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Why We Play vol.2:うじきつよし インタビュー【後編】

音楽と人、そして楽器。さまざまな表現手段の中から、なぜギターを選んだのか?そんな素朴な疑問にフォーカスを当て、ギタリストの内面に深く迫る連載企画「Why We Play」。うじきつよしさんを迎えたインタビューの後編をお届けします。

Why We Play

そのユニークなバンド名とは裏腹に、TVアニメ『北斗の拳』の主題歌をはじめ本格的なロックサウンドを奏でて1980年代に一世を風靡した、「子供ばんど」のボーカル&ギターうじきつよし。吉川晃司やアンルイスらのサポート・ギタリストを務めた彼は、1990年以降はミュージシャンのみならず、俳優やテレビ番組の司会者など様々な分野で今もなおマルチに活躍し続けている。

インタビュー後編では、子供ばんど活動後のギター&音楽との関わり合いを中心に聞いた。

俺にはロックがある。だから、ここにいられるんだ
 

―  「子供ばんど」で活躍していた時期は、ギターとはどのような付き合い方をしていましたか?

うじきつよし(以下、うじき)   毎日ギターを触っていましたね。ツアーの移動中も小さいギターを弾いていたし、ホテルにチェックインしたと思ったら部屋で弾き始めて。気がついたらギターを抱えて寝てた、なんてこともザラでした(笑)。曲作りや練習のためというのもあったけど、とにかく触っている。触ってないと、なんだか落ち着かないというか。

―  音楽との向き合い方は、その後どんな風に変わっていきましたか?

うじき   1988年の10月に子供ばんどを一度解散して、そこで(音楽を)ぱったりやめてしまうんです。たまに吉川晃司やアンちゃん(アンルイス)に誘われステージには上がることもあったけど、それも年に数回程度。以前に比べたら激減ですよね。「俺、ギター弾かなかったらどうなっちゃうんだろう?」って最初は不安だったんですけど、まあどうにかなっちゃったんですよね。お芝居とか、テレビの司会とか、違う世界が広がったというのもあったんですけど、それはちょっと不思議でした。「ギターって別に毎日弾いてなくても平気なんだ。おかしくなったりしないんだ」って。それもちょっとガッカリしたのかな、ギターから気持ちが離れていた時期も正直あったんですよね。

―  子供ばんどで2,000本やりきって、ちょっと燃え尽きちゃったんでしょうか。

うじき   そうかもしれない。もちろん辛いことも色々あったし、しばらく音楽を聞かなくもなりましたよ。ちゃんと聞き出したのは、90年代の後半か2000年代に入ってからかなあ。つまり下手すりゃ10年くらい、ぽっこり抜けているんですよ。ちょうどその頃って、日本のロックがメインストリームで勝負するようになり、圧倒的にカッコいい音楽がどんどん生まれたじゃないですか。皮肉なことに、その時期全く音楽に興味がなくなっていました。

―  2000年代に入ってからは、自然とまた音楽がやりたくなってきました?

うじき   いや、それでもしばらくは躊躇っていましたね。「まあ自分はもう一生分の音楽をやったと思うし、やらなくてもいいかな」という気持ちがまだあったんです。でも、50歳に近づいてきたら、いよいよリアルに逆算するようになって。「60歳でバンドやってるかなあ。あと10年か。そうするともう本当に一生出来ないのかも」と思ったら、今度は急に焦り始めた(笑)。きっと、「やろうと思えばいつだってバンドなんて出来るぜ」って、どこかで高を括ってたんですね。それが、物理的にタイムリミットが近づいたことで、ようやく加齢に現実味を帯びてきたんでしょうね。後輩のミュージシャンからよく、「うじきさんってバンドやってたんですか……?」なんて聞かれることもあるんだけど(笑)、僕らが演奏している姿を彼らに観てもらって、それから死んでも遅くないかなって。

―  「音楽をやりたい」っていう気持ちは、常にうじきさんの人生の中にあったんですね。

うじき   うん。テレビの司会やお芝居をやっていても、心のどこかで種火が灯っていたんでしょうね。「俺にはロックがある。だから、ここにいられるんだ」って。

それに気がついたなら、「やらせてもらえるうちにやりたい」と。それに、僕が若い頃は「ドント・ビリーヴ・オーヴァー・サーティ」なんて言われてましたけど、今や40どころか60や70になってもバンドやっている先人がたくさんいるじゃないですか。ロック自体がある意味クラシックになってきて。まあ、ローリング・ストーンズやポール・マッカートニーの域にまでは達していなくても(笑)、世の中が、僕ら世代のミュージシャンも許容してくれるようになってきたというか。ファンも一緒に歳を重ねてきたということなんでしょうね。

―  50代、60代の人たちにとっても、ロックが生活の一部になっているというか。

うじき   そうそう。いい時代になったのかなあって。普段は会社で絞られたり、家事に追われて大変だったりするのかもしれないけど(笑)、ライブに来ると、みんな昔の顔に戻っているんですよね。自分たちが音楽をやることで、そういう人たちの役に立てているというのは、すごくありがたいことだし、自分は恵まれているんだなと思います。

―  2011年には子供ばんどを再始動させて、ARABAKI ROCK FEST.に出演したり、2015年にはフジロックに飛び入り出演したり(ROUTE 17 Rock'n'Roll ORCHESTRA)、最近は若いオーディエンスの前で演奏する機会が増えていますよね。今後の展望は?

うじき   今年で僕も60歳。「還暦イヤー」に突入しているので(笑)、何かやらなきゃと思いつつ全然サボってて……(笑)。ぼちぼちちゃんと始動します。最近知り合った連中はみんな若手ですけど、彼らと一緒に何かしらやらせてもらえたら楽しそうですね。

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うじきつよし 使用機材
 
Why We Play

PM-1 STANDARD DREADNOUGHT ALL-MAHOGANY
ParamountシリーズPM-1 Dreadnought NE, All-Mahoganyは、シンプルなスタイリングとオーガニックなフィニッシュを組み合わせた、レスポンスの高いアコースティックギター。トップだけではなく、ボディ、サイドも単板マホガニーを使用し、リッチなサウンドを出力。

› PM-1 STANDARD DREADNOUGHT ALL-MAHOGANY 製品ページ


うじきつよし
1957年、東京都生まれ。子供ばんどのヴォーカル、ギター。1980年、アルバム『WE LOVE 子供ばんど』でメジャーデビュー。88年にライヴ通算2000本を達成、活動休止となる。2011年に再始動。以降、2枚のアルバムをリリース。ライヴも不定期ながらコンスタントに行っている。

› 子供ばんど:https://kodomoband.jp