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THE ROCK FREAKS VOL.10:HARUNA SCANDAL

ROCK FREAKS VOL.10

アーティストとフェンダーによるケミストリーを写真で切り取るエキシビジョンシリーズ「THE ROCK FREAKS」。第10回目は、ガールズバンドシーンの旗手であり、デビュー11年目の突入とともに自身のレーベル“her”を立ち上げ、さらなる飛躍を遂げようとしているSCANDALのHARUNA(Vo,Gt)が登場。


女性としての深みも経験することで
音楽がどう変わっていくのか楽しみなんです

メジャーデビュー11年目に突入したSACANDAL。3月27日に発売された新曲「マスターピース」は自身のレーベル“her”からのリリースで、バンドが繰り出すサウンドとグルーヴは以前にも増して太くなり、デビューしてからの10年がポジティヴな時間だったことを物語っている。デビューからの10年を、ヴォーカル&ギターのHANRUNAはこう振り返る。

「自分たちからしても、そして外から見ても変化の10年だったと思います。デビューした時、私以外は全員10代で衣装も制服でした。曲も作家さんが書いていましたし。でも、徐々に自分たちで作詞・作曲を手掛けるようになり、自分たちのやりことをやれるようになりバンドらしくなっていきました」

ご存知の方も多いと思うが、元々はメンバーが通っていた大阪のヴォーカル&ダンススクールに現在の所属事務所から“ガールズバンドを作りたい”という声が掛かり、スクールの中でもっともやる気のあるHARUNA、MAMI、TOMOMI、RINAの4人がメンバーとなりSCANDALが結成された。楽器など触ったこともなかったHARUNAがギターを選んだ理由も、「ギターくらいしか楽器を知らなかった」というものだった。そんな経緯で始まったバンドは当初、正直に言えばアイドルバンドにしか見えなかった。

「最初はそう見えていたのは仕方ないですよね。本当に何もわからなかったし、結成の経緯も他のバンドとは全然違かったし。しかも、当時は10年やるなんて思ってもいなかったですから。先のことなんて考える余裕もなかったんです」

そして、10年を過ぎて自身のレーベル“her”を立ち上げた。

「10周年を終えて、SCANDALが第2章に入っていく中で、さらにワクワクすることをやりたいと思っていたんです。そして、10周年で作ったアルバム『HONEY』で10年積み重ねてきたことをカタチにできました。『HONEY』の達成感で、バンドとしての自信は確固たるものになったんですけど、その後に新しい曲を書いても『HONEY』の楽曲を超えることができなくて、どうしようかとメンバーと話していたんです。それで、音楽を作る環境をガラッと変えようということになり、自分たちのレーベルを立ち上げることにしました」

レーベルを作ったことで何が変わったのか?と聞くと「レコーディングそのものはそれほど変わっていないですけど、精神的な部分が変わりましたね。すごく自由で楽しいです」とHARUNA。ただSCANDALの場合、その変化はバンド内にとどまらず、高校生ガールズバンドなど若い世代にも大きな影響を与える。

今はSNSで誰でも音楽を発信できる時代だ。誰にでもチャンスはあるが、それだけに頭ひとつ抜け出すのは難しいし、音楽業界をサヴァイヴしていくのも難しい。そこに苦しむ若い世代への見本や答えの提示に、自身のレーベル“her”の立ち上げがなりうる可能性もある。それだけSCANDALというバンドはこの10年でガールズバンドシーンを切り開き、大きな影響を与えてきた。

「ガールズバンドというジャンルを開拓してきたという自負はあるんです。でも、影響を与えようと思っているわけではなく、私たちがワクワクしながらやっているから影響を与えられるんだと思うんです。人って、他の人がワクワクしているのを見ると、刺激を受けて“私も頑張ろう”って思うので。なので、まずは私たちがゆったりと自由に楽しみながら、”her”で音楽を作ることが大事だと思っています」

ROCK FREAKS VOL.10

Photo by Maciej Kucia (AVGVST)

その言葉にHARUNAのバンドマンとしての成長をくっきりと読み取ることができる。そしてバンドだけではなく、HARUNAはヴォーカリスト、ギタリストとしてもこの10年で大きな成長を遂げた。

「ヴォーカルもギターも柔軟になりましたね。特に歌に関しては、人のオーダーを受け入れるようになりました。以前は“こういう風に歌ってみて”と言われても、“私の声や歌い方ってこうだからできないです”っていう感じだった。でも、メンバーもいろんなタイプの曲を書いてきてくれるので、それにも応えたくて、いろんな歌い方をするようになったんです。今はいろんなタイプの歌を、いろんな歌い方で歌ってみたいと思っています」

ギターに関してはどうだろうか?

「ちょっと前にMAMIがヴォーカルを取る曲があって、私がリードギターを弾くことになったんです。リズムギターを担当してきた私が、今まで弾いてこなかったようなフレーズがあって、ライヴで演奏した時に本当に気持ち良くて“チョーキング、気持ちいいー!”みたいな(笑)。それがヴォーカリストでは味わえない快感だったんです。正直、ギターに関して最初は外見的な魅力しか感じてなくて、突き詰めてやろうとは思っていませんでした。でも今はギターに対して興味を持ち、ギターも突き詰めたいなって思っています。今かよ!って突っ込まれそうですが(笑)」とHARUNAは大きく笑ってみせた。

今、HARUNAは30歳。しっかりとした口調で、こんなことを決意として語ってくれた。

「10周年で30歳。とてもいい区切りだし、これからはミュージシャンとして人として女性として、どんどん深みを増していきたいと思っているんです。結婚や出産をしたら、確実に歌にもギタープレイにも深みが出ると思うんです。そういう女性としての深みも経験することで、音楽がどう変わっていくのかも楽しみなんですよね」

デビュー10周年、30歳、herの立ち上げ。HARUNAの未来への視界は良好と言えそうだ。むしろすでに10年後のSCANDALの姿を思い描いているのかもしれない。

「具体的な絵は描いていません。それよりも、SCANDALをずっと続けることだと思っています。今でもインタビューで、“メンバーと喧嘩はしないの?”とか“メンバーと本当は不仲なんでしょ?”ってよく聞かれるんです。その質問の答えのすべてが、10年続けてきたという事実です。ガールズバンドを聴かない人でも、10年もやっているバンドって知れば聴いてみようかなぁと思ってくれるかもしれない。だから次の10年、20年、とにかく楽しみながら自由に続けていくことです。続けること、それがすべてです」

変化を恐れず前進を続けるSCANDAL。そのフロントマンであるHARUNAが、いつもフェンダーのギターを抱えてくれていることがとても誇らしく思えた。


SCANDAL
2006年、大阪・京橋で結成。メンバーは、HARUNA(Vo,Gt)、MAMI(Gt,Vo)、TOMOMI(Ba,Vo)、RINA(Dr,Vo)。2008年、シングル「DOLL」でメジャーデビュー。翌年には「少女S」でレコード大賞新人賞を受賞。国内外問わず多くのフォロワーを持ち、世界中でコンサートを行っている。近年ではファッションアイコンとしても注目を集め、自身のアパレルブランド“Feedback!”をプロデュース。2019年にはプライベートレーベル“her”を設立するなど、名実ともに日本を代表するガールズバンド。
› Website: https://www.scandal-4.com