#FenderNews / THE ONE. FOR ALL. TAKASHI KATO

THE ONE. FOR ALL.

加藤隆志(東京スカパラダイスオーケストラ)

The One for All.

フェンダーが2020年秋に発表した最新シリーズ“American Professional II”。本シリーズのコンセプトである“THE ONE. FOR ALL.”=“ギターとベースを愛するすべての人に”をテーマに、日本を代表するアーティストにこれまでの歩みやこれからのビジョンを聞く新コンテンツ“THE ONE. FOR ALL.”。第2回目は、東京スカパラダイスオーケストラのギタリストである加藤隆志が登場。


スカバンドを見てギタリストになりたいと憧れられるような存在感を示したい
 

― コロナ禍での音楽活動はいかがでしょうか?

加藤隆志(以下:加藤)  スカパラのツアーファイナルだった2020年3月20日の代々木第一体育館でのライブ(30th Anniversary 2020『TOKYO SKA 30 完結編 ~ツギハギカラフル~』)が中止になったのですが、その日に無観客配信ライヴを無料でやったのを皮切りに、海外アーティストと「上を向いて歩こう」をリモートセッションしてYouTubeにアップしたり、4月には配信シングル「倒れないドミノ」をリリースしたり、9月10月には人数を制限して野外で久しぶりにお客さんの前で演奏しました。本当にできるところでは最大限に音楽を届けられる活動をしたという感じです。フェスがなく、なかなか音楽仲間とも会えない状況だったのですが、[Alexandros]の川上洋平くんのほか、ヴォーカリストをゲストに呼んでコラボレーションでの制作は何とかやれました。作品を作って出すことが、去年はミュージシャンにとって唯一の希望だったように感じます。

― その集大成として、3月3日にはニューアルバム『SKA=ALMIGHTY』がリリースされますね。

加藤  31年目にして最新作が最高だと言える一枚になっていますし、スカパラのサウンドが進化したなと感じてもらえるはずです。

― 最高にして濃密なアルバムに?

加藤  そうですね。音はいくら“密”でも大丈夫ですから(笑)。

― プロとしてのターニングポイントを挙げるとすると?

加藤  地元・鳥取の友達と組んだ“lost CANDI”というロックバンドでデビューしたのですが、そのバンドが僕の礎になっています。そのバンドをやりながら、一人でギターの仕事をもらいながら活動していた時期があったんです。その時に、スカパラの川上(つよし)さんと亡くなった青木(達之)さんのお二人がプロデュースしている、シンガーソングライターの高橋徹也くんのバックサポートやることになってスカパラと知り合ったのが大きなターニングポイントですね。その後、スカパラの先代のギタリスト・寺師徹さんが脱退された時にサポートの話がきて。そこでスカパラと出会い、初めて一緒に音を出したのですが衝撃を受けました。“プロミュージシャンってこういうことか”と肌で感じたのは、スカパラとの出会いが大きいです。出会いは97年で、98年から2年間サポートでツアーを廻らせてもらって2000年に正式加入しました。

― スカパラから感じたプロフェッショナリズムとは?

加藤  細かいことを言えばステージングとか。ステージに対する想いを目の当たりにしたっていうのもあるんですけど、一番大きかったのは99年です。青木さんが亡くなった年のツアーで、僕もサポートで参加する予定だったんです。春のツアーの2〜3週間前に青木さんが亡くなって…僕はその時“このツアーはキャンセルだな”と勝手に思っていたんです。その日に事務所の会議室に呼ばれて、メンバーの会話を聞いたのですが、誰一人としてツアーを止めようと言わなかったんです。ドラムがなくても、リズムマシーンでもやろうみたいな話をしてて。“何だこのバンドは!”って思いました。バンドの絆と音楽を奏でる意味が、ただ音楽が好きで奏でているっていう次元じゃないところに意識があるんですよ。いろいろなミュージシャンに会いますけど、やっぱりスカパラのメンバーはみんなすごいなって思います。プロミュージシャンとしての原点はスカパラのメンバーですね。

The One for All.

― 加藤さんのプロフェッショナルとしてのこだわりは?

加藤  スカパラの中に自分のギタースタイルをどう混ぜていくか、どう新しいスカパラにしていくかをずっと模索し続けていて、今もまだその最中だと思っています。プロとして言うと、本当に単純に目の前のお客さんをとにかく“躍らせる”っていうのが第一にあります。ギタリストとしては、スカという音楽に対してギターができる役割を、スカバンドとして確実に更新したいなと思っているんです。偉大なスカバンドは、スペシャルズやフィッシュボーンなどたくさんいらっしゃるけど、もっともっとギターがスカで暴れ回れる、スカバンドを見てギタリストになりたいと憧れられるような、そういう存在感を示せないかなと絶えず思っています。

― 加藤さんは今やフェンダーStratocasterの顔ですが、ストラトへの想いは?

加藤  プロになるぞ!って最初に買ったギターはフェンダーじゃなかったんです。しかもストラトって、当時20代の僕から見たらすごくおじさんが弾くものだと思っていたぐらいで(笑)。だけど、自分が出したい音がどういう音なのかを辿っていくと“あ、ストラトだな”と。それから違うギターも弾いたのですが何かしっくりいかず、フェンダーの61年製のTelecasterを買ったんです。テレキャスで“俺一生このギターなんだろうな”と思っていた矢先に“いやストラトなんだな”と思って、そこからあの流木(塗装が大きく剥がれた愛機をこう呼んでいる)に手を染めるという(笑)。当時、太い音からだんだん鋭利な尖った音に向かっていて、ロバート・クワインみたいな音を求めていたんです。そこでその流木と出会いました。65年のあの青いストラトだけが、ヴィンテージの良さと突き刺すようなリアのサウンドでバシーン!ときて“これしかないな”と。で、男の60回払い(笑)! “もうこれは実家に帰れないぞ”って。それからはずっとストラトですね。

― American Professional II Stratocasterはどうですか?

加藤  僕が20代の頃にプロを目指して“一本目を買うぞ!”っていう時にこのAmerican Professional II Stratocasterに出会っていたら絶対に買っていました。そういう一本だと思うんです。逆に言うと、このギターはその人の顔になって、“このMiami Blueと言えばあの人だよね”ってなれるギターです。あと、ストラトの何が好きって形が好きだなと。ギターとしてこんなにセクシーな形はないです。今見ていてもお酒が飲めるくらい美しい。何でこうなったんだろう?と知りたいくらいこのデザインが好き。あとは色の“遊び”も特徴ですよね。60年代当時からすごくキレイなカラーが出ていて、ファッションとしても素晴らしいんです。ミュージシャンのことをステージ上でもプロデュースしているというか、昔からカラーバリエーションというファッション性も兼ね備えていたのも大きいです。さらに、自分でカスタムできるのもいいですね。だからずっと使い続けられる。このAmerican Professional II Stratocasterに関しては、古き良きものと新しいものが融合されている良さが感じられます。だから、今から自分の一本にするべきギターだと思いますね。

― これからギターを始める人にアドバイスを送るとしたら?

加藤  好きな曲を弾くことですかね。好きな曲を弾くためにギターがあって、好きな曲が弾けるようになったらよりギターが好きになる。だから、好きな曲を聴いたり、好きな人に聴いてほしいとかが大切だと思います。ギターと一対一で向き合うよりは、ギターを弾くことによって何かができる、ギターと一緒になった時に何かができるんですよね。次の目的が見えるとより楽しくなると思うので、身近な人に向けて弾くのもいい。ギターには無限の可能性があるんだなって未だに思いますし、一生かけられるものです。

― 最後に、加藤さんにとってギターとは?

加藤  ギターを弾いているから、いろいろな人と出会えるんですよね。鳥取の田舎出身なので、メキシコの片田舎に行ったりすると思うんです、「あの少年がもしギターを始めたら、将来、コーチェラ(・フェスティバル)とかに出るかもしれない」って。ギターとの出会いと人との出会いで、いろいろな景色を見させてもらっています。フェンダーのギターでいろいろな景色を見させてもらっているし、あの流木もいろいろな景色を見てきているし(笑)。うん。人と人をつなげてくれるものですね、ギターは。



The One for All.

加藤隆志 機材

AMERICAN PROFESSIONAL II STRATOCASTER®

PROFILE


東京スカパラダイスオーケストラ
89年、アルバム『東京スカパラダイスオーケストラ』(通称“黄色いアナログ”)でデビュー。幾度となるメンバーチェンジを乗り越え、現在のメンバーは9人。インストゥルメンタルバンドとしての確固たる地位を築く中、2001年からはメンバーによる作曲、谷中敦(Baritone sax)による作詞でゲストヴォーカルを迎え入れる”歌モノ”に挑戦。田島貴男、チバユウスケ、奥田民生を迎え、日本の音楽シーンに衝撃をもたらした”歌モノ”シングル3部作はヒットし、2002年リリースのアルバム『Stompin’ On DOWN BEAT ALLEY』はヒットチャートで1位を獲得。以降も甲本ヒロト、Ken Yokoyama、宮本浩次、桜井和寿など数多くのヴォーカリストを迎え入れる中、10-FEET、MONGOL800、ASIAN KUNG-FU GENERATIONとはバンドコラボ3部作に挑むなど、センセーショナルなコラボレーションが常に話題となっている。 デビュー以来、世界31ヵ国での公演を果たし、グラストンベリー(イギリス)、ユーロキーンズ(フランス)、モントルー・ジャズ・フェスティバル(スイス)、ヴィヴェ・ラティーノ(メキシコ)、ロラパルーザ・チリ(チリ)など世界最大級の音楽フェスにも多数出演。2013年のコーチェラ(アメリカ)では日本人アーティストとして初のメインステージに立つ快挙を成し遂げている。 デビュー30周年イヤーを駆け抜け、新たなフェーズへと進んだ今もなお、バンドのテーマである“NO BORDER”を掲げ、音楽シーンの最前線を走り続けながらトーキョースカの楽園を広げ続けている。

› Website:https://www.tokyoska.net