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THE ROCK FREAKS VOL.12:HIROSHI FIVE NEW OLD

, ROCK FREAKS VOL.12

アーティストとフェンダーによるケミストリーを写真で切り取るエキシビジョンシリーズ「THE ROCK FREAKS」。第12回目は、若手ながら幅広い音楽性と安定した演奏力で、今春にはアジアツアーも成功させた4ピースバンドFIVE NEW OLDから、ハイトーンヴォイスで英語詞を歌いこなすヴォーカル&ギターのHIROSHIが登場。


ストラトってオーソドックスなんじゃなくてオールマイティだということです

HIROSHIはバンドのフロントマンであるばかりか、FIVE NEW OLDの楽曲制作の要でもある。インタビューの出だし、HIROSHIがギターと出会ったところから話を聞いた。

小学校の時、卒業までの間に音楽の先生が変わり、新しく来た音楽の先生がギターやドラムなど、それまで音楽室になかった楽器を教室に持ち込んだ。ちょうどその頃、HIROSHIも音楽に興味を持ち始め、音楽室にあったガットギターを手にするようになり、先生からコードを教えてもらいポロンポロンとギターを弾くようになったという。

「中学に入るとギターからは離れてしまい、音楽に関しては聴く側に徹していました」

中学時代はギターは弾かず、リンキン・パークやスリップノットなど、いわゆるミクスチャーロック系の音楽にハマり聴きまくったという。ミクスチャーを聴くようになると、必然的にヒップホップも聴くようになり、ヒップホップカルチャーに触れる中でスケートボードと出会った。スケートボードをやるようになると、今度はアメリカ西海岸のパンクも聴くようになり、当然のように当時の西海岸パンクバンドの典型とも言えるギター&ヴォーカルの存在に行き着き、再びギターを手にして歌うようになったという。

ちなみに、当時コピーしていたのが、サム41やニュー・ファウンド・グローリーといったパンク系バンドで、ギターを弾くと言ってもパワーコードを弾く程度だったそうだ。そんなHIROSHIのギター&ヴォーカルのスタイルに変化を与えたのが、フォール・アウト・ボーイ。

「大好きなフォール・アウト・ボーイのパトリック・スタンプは、それまでコピーしていたバンドのギター&ヴォーカルと違って、とても複雑なフレーズを弾きながら歌っているのがわかったんです。それで、僕も複雑なペンタトニックスケールを弾きながら歌うようになりました。それが高校の終わりくらいです」

ただ、ここまでのHIROSHIのギターヒストリーには、FIVE NEW OLDの音楽的な特徴であるブラックミュージックや80‘Sポップスの要素は出てこない。“パンク×ブラックミュージック×ポップス=FIVE NEW OLD”というのが一般的な認識で、バンドの特徴とも言えるブラックミュージックと80’Sポップスの要素はどこから出て来るのだろうか?

その答えに辿り着くために、もう少しだけHIROSHIのミュージックヒストリーを続けよう。大学に進学したHIROSHIだが、プロになるつもりはなく就職する予定だったそうだ。転機となったのが、HAYATO(Dr)のバンドとの対バン。対バン後、HAYATOから“新しいバンドを組まないか”と熱心に誘われたが、HIROSHIは返事を曖昧にしていた。だが熱心な勧誘に、ひとまず一緒にスタジオに入ってみたところ、HAYATOの出す音から真剣さが伝わってきて、一緒にバンドをやることを決めたという。

「ただ、条件を出したんです。僕の幼馴染でもあり、ギターを教えてくれた人物でもあり、ソングライティングのパートナーでもあるWATARU(Gt,Kb)も一緒なら、という条件で新しいバンドを組みました。それがFIVE NEW OLDです」

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結成当初のFIVE NEW OLDは、ライヴハウスに出演し、ラウド系、パンク系のバンドと対バンをしていた。そんな中、バイト先の先輩の影響で、HIROSHIはレッド・ホット・チリ・ペッパーズやレディオヘッドなどを聴くようになり、バンドでもそういう音楽を試したそうだ。

「でもあまりしっくりいかずで(苦笑)。他にメンバーに共通したジャンルって何だろう?って考えたら、当時はメンバーみんなマルーン5を聴いていたので、ブラックミュージックはいけるかもなぁと思ったんです。実は僕も、母親やおばあちゃんから70年代のモータウンや50年代のサッチモなどを聴かされていたので、古いソウルやジャズといったブラックミュージックの素地はあったんです。それで「 Hole」という古いブラックミュージックの要素を入れた曲を試しに書き、その曲をラウド系バンドとの対バンの時に演奏したんです。そしたら意外と反応が良くて(笑)。そこからですね、ブラックミュージックやポップスの要素まで入れるようになったのは」

そんな風にFIVE NEW OLDの音楽スタイルが確立し出した頃、HIROSHIはフェンダーのStratocasterを購入し使用し始めた。

「正直言うと、Stratocasterってオーソドックスなギターであまり魅力的だと思っていなくて。でも、いろいろと吸収していけばいくほどストラトの偉大さがわかってきたんです。このストラトを買った理由は“サーフグリーン色のギターが欲しい”という見た目の理由です。でも、使っていたら周りから“いいじゃん!”って褒められましたね。使っていてわかったのは、ストラトってオーソドックスなんじゃなくて、オールマイティだということです。どんなサウンドのどんな場面でも、その力を遺憾なく発揮してくれるんです。それは、いくつもの音楽性から交じり合っているFIVE NEW OLDの音楽には欠かせない存在です。ストラトから教わることもたくさんあって、ストラトから刺激をもらっています」

そして、FIVE NEW OLDは待望の2ndアルバム「Emulsification」を9月11日にリリースする。タイトルの意味をHIROSHIはこんな風に語ってくれた。

「“Emulsification”は“乳化”と訳しますが、交じり合わないものを混じり合わせる、そんな意味なんです。僕らの音楽はパンクからスタートして、オルタナも経由して、ブラックミュージックもポップスも入っている。まさに僕らがやってきたことは乳化だったなぁって。そういう意味で、僕らの集大成のようなアルバムで、このアルバムがあるから次に行けるなって思っています」

彩り豊かな音で、そこにHIROSHIのハイトーンヴォイスが冴えまくっている。HIROSHIはハイトーンヴォイスの他にも、海外生活経験がないのにネイティヴに近い発音の英語で歌うなど、ヴォーカリストとして注目されるケースが多い。HIROSHI自身はヴォーカリスト、ギター&ヴォーカル、どちらかに比重を置いていくのだろうか?

「自分自身、ピンヴォーカルに向いているとは思います。でも、ギターを弾くことは止めないです。むしろ、ギターを弾いている時に、ヴォーカリストとしての力を試せる感じがしています。もしギターを弾いていなければ、空いている手でお客さんを煽ることができます。でも、ギターを持ったままお客さんに音楽を届けたいんです。エンターテイメントな部分も大切にしていますが、ミュージシャンなので、音楽的な部分も大切にしたいんです」

インタビューの途中で、「バンドの出発点でもあるパンクも、バンドに新しく加わったブラックミュージックもともにカウンター(抵抗)です。僕自身、カウンターが好きだし憧れていますね」と言ったのを思い出した。

2ndアルバム「Emulsification」をリリースして、FIVE NEW OLDが目指す“次”とは、もっともっと多くの人に音楽を届けることだそう。その過程の中で、音楽的にはさらに“乳化”するかもしれない。だが、HIROSHI自身が納得しないことは絶対に音にしないだろう。“カウンター好き”とさらりと語る、HIROSHIのタフなロックスピリットもインタビューから伝わってきた。HIROSHIはオールマイティなのにタフだ。まさにStratocasterのような存在だと思った。


FIVE NEW OLD
2010年神戸にて結成。メンバーは、HIROSHI(Vo,Gt)、WATARU(Gt,Kb,Cho)、SHUN(Ba,Cho)、HAYATO(Dr,Cho)。パンクロックバンドとしてキャリアをスタートさせながらR&B、ブラックミュージック、ゴスペルなどの要素を昇華させたロックサウンドに、英語で歌われる爽やかなメロディーとコーラスワークスタイリッシュな洋楽ポップスさながらで心地よくノれると、幅広い世代からの支持を受ける。これまでに邦楽・洋楽、さらにジャンルの枠を超えた顔ぶれのアーティストとの対バンを重ね、ライブバンドとしてのキャリアを確実に積んでいる。
2017年6月21日「BY YOUR SIDE EP」でメジャーデビュー。 2017年8月、これからの活躍が期待されるアーティストをサポートするYouTube主催の企画「YouTube Music Sessions」に参加。2018年1月、メジャー1stアルバム「Too Much Is Never Enough」をリリース。全国16公演の「Too Much Is Never Enough Tour」を開催し、エキストラ公演として初の海外公演をバンコクにて行う。

2018年7月サポートベーシストだったSHUNが正式加入し、同年9月2nd EP「For A Lonely Heart」をリリース。バンドのコンセプトである『ONE MORE DRIP』をタイトルに掲げた初のワンマンツアーでは、ファイナル公演・恵比寿LIQUIDROOMもソールドアウトし、ツアーを成功させた。また、タイの大型野外音楽フェスティバル「CAT EXPO 5」「BIG MOUNTAIN MUSIC FESTIVAL9」に日本人としては唯一、両フェスにも出演を果たす。

2019年4月から初のアジアツアー「FIVE NEW OLD ASIA TOUR 2019」を開催、香港・台湾・中国・タイ・日本にて合計10公演のツアーを、9月からは全国14箇所を回る全国ツアーを開催。11月29日EX THEATER 六本木でファイナルを迎える。
› Website: https://fivenewold.com