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TURNING POINT OF PERFORMER VOL.9

林萌々子 | Hump Back

TURNING POINT OF PERFORMER

自分や仲間だけで演奏している“プレイヤー”から、オーディエンスを相手にして演奏する“パフォーマー”。同じ演奏だが、何かが違うはずだ。日本のロックシーンを熱くしているパフォーマーたちは、どうやって“プレイヤー”から“パフォーマー”へとステップアップし、また、パフォーマーであることにどんな魅力を感じているのか。TURNING POINT OF PERFORMERと題したシリーズ9回目は、Hump Backの林萌々子(Vo,Gt)が登場。

禁止されようが止められようが、やりたい衝動が一番ロックだと思っている
 

― まずは楽器を始めたきっかけから教えてください。

林萌々子(以下:林)   小さい頃から音楽や歌うことが好きでした。特に兄貴が家でよくチャットモンチーなどの音楽をかけていて、チャットモンチーが好きでした。ギターを始めたきっかけは、中学2年から3年の頃に付き合っていた彼が文化祭バンドをやっていたんです。私もやりたいな、負けたくないなって思って、おじさんが趣味でやっていたギターを引っ張り出して、雑誌Go!Go!GUITARやその時流行っていた曲のコードが載っている雑誌を買って、弾いたり歌ったりしていました。それが中学3年生の時です。それで楽しいな、人前でやりたいなと思って路上に出たんですよ。3曲くらいしか弾けなかったんですけど、それでも路上に出たいなと思って。で、路上ライヴと言えばコブクロで、コブクロは天王寺のMIO前でやっていたのを知ってそこまで行って弾き語りをしました。

― 最初の弾き語りはどうでした?

林  楽しかったですね。通行人が止まったり止まらなかったり。自分の部屋じゃなく人前でやっているという事実だけで楽しかったです(笑)。

― バンドではなく弾き語りでいくというチョイスもあったと思いますが。

林  そうですね。でも、チャットモンチーに憧れていたのもあったので、バンドに対しての憧れはずっとありました。高校に入学して、軽音楽部でバンドをやろうと思って、その時に組んだのがHump Backだったんです。

― ライヴデビューは文化際ですか?

林  顧問の先生が“これ出てみる?”って声を掛けてくれた楽器屋さんのイベントでした。“誰が来るの?”っていうようなかなりコアな大阪のライヴハウスイベントです。たぶん、それが初ライヴだったと思います。ただ、イベントの内容とか全然覚えてないんですよ(笑)。チャットモンチーとELLEGARDENをやった覚えがあります。

― 緊張はしましたか?

林  めっちゃ緊張したような気がします。でも、本当に覚えてないんです。ヒューマンアカデミーという専門学校があって、その音楽コースが主催している高校生イベントにもよく出させてもらっていたのですが、そのステージのほうが印象に残っています。PAも照明も学生がやっていて、私たちのような高校生バンドがよく呼ばれて演奏していました。バンドを育てようとしてくれていて、セッティング表の書き方や挨拶の仕方、バンドマンとしての心得など、ステージ上以外のことをたくさん教えてくれました。そこで教わったことは大きいですね。

― かつて路上で弾き語りをやっていた身としては、バンドについて実践的な勉強になったと。

林  そうですね。そして、それが楽しかったですね。ひとつの目標に向かってどれだけ良いライヴができるか。みな高校生なりに大事なステージだと思っていたと思います。しかも、そのイベントで優勝を決めて。最初はコピーだったけど、段々とオリジナル曲を作るようになりました。

― その後、閃光ライオットにも出場しプロへの道が開けるわけですが、どんな風にしてそこまでの道を?

林  その先の一歩は“徐々に”でした。専門学校の紹介で近くのライヴハウスでイベントの企画をしたり、お客さんは軽音楽部の友達でしたが、そういう小さな一歩を踏んでいきました。大きな岐路は高校の卒業です。卒業してしまえば、就職する子や進学する子もいて、今まで通り仲間たちがライヴに来てくれるわけにもいかなくなりました。でもライヴハウスには出たいから、いろんなライヴハウスに行きました。バンドとして一歩を踏み出すか、普通の女の子として生きていくのかに分かれて、そのあたりからメンバーの入れ替わりも多くなりましたね。

― 林さんは“普通の女の子”じゃないほうにいったわけですね。

林  バンドを辞める選択肢がなかったんです。普通に就職するとは思わなかった。とは言え強い決意があったわけでもなく、何となく“辞めちゃうの? こんなに楽しいのに”くらいの感じでした。

― 何がどう楽しかったんですか?

林  何だろう。バンドで歌うこと?すべてかな?何が楽しいのか聞かれたら、それって“犬のどんなところがかわいいの?”みたいな話なんです、私からしたら(笑)。“全部かわいいやん”って(笑)。

― 「閃光ライオット」は自分たちの意志で応募したのですか?

林  そうですね。当時は同い年のバンドも応募していて、“負けたくないな。うちらもちゃんとバンドやってきたし”という気持ちがあって。応募したら書類が通って驚いて、三次審査まで行きました。

― 大阪大会まで進出したんですよね?

林  はい。それは大きかったですね。自分たちの中だけでやってきたことが、初めて大人の人たちに認められた気がして。自分たちの音楽が一歩外に出たよう感覚がありました。

― 手応えはあったんですか?

林  あったとは思うんですが、何よりも楽しかったなって。これで認めてもらえても認められなくても、やれることはやったんじゃないかなという感じでした。

― なるほど。閃光ライオットが2012年で、その年には音源までリリースしていますが、2013年にはメンバーの脱退がありバンド活動が止まっていますよね?

林  そうですね。1人目のドラマーが抜けた時はサポートを入れて活動していたのですが、2013年末にベースも抜けてしまって。当時はその子とずっとHump Backをやっていくと思っていたので、抜けた時はどうしようって…。それで一度活動を休止したんです。

― なるほど。

林  当時は大学生だったので、バンド活動を止めたら、自分の中でバンドについて考える時間がなくなったんです。学校に行ってバイトをして、家に帰って寝て、学校に行ってバイトして…の繰り返しが妙にラクだったんですよ。でも、その繰り返しばかりで次第に自分がおかしくなってしまうんじゃないか、腐っていくんじゃないかってどうしようもない気持ちになって、ラクなことがすごく気持ち悪くなったんです。ラクだと思ってしまっていることも気持ち悪かったし、“ラクだけど全然楽しくない”と思うようになって、そろそろ復活しようと言ってくれた友達もいて、サポートベースを入れてライヴをした時に“これやったんや!”って。今でも、ただラクなだけだったあの時には戻りたくないなと思います。

― 高校生からライヴをやってきて、忘れられないライヴでの景色ってありますか?

林  あります。チャットモンチーの最後のフェス(『「チャットモンチーの徳島こなそんそんフェス2018 ~みな、おいでなしてよ!~」』)に出させてもらった時ですね。

― 憧れのバンドですもんね。

林  はい。チャットモンチーのラストワンマンが日本武道館であって、それも観に行かせてもらいました。Hump Backってメンバーが入れ替わり立ち代わりしてきたので、続けている人が一番カッコいい、続けたもの勝ちだと思っていたんですけど、ふと考えた時に、じゃあいつまで自分はそう公言してどこまで続けたらいいんだろうっていう思いが心のどこかにあったんです。その頃にチャットモンチーのラストワンマンを観て、“終わりがあるってこんなにキレイなことなんや”って思えたんです。カッコいいとかすごいとかイケてるじゃなくて、美しかったんですよ、そのワンマンのすべてが。

― 深いですね。

林  チャットモンチーからはバンドの楽しさ、ギターを弾いたり歌うことの楽しさ、いろんなことを教えてもらったけど、最後の最後に“バンドってこんなに美しいんや”ってことを教えてもらって、それが自分の中ですごく大きかったです。そのチャットモンチーのフェスでステージに立たせてもらった時に、私も一ファンだったので、オーディエンスの皆が言いたいことが手に取るようにわかったし、私と同じ気持ちなんだろうなってわかったんです。上手く言葉にできないんですけど、あの日を境に、バンドに対する想いが大きく変わりましたね。

― では逆に、バンドをしていてツラかったことを挙げるとしたら?

林  本当にないんです。楽しいことだらけじゃないけど、悔しいこととか悲しいことも、全部自分の好きの中に納まっているから。

― バンドってすごいですよね。若い人にもそういうバンド人生を歩んでほしいと思うのですが、若い世代に何かアドバイスはありますか?

林  禁止されようが止められようが、やりたい衝動が一番ロックだと思っているから。残る人の絶対数はすごく少ないと思うので、心を育てるところから始めないといけないんじゃないかなと思います。そのためには、本当にカッコいいライヴを観に行ってほしいし、本物のバンドを観に行ってほしいですね。

 


AMERICAN PERFORMER STRATOCASTER® HSS

TURNING POINT OF PERFORMER

カリフォルニア州のコロナ工場で製造されるAmerican Performer Stratocaster HSSは、USA製フェンダーならではのオーセンティックなトーンとフィーリングを提供し、DoubleTap™ハムバッカーを搭載するなど、パフォーマンスにインスピレーションを与えるモダンスペックを随所にフィーチャーしています。

 

PROFILE


Hump Back
2009年に高校の軽音楽部より結成された大阪出身の3ピースガールズロックバンド。メンバーは林萌々子(Vo,Gt)、ぴか(Ba,Cho)、美咲(Dr,Cho)。2018年12月5日に2nd Single『涙のゆくえ』をリリース。2019年2月8日から『髪はしばらく切らないツアー』を敢行中。ツアーファイナルシリーズでは、名古屋DIAMOND HALL、日比谷野外大音楽堂、なんばHatchと自身最大キャパに挑戦する。
› Website:http://www.humpbackofficial.com