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Why We Play vol.8:トモ藤田 インタビュー【後編】

ジョン・メイヤーの師匠であり、25年もバークリー音楽大学でギターを教えながら、世界的なギタリストとして活躍するトモ藤田。“世界が認めた”トモ藤田のギター哲学。その後編をお届けします。

Why We Play
その人にしかできないことを目指したほうがいい
 

―  バークリー音楽大学への入学はトモさんにとって大きな転機だったと思いますが、他にギタリストとしての転機を挙げるなら?

トモ藤田(以下:トモ)   91年にジョー・パスにレッスンを受けたことで、正直人生が変わりましたね。ジョーは一般的なジャズの理論や考えとはちょっと違うんです。かなりシンプルで、シンプルな上に深かったですね。

―  ジョーにレッスンを受けて一番印象に残っていることは?

トモ   彼に会って一番良かったのは、“チョイスを持ちなさい”と言われたことです。例えばEのブルースだったら普通のギタリストはみな同じところで弾くんです。でもジョーのアイデアは、Eでも低いところで弾くし、真ん中でも弾くし、同じ音を違うところで弾く、そういうチョイスがあったほうがいいよっていうことなんです。それが僕の中ですごく重要で、僕はいつもシンプルなことを狙うんですけど、そのシンプルなことから2〜3個発展させていくチョイスをいつも持っているんです。で、その時に知識がありすぎると多分上手くいかないんです。要するに、お金持ちの人ってあれもこれも買えるから迷いすぎて上手くいかない。反対に少ないほうがチョイスができるんですよね。

―  なるほど。シンプルでいることはチョイスのための大事な条件だと。

トモ   そうだと思います。シンプルな中に深さがあるんです。あんまり多彩にしちゃうとダメなんです。だから僕自身ギタリストとして、“何でも屋”にはならないほうがいいなと思っています。あとアメリカに行く前に、空手の先生に言われて今でも大事にしているのが、“藤田よ、ナンバー1にならないほうがいい。オンリー1になったほうがいい”という言葉です。ギタリストとして技を競うよりも、その人にしかできないことを目指したほうがいいと思っています。例えばB.B.キングだと5秒くらい聴いたらすぐに誰かわかるでしょ?僕もそれを狙ったんです。そして最近、プロの仲間にも“トモの音はすぐにわかる”って言われるんです。それを言われたら嬉しいですし、オンリー1になれて良かったと思います。

―  トモさんのすごいところは、そうした表現者であると同時にバークリー音楽大学でギターを教えている点です。その両立は難しいと思うのですが。

トモ   難しいですね。教えるというのは中途半端にできないんです。教育するってかなり気合いが入っていないとできないものなんです。僕は幸い人を助けるのが好きなのと、人に喜んでもらうことが好きなので教え続けてこられました。実際、バークリー音楽大学で93年から25年間教えているんですけど、それは僕にとっての生き甲斐でもあります。


人間としてちゃんとしていないと、いい音も出ない
 

―  今までにジョン・メイヤーをはじめとした錚々たる人に教えてきたと思いますが、ギタリストに向いている資質ってあると思いますか?

トモ   それはないと思います。僕は本人のやり方次第だと思っています。例えばジョン・メイヤーの場合はスティーヴィー・レイ・ヴォーンが好きで、しかも僕みたいにファンキーな音も弾きたいということだったので、ピッキング中心に基礎的なところだけを直してあげたんです。スタイル的なところはいじらなかったんです。だから彼は今も伸びていると思うんですね。そう言えば先日、ジョンに言われたんです。“トモはいろんな人の人生を変えた”って。ジョン以外にもエリック・クラズノなど僕の生徒が一線で何人も活躍しています。最近ですと、ビヨンセなどのバックで弾いている女性ギタリストも僕の生徒です。最近頑張っているのが女性ギタリストを育てることで、もうすぐ僕が教えたすごい女性ギタリストが何人か出てきますよ。

―  楽しみです。日本でも女性ギタリストが増えていますが、トモ先生から何かアドバイスがあるとしたら?

トモ   女性男性関係なく、細かいことよりも基礎を大事にしてほしいですね。そのためには個人レッスンを受けてほしいです、たとえ1回でもいいので。個人レッスンを受けておくと、何年か先の伸び方が変わるんです。今の人は、インスタグラムやYouTubeで動画を見て“それで大丈夫”と思っちゃうんです。でも人は人と会わないとダメだし、ライヴを観にいかないとダメだと思います。それはとても大事です。

―  では、これからギターを始める人に何かアドバイスをするとしたら?

トモ   一言で言うのは難しいですが、ギターの素晴らしいところは自分の好きなことを正しく努力したら、それだけ返ってくるところだと思います。逆に言えば、ただがむしゃらに時間をかけて練習しても上手くならない楽器なんです。もちろん指は動くけれども、それだけでは自分の出したい音は表現できないです。なので、シンプルなことを丁寧に弾いたほうがいいと思います。情報量は少なくていいんです。むしろ少ない情報量の中で、その情報を活かして辛抱強く弾いてみてください。そして、可能なら一度でも誰かにちゃんと習ったほうがいいと思います

―  バークリー音楽大学の先生でもあるトモさんが言うと説得力が違います。では、ギタリストとしてトモさんが一番大事にしていることは?

トモ   難しい質問やね(笑)。演奏に対して正直なことでしょうね。正直というか、自分が感じたことをそのままなるべく伝えること。ただ覚えていることを演るだけじゃなくて、自分の持っているものを自然に出す。あとは人に優しいこと。自分にも優しいこと。正直であること。人間としてちゃんとしていないと、いい音も出ないと思うんです。それは大事だと思いますね。上手くなるにはただ練習するだけではなくて、人としてちゃんとしていることが大事ですね。

―  素敵なギタービジョンですね。

トモ   ギターを教えている最終目標もそこなんですよ。基礎的なことをやってもらって、ギターをもっと楽しんでもらう。楽しいからもっと演ったら、人間性ももっと良くなると思うんです。ギターを練習すること、弾くことで、辛抱強くなって優しくなるので。それが他の人にもいい影響を与えるわけです。つまり、僕はギターを通していい人になってほしいわけです。それが僕がギターを教える一番の目標ですね。みんながギターを弾けばみんな優しくなるでしょ?

› 前編はこちら

 
Tomo

トモ藤田が所有するフェンダーコレクション

'65 Stratcaster
65年#9月製。トモ藤田と同じ生年、生まれ月で運命的なものを感じさせる1本。フレット以外はすべてオリジナルパーツだという。

'57 Musicmaster
56年に誕生したMusicmasterは3/4スケールを採用。1基のピックアップ、アノダイズドピックガードが特徴的。この他、彼はDuo Sonicも愛用している。


トモ藤田
世界で活躍する日本人ギタリスト、ギターインストラクター。米バークリー音楽大学ギター科助教授。バークリーでの授業は、毎年受講希望者が殺到し、オープン数時間で満員になるほどの人気ぶりである。教え子には、世界的ミュージシャンであるジョン・メイヤー、エリック・クラズノなど多数。日本人向けに個人レッスン、通信レッスンも行っており、そのグルーヴにこだわる独自のレッスンは、世界中から高い評価を受けている。ブルースをルーツとしたグルーヴ溢れる即興演奏を得意とし、各地でライヴを行うなど、プレイヤーとしても世界で活躍中。
› http://www.tomofujita.com

RELEASE INFOMATION


■DVD

トモ藤田 Guitar World USA & JAPAN
〜トライアドの先へ Lecture & Documentary〜
¥3,500+税
アルファノート
5月末発売

■BOOK

トモ藤田 Guitar World
~トライアドの先へGuitar talks ~
¥1,500+税
アルファノート
5月末発売

【SEMINAR INFORMATION】

5月12日(土)島村楽器・新所沢パルコ店
TEL:04-2998-8255 担当:山岡、橋爪

5月13日(日)島村楽器・松本パルコ店
TEL:0263-38-2260 担当:林、吉川

5月19日(土)島村楽器・吉祥寺パルコ店
TEL:0422-38-2260 担当:有馬、堀

【LIVE INFORMATION】

「Tomo Fujita Solo Guitar Show 2018!」
5月17日(木)築地・汐留 BLUE MOOD
5月18日(金)築地・汐留 BLUE MOOD
› http://blue-mood.jp

「Tomo Fujita×Kelly SIMONZ Guitar Academy 2018 with The EXThunders Yosuke & Hayata ~世界屈指の競演を見逃すな!~」
5月24日(木)京都・都雅都雅
5月25日(金)大阪・PANHEAD GROOVE

「飛騨高山ジャズフェスティバル2018」
5⽉26⽇(⼟)⾶騨の⾥
› https://hidatakayama-jazz.com/
› https://hidatakayama-jazz.com/artists/tomofujita/
› [email protected](飛騨高山ジャズフェスティバル実行委員会)

【LESSON INFORMATION】

東京での個人レッスンを開催。日程は5月20日(日)21日(月)22日(火)の3日間。詳しくはメールにてお問い合わせください。
› http://www.tomofujita.com