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SANABAGUN.「THUG TOUR」TOKYO レポート

6月23日(金)、東京・恵比寿LIQUIDROOMにて開催されたワンマンツアー「THUG TOUR」ファイナル公演の模様をレポート

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8人組ヒップホップ・グループSANABAGUN.による、全国7都市をまわる自身最大規模のワンマンツアー「THUG TOUR」 のファイナルステージが6月23日(金)、東京・恵比寿LIQUIDROOMにて開催された。

定刻の20時を過ぎると、「SANABAGUN.だ、味わえー!」という恒例の掛け声とともに、メンバーがステージに登場する。その途端、20代の男女を中心とした若いオーディエンスから、地鳴りのような歓声が鳴り響いた。まずは今年4月にリリースした新曲「Yukichi Fukuzawa」からスタート。ジャズやヒップホップを基調としたファットなビートの上で、高岩遼(Vo)と岩間俊樹(MC)が互いに向き合いながら、組んず解れつのガンチンコMCを繰り広げる。

一方、小杉隼太(B)は、American Eliteの5弦ベースBassman 800という組み合わせで、どす黒い低音を次々と繰り出していく。胃がせり上がるようなスーパーローの迫力と、音の輪郭を際立たせるミッドハイのきらびやかさがレイヤーされた、倍音豊かなベースサウンドがとにかく印象的。音数を絞り込んだクールなフレーズが、鉄壁のアンサンブルの中で圧倒的な存在感を誇っている。隅垣元佐(G)は、American Professional Telecaster’65 Super Reverbという組み合わせが生み出すパーカッシヴなギター・カッティングが、ぶっといグルーヴにきらびやかなアクセントを加えていた。

続く「板ガムムーヴメント」は、昨年7月にリリースされた最新アルバム『デンジャー』収録曲。シンコペーションの効いたファンキーなベースラインと、スウィンギンなランニング・ベースがセクションごとに切り替わっていくさまが、とにかくスリリングだ。緩急自在のドラマティックな曲展開に、早くもフロアの熱気は最高潮に上り詰めた。

高速でうねる変拍子混じりのリフを、一糸乱れぬユニゾンでキメる「B-Bop」は、彼らのジャズ魂が炸裂したクールなナンバー。しかしよく聞くと、“この米 気持ち柔くね? 水はこの線までじゃね?”なんて歌詞を歌っていたり、ヴォイス・スクラッチを披露したりと、随所にユーモアや遊び心が覗く。再び「SANABAGUN.だ、味わえー!」と叫んで始まった「SANABAGUN.Theme」は、つんのめるようなシャッフルビートの上で、フリーキーなギターソロが唸りを上げた。

序盤からフルスロットルのステージが、ようやくここでクールダウン。「まさに今、この瞬間。」は、バリトン・ヴォイスでムーディーに歌い上げる高岩と、クールかつ官能的なラップを放つ岩間という、フロントマン2人の“キャラの違い”が引き立つ。タメを充分効かせたベースラインは、スタッカートとレガートを巧みに切り替えながら、楽曲全体のノリをコントロールしていた。続く「HSU What」もメロウな楽曲で、マイルス・デイヴィスの「So What」をモチーフとしたリフが特徴。途中のベースソロは、チョーキングを駆使したハイポジションでの速弾きが、ゾクゾクするほどスリリングだった。

「おっかさーん!」というシャウトでスタートした「Mammy Mammy」は、気恥ずかしくなるほどてらいのない母親讃歌。どこか昭和歌謡を思わせる懐かしいメロディを、高岩がコブシを効かせてソウルフルに熱唱する。田島貴男(オリジナルラヴ)はもちろん、彼が敬愛してやまない矢沢永吉にまでつながるような、そんなコテコテのヴォーカルが再び今、新鮮に響くのが興味深い。

調性を崩したアブストラクトなアレンジと、変則的なリズムパターンがフリージャズのエッセンスをも感じさせる「P.O.P.E」、レゲエやスカを取り入れたバンドアンサンブルが、凄まじいポリリズムへと発展していく「M・S」と、SANABAGUN.の一筋縄ではいかない演奏力/アレンジ能力を見せつけた後、いよいよライブは終盤戦へ。コミカルなMCで笑いを取りつつ、そのままスキャットへと雪崩れ込む「居酒屋JAZZ」、ラテンフレーバーを効かせたアレンジに乗り、スティーヴィー・ワンダーというよりむしろ和田アキ子をも彷彿させる、圧倒的なヴォーカルの「BED」と畳み掛け、空気をバリバリと引き裂くホーン・セクションと、鋼のようなスラップベースが絡み合う「人間」で、本編は終了。

アンコールでは、メンバー全員でマイクリレーする、ブラックユーモアたっぷりの“もう実家帰りなよ”を披露し、セカンド・アンコールでは新曲“ジャバ・ダ・ハット”、超ハードコアな「デパ地下」、そしてJB'sやタワー・オブ・パワーを思わせるような、超ド級のファンキー・チューン「WARNING REMIX」で幕を閉じた。

ツアータイトルに冠せられた「THUG」には、〈凶漢〉〈暴漢〉〈チンピラ〉といった意味がある。渋谷のストリートからの“成りあがり”である8人が、“サグい魂”を心に秘め、アシッドジャズやヒップホップ、昭和歌謡など貪欲に取り込みながら、圧倒的な演奏能力と平成生まれのセンスで作り上げた楽曲の数々。そこにユーモアや遊び心をちりばめ、誰もが楽しめるエンターテイメントへと昇華したステージは、まさに痛快そのものだった。


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セットリスト

01. Yukichi Fukuzawa
02. 板ガムーブメント
03. B-Bop
04. SANABAGUN. Theme
05. まさに今、この瞬間。
06. HSU What
07. Stuck IN Traffic
08. Mammy Mammy
09. P.O.P.E
10. M・S
11. 大渋滞
12. 居酒屋JAZZ
13. BED
14. 人間
―En―
15. 実家帰りなよ
―2nd En―
16. ジャバ・ダ・ハット
17. デパ地下
18. WARNING REMIX

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