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ERIC CLAPTON LIVE at BUDOKAN 2019レポート

世界的ギタリストであるエリック・クラプトンが、約3年ぶりとなる来日公演を5日間に渡り日本武道館にて開催。その最終日となる4月20日(土)公演の模様をレポート。

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あらためて説明する必要もない世界的なトップギタリストであり、数々の名曲を生み出してきたアーティスト、エリック・クラプトン。4月13日から20日まで「LIVE at BUDOKAN 2019」と題され、日本武道館で5回の来日公演が行われた。

今回の公演を含む全96回の日本武道館公演回数は、海外アーティストの歴代1位。それだけ彼にとって日本武道館は特別な場所であり、74年(昭和49年)の初来日から45年の歳月を経て、ついに平成最後の日本武道館公演となった。

通算22回目、約3年ぶりとなる今回の公演。初日の4月13日には来日中のジョン・メイヤーがアンコールにスペシャルゲストで登場し「Cocaine」をセッションしたが、ファイナルの4月20日は通常のセットリストで臨み、そのキャリアと魅力を最大に生かした内容となっていた。

大歓声に迎えられ、「Pretending」で幕を開けた今回のライヴ。サポートメンバーは、ドイル・ブラムホールⅡ(Gt,Vo)、クリス・ステイトン(Kb)、ポール・キャラック(Kb,Vo)、ネイザン・イースト(Ba)、今回から新加入のソニー・エモリー(Dr)、シャロン・ホワイト(Back Vo)、ケイティ・キッスーン(Back Vo)というベテラン勢7名だ。

引き締まったサウンドに乗せ、Custom Shop Eric Clapton Stratocaster Almond Greenで鋭いフレーズを挟みながら、伸びやかなヴォーカルを聴かせていくクラプトン。すぐさま、ブルースナンバー「Key to the Highway」へと移る。長年、ライヴで取り上げている曲ということもあり、バンドの一体感とプレイの滑らかさは絶品だ。ピッキングの細かいニュアンスまで伝わるストラトのクリーントーンも鮮やかに響いてくる。

そして、エネルギッシュな歌声が印象的な「(I Wanna) Make Love to You」からブルースの定番ナンバー「I'm Your Hoochie Coochie Man」では、クランチ気味のサウンドが粘りのあるフレーズをさらに濃いものにしていく。近年愛用しているアンプ、’57 Bandmasterとの相性は抜群だ。

短いソロのあとに始まったのは、ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズのカヴァーであり、これもライヴで馴染んでいる「I Shot the Sheriff」だ。抜けのいいハーフトーンを生かしたカッティングでレゲエのビートを奏でる。タイトなリズムセクションによるグルーヴと分厚いコーラスが生む高揚感、そこにきらめくようなソロが乗る瞬間の鳥肌が立つようなインパクト。さらに、ドイルとのソロ回しもあり、前半で早くもピークが訪れたかのような見応えある場面を作り出していた。

ライヴ中盤にはアコースティックコーナーが設けられ、「Driftin' Blues」「Nobody Knows You When You're Down and Out」といったスロウブルースが続く。指弾き、ピック弾きを交え、楽曲の繊細な表情を豊かに表現していくクラプトン。シンプルで抑制の効いたバックのサウンドが、彼の歌声をさらに引き立てていた。

そして、名曲「Tears in Heaven」が登場。優しく柔らかなメロディを歌い始めると、大きな拍手に包まれ、会場全体が歌に聴き入っていた。続けて、やはり短いソロからクラプトンの代名詞といえる「Layla」につないでいく。初日の13日には珍しくエレクトリックヴァージョンを披露して驚かされたが、この日は最近のアコースティックヴァージョンで演奏。ゆったりとしたテンポでしっとりと囁くように歌う姿には、静けさの中にも風格が漂っていた。

重みのあるヴォーカルを聴かせる「Running on Faith」でアコースティックコーナーは終了。再びストラトに持ち替えて、クリーム時代の名曲「Badge」からライヴは後半へと突入する。骨太なカッティングを主体に、輪郭のくっきりしたクリーントーンでパワフルなサウンドを聴かせていく。特に、アルペジオのパートが繰り返されるたびに熱量が増していく後半部分は強烈な後味を残した。

また、「Wonderful Tonight」は音と音の隙間を生かしたようなプレイもあって、透明感を感じさせるサウンドで魅了。リラックスした歌い方に加え、ストラトならではの多彩なトーンを駆使することで、楽曲の持ち味を何倍にもスケールアップさせていた。

そして、「Crossroads」はロバート・ジョンソンのカヴァーであるばかりでなく、クリーム時代から演奏し続けているブルース。ガッチリとしたリズム、シャウト気味の強い歌、やはりここでもクラプトンとボイルのソロ回しがあり、曲が進むにつれてヒートアップしていく。

その熱をしっかりと受け止めたのが「Little Queen of Spades」だ。こちらもロバート・ジョンソンのブルースで、クリスのピアノソロ、ポールのオルガンソロと続いたあと、ドイル、クラプトンの順番でギターソロが回ると、観客から歓声が上がる。エモーショナルなフレーズの応酬で、熱を帯びたクラプトンのストラトが極上の音を響かせたのが体感できた。

本編最後の「Cocaine」はJ・J・ケイルのカヴァーだが、もはやクラプトンの曲といってもいいほどに欠かせない存在となっているナンバー。サビを観客が大合唱する、お馴染みの光景とともに至福のライヴは最高潮を迎えて終了した。

盛大なアンコールに応え、ステージに現れたクラプトンとメンバー。ラストはジョー・コッカーのカバー「High Time We Went」で、どこまでも熱い歌と躍動感あふれる演奏で締めくくった。

来日直前の3月に74歳になったばかりとは思えない、それどころかさらに輝きを増していたロックレジェンド。限りないリスペクトを込めたブルースと、不滅の代表曲の連続で、音楽の奥深さとギターの永遠の魅力を感じさせた武道館公演だった。


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(Photo by Masanori Doi)


セットリスト
01.Pretending
02.Key to the Highway
03. (I Wanna) Make Love to You
04.I'm Your Hoochie Coochie Man
05.I Shot the Sheriff
06.Driftin' Blues
07.Nobody Knows You When You're Down and Out
08.Tears in Heaven
09.Layla
10.Running on Faith
11.Badge
12.Wonderful Tonight
13. Crossroads
14.Little Queen of Spades
15.Cocaine

ENCORE
01.High Time We Went