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尾崎裕哉「LET FREEDOM RING TOUR 2017」レポート

2017年3月11日(土)、EX THEATER ROPPONGIにて行われた全国ツアー「LET FREEDOM RING TOUR 2017」の模様をレポート。

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シンガーソングライター、尾崎裕哉の全国ツアー「LET FREEDOM RING TOUR 2017」の東京公演が3月11日(土)、EX THEATER ROPPONGIにて行われた。このツアーは、彼にとって初のフィジカルCD作品となる、1st EP『LET FREEDOM RING』が3月22日にリリースされることを記念し、全国5会場で開催されているもの。昨年は、ストリングス・セクションを従えた大編成でのコンサートだったが、今回のツアーは尾崎を含む、シンプルな5人編成でのバンドスタイルとなった。

客電が落ち、ストリートの雑踏やクラクションなどのSEが流れる中、メンバーが登場する。この日は『LET FREEDOM RING』のレコーディングにも参加した、origami PRODUCTIONSの関口シンゴ(ギター)をリーダーに、スナパンこと砂山淳一(ベース)、杉山賢一郎(ドラムス)、小林岳五郎(キーボード)というメンツ。そして最後に、「LET FREEDOM RING」の文字を記した黒いブルゾン姿の尾崎が現れ、ステージ中央に置かれた鐘を木槌で力一杯打ち鳴らすという、ドラマティックな演出でスタートした。

まずはオリジナル曲「Road」を披露。Jazzmasterを抱え、歯切れ良くカッティングしながら歌い始めると、オーディエンスから大きな歓声が湧き上がる。実際の歌声を生で初めて聴いたのだが、やはり26歳の若さで亡くなった彼の父、尾崎豊を思い起こさずにはいられなかった。ハスキーかつ伸びやかなその声は、あまりにもよく似ている。

東京、元気かい? 『LET FREEDOM RING TOUR』、東京公演始まるぜ!」

そう客席に呼びかけると、続く「愛か恋なんてどうでもいいや」ではギターを持たず、ハンドマイクでステージ狭しと動き回る。細い体をくねらせながら、ラップに近いメロディを繰り出す姿はすでにカリスマ性すら帯びていた。開演前のBGMではKOHHやNelly、ソランジュなどの楽曲が流れていたし、『LET FREEDOM RING』収録曲「サムデイ・スマイル」では、共同作詞にラッパーのSALUを迎えている。尾崎の音楽性には、ヒップホップやファンクなどブラックミュージックからの影響が色濃く反映されており、そこが父親の音楽性とは大きく違う「オリジナリティ」と言えるだろう。エンディングでフェンダーJIMI HENDRIX STRATOCASTERに持ち替え、ソロをプレイ。Jazzmasterの乾いたブルージーなサウンドに比べ、こちらはジャキジャキとしたソリッドなサウンドが鼓膜を刺激する。

続く「つかめるまで」ではフェンダーCustom Shop Monterey Stratocasterを用いて、さらに倍音を多く含んだノイジーかつアヴァンギャルドなインプロヴィゼーションを展開、オーディエンスを魅了していた。この曲のファルセットは非常に力強く、カーティス・メイフィールドやプリンスをも想起させるもの。そして、「音楽が終わる頃」では、そんな尾崎の歌声を最大限に引き立てる、シンプルだがツボを抑えたバンド・アレンジも秀逸で、この曲では途中でオリジナルラヴの名曲「接吻」を差し込むなど、遊び心も忘れない。

また、月明かりが夜の海を照らす、美しい映像をバックスクリーンに映しながら「Moonlight」を演奏した後、尾崎豊の「Forget-me-not」をカヴァーすると、サビでは自然発生的にシンガロングが沸き起こった。

中盤はアコギの弾き語り。トーキングブルース調のメロディを、朗々と歌う姿がボブ・ディランを思わせる「流れる風のように」、尾崎豊の名曲「I LOVE YOU」の2曲を披露した。

「次は、みんなで歌うコーナーになっています! 僕が歌ったあと、みんなも同じように歌ってください」

再びバンド編成となり、オーディエンスにそう呼びかける。何度かリハーサルを行ったあと、掛け合いのメロディを全員で合唱した「君と見た通り雨」。リハとは違う複雑なフェイクを次々と付け足し、それについていこうと一生懸命歌うファンの様子を、楽しそうに眺めながら難易度を上げていく尾崎。気づけば会場は、完全に一つになっていた。

父親の曲の中で最も好きだという「僕が僕であるために」を、レゲエやファンクのエッセンスを加えたアレンジで演奏し、ライブは終盤へ。6年前の震災の時、ボランティア活動のため被災地へ行き、そこで出会った少女との交流がキッカケで生まれた「サムデイ・スマイル」で本編は終了。この曲も、途中でボブ・マーリーの名曲「ノー・ウーマン・ノー・クライ」につなげ、ルーツミュージックへの深い憧憬を示した。

アンコールは、両親に向けて書いたという「始まりの街」を、再びJazzmasterを抱えて熱唱。エンディングでは突如ギターを置き、マイクも持たずに花道を渡ってフロアの中央へ歩いていく尾崎。騒然とするオーディエンスをゆっくりと見渡しながら、語りかけるようにアカペラで歌い出す。再びシンガロングで会場が一つになり、この日の公演はすべて終了した。

荒削りだが、すでにカリスマ性を身につけたパフォーマンスと、MCなどで見せる初々しいキャラクター、そのギャップもまた魅力となってファンを惹きつける。秋には大阪と東京で新たなワンマンライブを行う、そんな尾崎裕哉のさらなる成長を見るのが、今から楽しみでならない。

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› Why We Play:尾崎裕哉 インタビュー

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