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Why We Play vol.1:尾崎裕哉 インタビュー【後編】

音楽と人、そして楽器。さまざまな表現手段の中から、なぜギターを選んだのか?そんな素朴な疑問にフォーカスを当て、ギタリストの内面に深く迫る連載企画「Why We Play」。尾崎裕哉さんを迎えたインタビューの後編をお届けします。

Why We Play
ギターは自分を自由に表現してくれる、もう一つの「声」
 

インタビュー後編では彼が愛用するCustom Shop Monterey Stratocaster®とJimi Hendrix Stratocaster®について話を聞いた。

―  ジョン・メイヤーはどういうきっかけで好きになったんですか?

尾崎裕哉(以下、尾崎)   ジミヘンを好きになって、彼のフォロワーたちを掘っていくようになるのですが、スティーヴィー・レイ・ヴォーンや、そのキッズであるジョン・メイヤー、フィリップ・セイス、ケニー・ウェイン・シェパードら、いわゆる「テキサス・ブルース・ギタリスト」たちに惹かれたんです。中でもジョン・メイヤーに、ものすごく大きな感銘を受けて。ちょうど『Continuum』(2006年)をリリースした頃で、「ポップスとブルースギターを、こんな風に融合できるんだ!」と思ったら、世界がまた一つ開けた。「俺もジョン・メイヤーみたいな曲が書きたい」って思ったんですよね。さっき話したR&Bやファンクのギターに興味を持つキッカケになったのも、ジョン・メイヤーのおかげです。

―  いわゆるポップ・ミュージックも好きだったのですか?

尾崎   そうです。母親がマドンナや宇多田ヒカルを聴いていたし、世代的にはMr.ChildrenやB'z、GLAY、ポルノグラフィティ、ORANGE RANGE、I WiSH。その時に流行っていたJ-POPも一通り聴いていました。

―  それは意外ですね。自分で曲を作ろうと思ったのは?

尾崎   大学に入って少し経った頃です。結構遅いんですよ。ギターに夢中になり過ぎて、「そういえば曲を1曲も作ってないな」と気づくのに時間がかかってしまって(笑)。とにかく、「音楽をやりたい」というよりも「ギターを弾きたい」という気持ちのほうが、ずっと強かったんですよね。「カッコいいギターソロを弾きたい」と。でも、ジョン・メイヤーに夢中になり、「曲を作ってギターを弾きながら歌いたい」とようやく思うようになりました。。

― 今日、お持ちいただいたCustom Shop Monterey Stratocasterは、相当レアなギターなんですよね?

尾崎   そうなんですよ。LAのビンテージギター・ショップに行ったら、ショーケースに並んでて。その時はすでにジョン・メイヤー・フリークだったから、「これは、自分が、どうしても手に入れなきゃいけないギターだ」と思って。自分のスキルにも合っていないのも分かっているんですけど、「いつかこのギターに見合うミュージシャンになってやろう」と思って頑張っています。でも、考えてみればジミヘンって、自分のひいお爺ちゃんくらいの感じですよね。ジミの息子がレイ・ボーンで、その息子がジョン・メイヤー、そしてその息子が俺っていう。おこがましいですが(笑)。

― 最近、購入したというJimi Hendrix Stratocasterは?

尾崎   これは今回のツアーリハから導入しました。白いギターが欲しかったんですよ。ジミヘンがウッドストックで弾いているのもこの色だし、リヴァースネックにも憧れていたので。Montereyはローズウッドの指板ですが、このメイプルもレトロで良いなと。音も全然違うんですよね。新しいというのもあるし、ピックアップで拾える帯域もこちらのほうが広い。改造したり、カスタマイズしたりしながら使い倒したくなるギターというか。スプリングスやブリッジ、それから内部の細かいパーツもいじりたくなるし。……基本、オタクなんです(笑)。

― 普段、ギターはご自宅のどこに置いてあるのですか?

尾崎   家に作業スペースがあって、パソコンデスクの脇にギタースタンドを置き、いつでもすぐ手にとって弾けるよう、そこに立てかけています。アンプは鳴らせないので、ライン録音してコンピューターの中で音作りをしていますね。他にガットギターやアコギなども置いてあって、作りたい楽曲の雰囲気によって使い分けています。

―  さて、3月22日にリリースされる1st EP『LET FREEDOM RING』は、どんな風に作りましたか?

尾崎   タイトルは、マーティン・ルーサー・キング牧師の演説(「自由の鐘を鳴らせ」)から拝借しているんですけど、テーマは「解放」です。自分自身の存在や、自分の思っていることを世の中に「解放」するという意味を込めて付けました。サウンドはJ-POPで、爽やかに聞き流せるのだけど、よく聴くと斬新なことをしています。例えば、ジョン・メイヤーの1stアルバム『Room for Squares』(2001年)も、一聴するとアコギを基軸としたシンガーソングライターのアルバムだけど、よく聴くと「このポジションで弾くの?」とか、「こんな複雑なコードを使うの?」みたいな仕掛けが詰まってますよね。僕も今作で、いろんなボイシングを使ってギターを弾いてみたので、その辺りも注意して聴いてもらえたら嬉しいですね。

―  では最後に、尾崎さんにとってのギターは?

尾崎   大切なパートナーだし、自分自身を最も自由に表現してくれる、もう一つの「声」でもあります。俺が死んだ時は、少なくともコイツ(Monterey Stratocaster)は一緒に埋葬してほしいですね(笑)。

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尾崎裕哉 使用機材
 
Why We Play

Custom Shop Monterey Stratocaster®
ジミ・ヘンドリックスが1967年のモンタレーフェスティバルにおいて1曲のみプレイし破壊した伝説のストラトを、フェンダーカスタムショップが1990年代に210本限定で製作したモデル。
 

Why We Play

JIMI HENDRIX STRATOCASTER®
右利き用のギターを左手に持ち換えて演奏し、左利きでも弾きやすいように弦を張り直すなど、ジミ・ヘンドリックス独自のプレイスタイルやサウンドをベースに生み出された本モデル。リバースヘッドストックと特別なブリッジピックアップを搭載。リバースヘッドストックにより6弦側が長くなり、タイトな演奏感を体感できる他、1弦側では、より簡単にベンディングやビブラートを楽しめる。ピックアップは、リバーススラントブリッジピックアップを含む、アメリカンヴィンテージ65’シングルコイルピックアップ。70年代スタイルのヘッドストックの背面には彼のシグネチャーが刻まれている。

› JIMI HENDRIX STRATOCASTER®製品ページ


尾崎裕哉
1989年、東京生まれ。2歳の時、父・尾崎豊が死去。母と共にアメリカに渡り、15歳までの10年間を米国ボストンで過ごす。帰国後、バンド活動を開始。ライヴハウスなど現場で、ライヴパフォーマンスの経験を重ねながら、ボストンのバークリー音楽大学の短期プログラムへ参加するなどし、音楽スキルをレベルアップ。 米国で経験したホームレス支援活動や、国際NGO『ルーム・トゥ・リード(RTR)』創設者兼共同理事長のジョン・ウッド氏の活動に触れたことがきっかけとなり、社会起業家を目指すべく慶應義塾大学へと進学する。大学時代は、学業の傍ら、楽曲制作とライブの経験を積み重ねながら、2010年からInterFMで、洋楽紹介番組『CONCERNED GENERATION』、13年から15年まで『Between the Lines』のナビゲイターを務める。2016年に、自伝『二世』を出版し、アーティスト「尾崎裕哉」としては初の音源となるDigital 1st Single「始まりの街」をリリース。そして、生放送のTBS特番『音楽の日』でテレビ初生出演を果たし、瞬間最高視聴率を記録。2017年3月22日、初のフィジカルCD作品『LET FREEDOM RING』をリリースする。また、これまで書きためたオリジナルソングを中心に、「HIROYA OZAKI "LET FREEDOM RING TOUR 2017”」と題した初ツアーを敢行中。

› 尾崎裕哉:https://www.hiroyaozaki.com/