#FenderNews / Special Interview: 日野"JINO"賢二(前編)

Special Interview: 日野"JINO"賢二(前編)

JINO

国内外問わず活躍するベーシスト、日野”JINO”賢二によるこだわりのシグネイチャーモデルJino Jazz Bassが発売される。FENDER CUSTOM SHOP のマスタービルダー、ジェイソン・スミスによって製作された、ʼ75 JAZZ BASS RELIC MASTERBUILT BY JASON SMITHをアップデートする形で開発されたこのJino Jazz Bassには、JINOのこだわりがぎっしりと詰まっている。インタビュー前編では、シグネイチャーモデル誕生までの経緯について語ってもらった。

「JINOのリクエストは、カスタムショップをやり始めてから一番難しいよ」って言われちゃった(笑)
 

― まずは、Jino Jazz Bassの原型となったマスタービルドモデルについてお聞かせください。

日野"JINO"賢二(以下:JINO)  10年くらい前に楽器フェアで、フェンダーのマスタビルダー、ジェイソン・スミスさんにお会いして。当時はまだ彼も若かったんだけど、その時に作っていたフェンダーのPrecision BassとJazz Bassを試しに弾いてみたら、すごく良かったんですよ。自分が持っているオールドフェンダーのベースと、ほとんど同じ感覚がしたというか。なので、2019年12月にフェンダーとエンドース契約をした時、“シグネイチャーモデルを誰に作ってもらうか?”という話になって、真っ先に思い浮かんだのがジェイソンだったんです。まぁ、やっているうちに“JINOのリクエストは、カスタムショップをやり始めてから一番難しいよ”って言われちゃったけど(笑)。

― (笑)。どんなリクエストをしたのですか?

JINO  まずフレットは、俺が持っている63年製のプレベや64〜65年製のジャズベのような、コードを鳴らした時にキレイに聴こえる薄めのシェイプを選びました。指板はローズウッドで、65年後半から始まったブロックインレイを入れています。“バインディング(ボディ、ネック、ヘッドストックなどの角に沿って付けられた縁飾りのこと)付けますか?”と言われたんだけど、バインディングは67年以降に付けられるようになったので、今回はノンバインディングでいくことにしました。  ヘッドはマッチングヘッド(同色のボディとヘッド)で、カラーリングはSEAFOAM GREEN。これってフェンダーの中でも、もっともレアなカラーのひとつだと思うんですよ。67年製のJazz Bassって100万円くらいするんだけど、さらにこのカラーだったらすごい値段じゃないかな。めちゃかわいくないですか?

― カワイイです。女性、男性どちらにも似合いそうですね。

JINO  そう! 女の子にも弾いてもらいたい。フェンダーのベースってサンバーストやブラック、キャンディアップル、オリンピックホワイトなど、素敵なカラーがたくさんあるけど、この色は特に好き。だけど高くて買えないから、だったら自分のモデルにしちゃえ!って(笑)。ピックガードはベッコウと迷ったけど、このミントグリーンが爽やかでいいなって。  ブリッジは従来のL字も好きなんだけど、最近フェンダーがUltraシリーズで採用しているHi-Mass Bridgeに交換したらすごく良くて。パンチがある上にサステインも長いし、ローもよく出るようになりました。ローアクションでテンションも緩くて弾きやすいんです。で、ちょうど付け替えたタイミングで“シグネチャーモデルを作りましょう”という話が来たんですよね。

― そもそも、JINOさんがベースを始めたのはどんなきっかけだったのですか?

JINO  親父がトランペッターだから、最初は俺もトランペットを習わされていたんですよ。でも、俺が14歳の時に兄貴がフェンダーのMustang Bassを手に入れて、それを取り合いながら弾くようになったらどんどん上達していって(笑)。16歳頃のある日、親父がケーブルテレビを観ていたら、俺が黒人バンドの中でベースを演奏しているのが映っていて、それを観た瞬間に“お前、トランペットよりベースがいいよ”って。当時通っていた音楽学校の専攻も、トランペットからベースに変えてもらって。そこから本格的に練習するようになったんですよね。

― ジャコ・パストリアスと出会ったのは?

JINO  17歳の頃だったかな。家を出て一緒に暮らしていたんですけど、彼がフェンダーのベースを使っていたから僕もフェンダーを買ったんです。最初に自分で手に入れたのは1977年のジャズベで、ブラックのカスタムカラーだった。それからずっとフェンダーのベースを買いまくっていますね(笑)。決してコレクター気質というわけではなく、あくまでプレイヤー目線で弾きやすいし、音もいいと思っているから。すごく体にフィットするというか、ベースと俺がひとつになるような感覚があるんですよね。

― JINOさんはサポートベースシストしてスタジアム、アリーナクラスで演奏することも多いと思うのですが。

JINO  そうだね、今は。どんな会場でもJino Jazz Bassの1本でまったく問題ない。オールドのベースそっちのけで、このベースばかり弾いてますね(笑)。先日、リモートで開催された『NAKASU JAZZ 2020』に出演した時もJino Jazz Bassを使いました。終わったあと、モニターで演奏と音と動画を確認して“うわぁ、やっぱりこのベースいい音だなぁ”って思った(笑)。それをもっといい音にしたのが、今回のシグネイチャーモデルだからね。


› 後編に続く


JINO

JINO Jazz Bass®

ジャンルを超えた数多くのトップ・アーティスト達のサポート及びプロデュースや作曲を手がけ、トータルアーティストとしてひときわ信頼を置かれる日本を代表するベーシストの一人である日野”JINO”賢二のシグネイチャーベース、JINO Jazz Bass®︎

詳しくはこちら

PROFILE


日野"JINO"賢二
幼少の時、父とともにNYに移住。9歳よりトランペットを始め、16歳でベースに転向。17歳の時、ジャコ・パストリアスに師事する。19歳よりプレイヤーのみならずミュージックディレクターとしてプロ活動を開始。89年にはアポロシアターのハウスバンドの一員として出演。その後、父や叔父のアルバムに参加、NYブルーノートなどのライブハウスを中心にベーシストとして活動。2003年、アルバム『WONDERLAND』でのデビューを機に本拠地を日本に移して活動。Bob Marley, Deborah Harry, Jeff Mills, Keith Richards, Marcus Miller Band, MISIA, 西野カナとの共演など、数々のライヴサポートやレコーディングワークと共に、エレクトロニック・ジャズ・カルテット SPIRAL DELUXEでの活動や、ジャズ、ファンク、R&Bをクロスオーバーさせた自身のプロジェクトJINO JAMなど、国籍・ジャンルを超えた世界の音楽シーンで活躍するスーパーベーシスト。
› Website:https://www.jinobass.com