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黒猫チェルシー「第1回輝く!10周年ゴールデンライヴ~栄光のワンマン~」レポート

2018年3月17日(土)渋谷CLUB QUATTROにて行われた「第1回輝く!10周年ゴールデンライヴ~栄光のワンマン~」の模様をレポート。

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(Photo by 柴田恵理)

黒猫チェルシーが3月、バンド結成10周年記念ライヴ「第1回輝く! 10周年ゴールデンライブ」を地元・神戸と東京の2都市で開催した。

神戸公演は盟友OKAMOTO'Sとのツーマン、結成記念日となる3月17日の東京公演はOKAMOTO'Sからオカモトショウ(Vo)をゲストに迎えてのワンマンライヴとなった。

2日目となる東京公演。客電が落ちると、ステージ向かって右側の壁に貼られたスクリーンに、この10年を振り返ったバンドのインタビューや、懐かしい写真がコラージュのように映し出された。懐かしい気持ちに浸っていると、マーチのリズムが鳴り響く中、アコギを抱えた渡辺大知(Vo)を筆頭に、メンバー4人がステージに登場定位置に着くと、2011年のアルバム「NUDE +」より「バンドマン」で幕を切った。

“10周年ライヴにようこそー!”と渡辺が叫ぶと、フロアからは黄色い歓声が響きわたる。若者から年配まで、男女問わず幅広いファンが埋め尽くしているのは、さすがキャリア10年目だ。続くロックンロールチューン「アナグラ」では、澤竜次(Gt)が新たに導入したMade In Japa Hybrid 60s Stratocasterを機関銃のように構えて高速カッティングを繰り出し、ステージ床のモニターに片足を乗せてファンを煽りまくる。タイトル通り、岡本啓佑(Dr)のファンキーなリズムが映える「ファンキーガール」では、うねるような宮田岳のベースと、軽やかに刻まれる澤のギターが組んず解れつのバトルを繰り広げ、そこに渡辺のブルースハープが負けじと応酬すると、カオスのようなグルーヴが会場を飲み込んだ。

顔をクシャクシャにした渡辺が鳴き声で歌うストレートなギターロック「涙のふたり」、アコギの弾き語りから一気にバンドサウンドへと雪崩れ込むドラマティックな「抱きしめさせて」。10周年のアニバーサリーライヴとあって、新旧さまざまな楽曲がバランス良く並ぶセットリストだ。澤のStratocasterは、ヘヴィな重低音リフからハイポジションでのアルペジオまで、高密度のバンドサウンドの中にあってもまったく埋もれることなく、グッと前にせり出している。ロングシャツをなびかせ、長髪を振り乱しながらギターをかきむしるその姿は、まるで若き日のキース・リチャーズのようだ。一方、中期のザ・フーを思わせる、プログレッシヴな展開の名曲「夜更けのトリップ」では、仁王立ちのまま不敵の面構えでシャウトする渡辺が、ジョニー・ロットン(セックス・ピストルズ)やリアム・ギャラガー(オアシス)にも通じるカリスマ性を漂わせていた。

ディレイを効かせたギターがサイケデリックな「スター・トレイン」の後、“新曲やります!”と言って演奏した「Clap(仮)」は、ゼロ年代初期のプライマル・スクリームも“かくや”と言わんばかりの超高速ロックンロール。そこに、昭和歌謡的な哀愁も盛り込んでくるのが黒猫チェルシーたる所以だ。

渡辺以外のメンバー3人が、それぞれ思い入れのある楽曲をセレクトし、セレクトした本人が歌うという企画メドレー「モーター〜YOUNG BLUE〜ロックバラード」のあと、ライヴは早くも後半戦へ。不動の相棒、日本製の白いStratocasterに持ち替えた澤は、まるでうなり声のようなアームプレイを聴かせたかと思えば、鋭いディストーションで宙をザクザクと切り裂いていく。倍音がキラキラと舞うようなゴージャスなサウンドは、ワイルドな中にも色気を感じさせる渡辺のヴォーカルや、しなやかかつタイトなリズム隊を包み込み、楽曲に鮮やかな色彩を与えているようだ。

ギターのチョーキングが疾走感を煽る「青のララバイ」、ロカビリー風のアレンジがスリリングな「オンボロな紙のはさみ」、澤と渡辺の掛け合いボーカルが印象的な「黒い奴ら」と畳み掛け、「Dark Night, Spot Light」ではついにオカモトショウがゲストヴォーカルとして登場。フロアはさらにヒートアップした。“今日は/10周年の/お祝い/黒猫チェルシー!”と、ショウがコール&レスポンスをすると、あっという間に会場がひとつになっていく。さらに、渡辺がミュージックビデオの監督を務め、黒猫ファンの間でも人気のOKAMOTO'Sの楽曲「共犯者」をカヴァー。“今日、やっとこの曲を一緒に演奏できる!”と嬉しそうに渡辺が言っていたが、終始ピースフルな空気に包まれたひと時となった。

ライヴはいよいよラストスパート。渡辺のマイクスタンドプレイが華麗な「廃人のロックンロール」、宮田のオクターヴベースが腰を揺らす「ベリーゲリーギャング」、キラキラなポップチューン「恋はPEACH PUNK」、そして渡辺が出演し話題となった映画「勝手にふるえてろ」の主題歌「ベイビーユー」を全員でシンガロングし本編は終了。アンコールでは、澤が作ったという出来立てホヤホヤの新曲を披露した後、黒猫チェルシーにとって大切な1曲「東京」で締めくくった。

“この曲は、バンドが全然うまくいかなくて、「こんなに楽しいのに何でやろう?」と悩んでいた一番辛い時期に書いた曲です。俺の歌であり、みんなの歌になってくれれば嬉しい”

そう一言添えてから演奏された「東京」。激動する音楽シーンの中、ブレずに自分たちの音楽を貫き通してきた4人が、ファンと共にその10年間を振り返る、非常に親密な一夜となった。


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(Photo by 柴田恵理)


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