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THE ROCK FREAKS VOL.11:北村匠海 DISH//

ROCK FREAKS VOL.10

アーティストとフェンダーによるケミストリーを写真で切り取るエキシビジョンシリーズ「THE ROCK FREAKS」。第11回目は、役者として、そしてバンドDISH//のヴォーカル&ギターとして活躍する北村匠海が登場。


自己表現を助けてくれる
一番の存在がギターなんです

ダンスロックバンド、DISH//のヴォーカル&ギターとして活躍する北村匠海。役者としても子役からキャリアをスタートしており、テレビドラマ、CM、映画で北村のことを知った人も多いと思う。

そんな北村を、会う前は芸能人だと勝手に思い込んでいた。ところが取材で対面した北村は、圧倒的なオーラがあるが、素朴でとても誠実な印象だ。インタビュー開始前の雑談で聞いたら、この日着ている洋服も大好きな古着だという。インタビューが始まっても変わらない感じで話してくれる。最初の質問はギターを始めたきっかけ。

「ギターを始めたきっかけは、事務所の方から“君たちは今日からバンドです”ってギターを渡されたのがきっかけです。だから、正直に言うと、ギターに興味が湧くまでに時間がかかりました。自発的に組んだバンドではないし、自分で選んだ楽器ではなかったので」

大人の事情で結成したDISH//だが、当時中学生だったメンバーは真剣に練習に打ち込んだという。最初にコピーをしたのが、MONNGOL800の「小さな恋のうた」。コピーしたというと聞こえはいいが、他の曲をコピーする余裕もなく、「小さな恋のうた」だけを何度も何度も練習した。当時は歌もギターも未熟だった分、ひたすら練習に打ち込んだ。そして、ある程度練習をしたタイミングで事務所のスタッフの前で「小さな恋のうた」を披露。だが“こんなの音楽じゃない”と酷評だけされた。それでもめげずに練習を続け、イライラしてピックでギターの弦を切ってしまうこともあったそうだ。そしてもう一度、「小さな恋のうた」を事務所のスタッフに披露。今度はたった一言“良かった!!”と言われたという。

「その時に“バンドって楽しいな”と思えたんです。今にして思えばまだまだ下手くそだったけど、“バンドってこんなエモーショナルな気分になれるんだ”って思えたんです」

同時に、ギターという楽器の虜になったという。

ROCK FREAKS VOL.10

「ギターの先生がいて、その先生に僕のギターを弾いてもらうと、当たり前ですが僕とは全然違う音がするんです。その時に“ギターって人間臭いな”と思えて。人間って、例えばあの人とならリラックスして話せるけど、あの人とだと緊張して話せなかったりする。ギターも同じだなって。どうせなら、もっといい音を出してやりたいなって思ったんです。それからどっぷりギターを好きになりました」。

バンド結成から半年でインディーズデビューを果たしたが、当初はオーディエンスの前で演奏はしていなかった。初めてオーディエンスの前で演奏したのはメジャーデビュー後。2013年、Zepp Tokyo公演でのアンコールでメジャーデビューシングル「I Can Hear」を披露した。

「演奏中、いろんなことを考えてしまって頭が真っ白になって。リハでは意気揚々と演奏できたんですけどね。本番では足もすくんでいましたし。正直、ほろ苦いライヴデビューでした」

ほろ苦い演奏デビューを経験し、再びバンドは練習を必死に続けた。事務所が用意してくれたスタジオだけではなく、メンバーでお金を出し合って音楽スタジオに入り、指先が痛くなって弾けなくなるまで練習した。「青春でしたね。学生時代のすべてをDISH//にかけていました」と北村は懐かしそうに語ってくれた。

DISH//は長い間、ドラムはサポートメンバーだったが、2017年に泉大智を正式ドラマーとして迎え入れた。そんなDISH//が、バンドとして大きく成長したタイミングについて教えてくれた。

「ドラムの大智をメンバーに迎えて音を出した瞬間に“これっしょ!!”と感じて、バンドとしてのグルーヴが出てステージがまたひとつ上がったんです。それまではまだ“バンドをやらされている”と感じるメンバーもいたのですが、全員が自発的に音楽と真剣に向き合うようになって、みんな機材や楽器を進んで買うようになりました。僕で言うと、本当に音楽に囲まれて生活しています。移動の時は音楽を聴いていますし、音楽もギターもバンドも一生手放せないものになっています」

北村が今弾いているのがフェンダーのJazzmasterだ。Jazzmasterを手に取った理由をこう語った。

「フェンダーのギターにはずっと憧れていたので、気軽に手を出してはいけないと思っていたんです。なので、ようやくフェンダーのギターが弾けるようになった感じです。Jazzmasterを選んだ理由はフォルムが美しいからです。完全にひと目惚れでした。でも、それでいいと思うんです。高校の時、学校でギターケースを背負っている奴って僕とDISH//のもう1人のギター、矢部昌暉くらいでした。でも、ギターケースを背負っているだけでカッコイイと思ったし、ヒーローになれると思えた。これからギターを始める人は、あまり難しく考えずに、あのギターがカッコいいからとか、このフレーズを弾ける自分がカッコいいとか、そういうきっかけでいいと思うんです」

バンドとしてもプレイヤーとしても成長を続ける北村だが、それぞれにどんな目標を持っているのだろうか。しっかりとした口調でこう答えてくれた。

「DISH//としては、横浜スタジアムでのワンマンライブが夢です。僕が17歳の時にDISH//は夢だった日本武道館のステージに立つ事が出来ました。みんなが自分の夢を叶えられるわけではないと思いますが、僕らは有難い事に叶えられた。なので、もっと先まで行かないといけないと思っています。野外でのライヴが好きなので、いつか横浜スタジアムでライブをしてみたいです。ギタリストとしては、カッティング系が好きなので、その武器を磨いていきたいですし、やはりプレイで注目されたいです」

役者とバンドマン。二足の草鞋を履くことは決して楽ではないはずだが、将来はどちらかに絞るのだろうか。最後に、そんな意地悪な質問をぶつけてみた。

「バンドと役者、両方があるからこその自分だと思っています。ただ、それがうまく還元し合っているのかどうかはわかりません。でも、自己表現をすることが好きなんです。そして、その自己表現を助けてくれる一番の存在がギターなんです」

そう話すと、愛用のJazzmasterをポロリと弾いた北村。Jazzmasterがとてもいい音色を奏でた。


DISH//
北村匠海(Vo,Gt)、矢部昌暉(Cho,Gt)、橘柊生(Fling Dish,RAP,DJ,Kb)、泉大智(Dr)の4人で構成された、演奏しながら歌って踊るダンスロックバンド。2011年12月に結成。2013年6月にソニー・ミュージックレコーズよりシングル「I Can Hear」でメジャーデビュー。これまでに12枚のシングルと3枚のアルバムを発表。歌やバンド演奏、ダンスに加え、トークやコントなどエンターテインメント性の溢れたライヴは大人気で、4年連続で元日に日本武道館での単独公演を開催。アニメ「ゾイドワイルド」のオープニングテーマに起用された最新シングル「Starting Over」は、オリコンウィークリーチャート2位を獲得。今年4月に発売された最新アルバム「Junkfood Junction」は、オリコンデイリーチャート1位を獲得した。4人は個々でも活動も行い、中でも北村匠海は映画「君の膵臓をたべたい」(2017年)で第41回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞するなど、映画やドラマの話題作に数多く出演している。
› Website: http://dish-web.com