでは国立競技場の約6万人の観衆を前にライブを行った。2002年5月9日、フェンダーと正式にアーティストエンドース契約を締結。日本人のギタリストとしては初めてのシグネイチャーモデルを発売。これまで、Michiya Haruhata Stratocaster、Michiya Haruhata BWL Stratocaster、Michiya Haruhata III Stratocaster Masterbuilt by Jason Smithという3本のシグネイチャーモデルを発表している。2019年3月リリースの最新ソロアルバム「Continue」は第34回 日本ゴールドディスク大賞 “インストゥルメンタル・アルバム・オブ・ザ・イヤー“を受賞。新日本プロレス大会テーマ曲として書き下ろされた最新曲「Kingdom of the Heavens」は配信限定でリリース中。
› Website:http://www.sonymusic.co.jp/artist/MichiyaHaruhata
› Website:最新ソロアルバム「Continue」