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Why We Play vol.6:Rei インタビュー【後編】

音楽と人、そして楽器。さまざまな表現手段の中から、なぜギターを選んだのか?そんな素朴な疑問にフォーカスを当て、ギタリストの内面に深く迫る連載企画「Why We Play」。今回はReiさんを迎えたインタビューの後編をお届けします。

Why We Play

2015年にミニアルバム『BLU』でデビューを果たし、早くも“ミュージシャンズ・ミュージシャン”的な地位を築きつつある若きシンガーソングライターRei。インタビュー後編では、フェンダーギターに対する思いや、アーティストとして目指すべき方向性、そして来たる新作についてなどを語ってもらった。

ギターは自分にとって"Best Buddy"、最高の相棒
 

―  Reiさんのデビューミニアルバム『BLU』から、『UNO』そして『ORB』までの3枚は、すべてポートレートをジャケットにした3部作でした。

Rei   人の顔って、すごくインパクトがあって力強いと思います。わたし自身、他のアーティストの作品を探しているときに、自然とポートレートのジャケットを好ん選ぶ傾向があって。というのも、そう作品ってアーティストの人となり…どういう価値観で生きているかとか、そういうものが滲み出ている音楽が多い気がしていて。自分は22歳で初めてCDリリースして今は24歳なんですけど、きっと価値観がすごく変化していく時期だろうなと思っていたんです。そんな、そのときどきの自分を映し出したいということもあって、3部作のジャケットはポートレートにさせていただきました。

―  ジョニ・ミッチェルやポール・サイモン、キャロル・キングなど、ポートレートをジャケットにしているのは“シンガーソングライター”というイメージが強いです。Reiさんも自身をシンガーソングライターだと思いますか?

Rei   そうですね。もちろん"ギタリスト"と呼んでいただけるのもすごく嬉しいですし光栄なことですけど、自分としてはギタリストである前にソングライターであり、シンガーであるという意識なんです。ギターというのは、自分にとっては“Best Buddy”、最高の相棒みたいな。ギターがなければ自分の音楽は成立しないような、切っても切り離せないパートナーなんです。

―  ただの道具とはやっぱり違うんでしょうね。

Rei   擬人化して捉えています。今まで多くのギタリストたちも、自分のギターに名前をつけて呼んできましたよね(笑)。それに、ヘッドやボディ、ネックというふうに、ギターに人間の体の名称が付いているのも、人間っぽいなって感じてしまいます。ギターを弾いている時は、対話しているような気持ちになりますよね。

―  デビュー時と比べて、曲作りの仕方はどのように変化していきましたか?

Rei   今言ったように、自分は"シンガーソングライター"という意識があるので、歌詞はパーソナルなことを書きたいという気持ちがより強くなっていきました。というのも、パーソナルなことを歌ってこそ、マジョリティに対して伝わる力があるんじゃないかという持論があるんです。世の中にはいろんな人がいて、いろんな意見があって、それをすべて汲み取ったようなものって、すごく平均化された、薄まったものになってしまうんじゃないかって思うんです。

―  たとえば?

Rei   たとえば洋服だったら、人気投票で一番かわいいとされた服じゃなくて、私にしか作れない、私にしか似合わないような個性的な服が作りたい(笑)。自分が一番強く思う感情、“ひょっとして、こんなこと考えているのは私だけなんじゃないか?”という感情こそ、みんなが打ち明けられず葛藤している感情だったり、共感してほしがっているトピックだったりするんじゃないかと思うし、そういうパーソナルな音楽が私自身も好きなんです。

―  きっと、そういう曲のほうが反発も強い分、共感する人には強く訴えかける曲になるのでしょうね。

Rei   多くの人たちから"そこそこいいな"っていう風に思われるよりも、数は少なくても200%愛してもらえるような(笑)、そんな人になりたいなって思います。

―  そういう意味で、お手本にしたくなるようなアーティストはいますか?

Rei   ジョニ・ミッチェルは昔から大好きなんですけど、彼女はすごくパーソナルな音楽を作る人だと思います。彼女の音楽を聴いていると、彼女のお部屋で隣に座って秘密を打ち明けられているような、そんな親密な気持ちになるんですよね。私もそういう音楽が作れたらいいなと思います。自分も表現者なので、日々生きている中で感じたこと、吸収したことをすべて音楽として昇華することができるじゃないですか。生きていることすべてが音楽になり得る仕事なので。

"DIY精神"はこれからの活動の中でも体現していきたい
 

―  最新作『CRY』にはZineをつけてリリースしていました。そういう表現方法も、今おっしゃったように“生きているすべてを作品に昇華する”ということのひとつ?

Rei   そうですね。『CRY』では、視覚的なところから音楽にアプローチしてみたかったんです。間口を広げるという意味でも、今は本当に"いい音楽を作っている"というだけで評価されるのはなかなか難しいじゃないですか。いろんな試行錯誤を凝らさないと、音楽に耳を傾けてもらえないくらい、情報が蔓延している世の中ではあると思うんです。いろんな楽しいことがある世の中だから、その中で音楽を選んでもらうため、興味を持ってもらうために、いろんなアプローチをしたい。

―  なるほど。

Rei   わたし自身、素人ではあるけど絵を描いたり、写真を撮ったり、デザインしたりすることも大好きで。たとえば Zineを作ってみて、そこをキッカケに音楽に興味を持ってもらえないかなと思って自由に作ってみました。モノづくりが好きっていうのもあるし、自分の中に常にあるのは"Do It Yourself"なのだと思います。

―  その精神は、デビュー作からずっと変わらず貫かれていますよね。

Rei   今、テクノロジーもどんどん発達していって、すごくコンビニエンスな社会というか。人任せにすることもすごく簡単だと思うんです。お金を払えば何でもアウトソーシングできてしまう。そんな中で、ひとまず自分でやってみる。稚拙でもいいから、自分の体を通してみる。自分のできるところまでプッシュしてみることって、すごく大事なことなんじゃないかって思うんです。その過程で体験できることもたくさんありますし。たとえば、ライブに行って実際に音を浴びる体験というのも、何物にも代えがたいじゃないですか。自分の手で弾く、自分の足で移動する、そういう"DIY精神"はこれからの活動の中でも体現していきたいです。

―  2月にリリース予定の新作はどんな内容になりそうですか?

Rei   アルバムタイトルは『FLY』です。17年7月にリリースした『CRY』の2部作後編という、対になっている作品なんですけど、今回は映像とCDがセットになっている作品です。CRYからのFLY、泣いて挫折して、転んだからこそ飛び立つことができたというストーリーなんです。まだ制作途中なので詳細は言えないんですけど。

―  楽しみにしています。では最後にReiさんが考えるギターの魅力を教えてください。

Rei   わたし自身、すごく自己中心的なところがあるんです。プリンが2つ冷蔵庫にあったら、兄弟がいても素知らぬ顔で2つ食べてしまうような(笑)、独り占めしたくなる人なんですよね。そんな、所有欲を満たしてくれる楽器でもあるんじゃないかって思うんです、ギターって。いつでも持ち歩けてどこでも弾けるし、抱きしめることもできる。ピアノやドラムのように、その場に行かないと弾けない楽器とは違うじゃないですか。いつも自分のそばにあって、こうやってギターを抱きかかえると、"これは僕のギターだ!"っていう気分になりませんか(笑)?

―  Reiさんに触発されて、女性ギタリストがもっと増えると個人的には嬉しいです。

Rei   もっともっとギター文化が盛り上がればいいなって私も思います。そのために何か貢献できることがあれば嬉しいですね。ギターって、すごくファッショナブルなものなんだということも提唱したいんです。デザインもさまざまですし、カラーリングも想像以上にバリエーションがあって。わたし自身もピックガードの色を変えてみたこともありますし、他にもノブやペグ、デカールなどアクセサリーワイズでもいろいろ遊べるんですよ。そういうファッションの一部としての側面も、もっとクローズアップされると嬉しいですね。

› 前編はこちら

 

【Reiが所有するフェンダーコレクション】

Why We Play

■American Original '60s Jazzmaster
50 – 70年代の楽器を復刻したシリーズ「American Original」のジャズマスター。60年代の特徴を再現しつつも、9.5インチラジアスの指板を採用するなど、演奏性において現代的なエッセンスも取り入れている実用性の高いモデル。
› American Original '60s Jazzmaster製品ページ

Why We Play

■Newporter '67
アコースティックツアーでも愛用している本モデルは、中高域あたりが強調された“香ばしいサウンド”が気に入っているという。Telecasterのノイズレスピックアップを取り付け、貼り付けのピックアップとブレンドして、プリアンプで調整しながら音作りをしているそうだ。

■Duo-Sonic II '66
ニューヨークの中古楽器屋で購入したという本モデル、何と火事に遭った家屋から救い出したという、まことしやかな逸話付きだったという。ボディには、その時の煙の跡も付いていたが、中学生の時にブルーに塗装し今も愛用している。


Rei
93年、兵庫県伊丹市生。卓越したギタープレイとボーカルを持つ、シンガーソングライター/ギタリスト。幼少期をNYで過ごし、4歳よりクラシックギターをはじめ、5歳でブルースに出会い、ジャンルを超えた独自の音楽を作り始める。2015年2月、長岡亮介(ペトロールズ)を共同プロデュースに迎え、1stミニアルバム『BLU』をリリース。FUJI ROCK FESTIVAL、SUMMER SONIC、RISING SUN ROCK FESTIVAL、SXSW Music Festival、JAVA JAZZ Festivalなどの国内外のフェスに多数出演。2017年7月、CD+MUSIC BOOK『CRY』をリリース。同月、フランス・ベルフォールで行われたLes Eurockeennesに出演、12月より初のソロアコースティックツアー「Rei Acoustic Tour "Mahogany Girl"」を開催。2018年2月、CD+DVD『FLY』のリリース、3月より全国6箇所のリリースツアー「FLYING R TOUR 2018」も決定。

› Rei:http://guitarei.com

RELEASE INFOMATION
Rei『FLY [CD+DVD]』
CD+DVD|DDCB-12404|1,852+TAX|2018.02.21 Release
前作『CRY』と対になる新作『FLY』は、4曲の新曲を収録したCDと、 MUSIC FILMを収めたDVDによるCD+DVDの仕様にて発売決定。

TOUR SCHEDULE
「FLYING R TOUR 2018」
3月16日(金) 名古屋|JAMMIN'
3月17日(土) 大阪|Music Club JANUS
3月29日(木) 東京|SHIBUYA CLUB QUATTRO
4月06日(金) 札幌|BESSIE HALL ※w/Schroeder-Headz
4月08日(日) 仙台|LIVE HOUSE enn 2nd ※w/Schroeder-Headz
4月13日(金) 福岡|INSA

FLYING R TOUR 2018 -reissue- ※追加公演
4月14日(土) 兵庫|神戸VARIT.