#FenderNews / WHAT IS ORIGINAL? studied by HAMA_OKAMOTO #6
WHAT IS ORIGINAL? studied by HAMA_OKAMOTO #6 -Pickguard-
The NAMM Show 2018にて発表された、50〜70年代のフェンダーをリイシューした新シリーズ「American Original」。その誕生を記念し、フェンダーがどのような変遷を辿ってきたのかを各パーツごとに紐解く連載。Precision Bassをメインに愛用し、フェンダーに造詣の深いOKAMOTO'Sのハマ・オカモトを迎え、時代背景やプレイ・スタイルの変化といった考察も交えながらパーツの変遷について軽妙なトークを展開する。
面倒な遍歴があるけど奥が深い
ハマ・オカモト(以下:ハマ) ギターで言うと一番最初のピックガードは何ですか?Telecasterは1プライですよね。
― そうですね。ブラックの1プライから始まったので、その点ではギターとベースは一緒です。
ハマ そもそもピックガードは何かと言うと、ピッキングしたときにボディに傷がつかないようにするためについているプラスティックの板のことで。年代によって形状と色と層が違うという、これまた面倒な遍歴がありますが(笑)奥が深い。“プライ”というのはピックガードの“層”のことです。最初は1プライのブラックピックガードだったと。
― しかもラッカー(塗装)を施してるんです。
ハマ 手が込んでますね。
― 当時はOPB(オリジナルプレシジョンベース)とTelecaster以外は基本的にブラックガードって存在しないですね。
ハマ そのあと、ギターやベースに登場するのが“ アノダイズドピックガード”。わかりやすく言うと、プラスティック製が一時期アルミ製のピックガードになります。劣化すると退色してシルバーになってしまうのですが、それがカッコ良くて未だに好きなんです。 アノダイズドは57年から59年の前半までですか?
― そうですね。だからフェンダーの50sの復刻モデルにもアノダイズドが採用されています。ちなみにアノダイズドにもラッカーを吹いてます。
ハマ そうなんですね! それから59年中期あたりに、指板編でも話しましたが、指板がローズウッドに替わるタイミングでピックガードがべっ甲柄になる。僕らにとっては普通になりすぎてますけど、世間的にはべっ甲柄はあまり馴染みがないのかもしれませんね。中華街にはべっ甲柄のお土産が売られていたり(笑)。
― 櫛とか(笑)。
ハマ べっ甲はつまり亀の甲羅なのですが、ピックガードはべっ甲柄の入ったセルロイド製ですよね。
― 本物のべっ甲ではないんですよね。
ハマ べっ甲柄のピックガードになってからは4プライということですか?
― べっ甲模様/白/黒/白の4プライですね。しかもピックガードを斜めに処理することで層(断面)を見せていると。
ハマ お洒落ですね。1プライから4プライ構造にしたのはルックス的な理由が大きいのかな。高級感でしょうか?
― インレイにこだわりを見せていた他社に対して、50年代の超シンプルなデザインから対抗したんじゃないかなと思います。他社は3プライが普通でしたし。
ハマ なるほど。少し見習い始めた部分もあるのでしょうか。
― 生産の規模感が大きくなっていく過程で、やはり世間の声を参考に取り入れていく箇所はあったのかなと思われます。
ハマ それまでのピックガードが斬新すぎたというか。その反動で伝統的なデザインに落ち着いたということだと思いますが、普通は逆ですよね(笑)。いきなり真っ黒なプラスティック製のピックガードから始まって、アルミ製のアノダイズドになって、モダンな装飾品のようなピックガードになるという。
― 厚みが増すことで、強度面でも強くなるというメリットがあります。
ハマ 確かに。
― 特に1プライのStratocasterは経年変化とともに歪んじゃうんですよね。
ハマ アノダイズドはシールディング効果(信号部分を電気が通る素材で覆い、アースに落とすことで外来ノイズを防ぐこと)もあるんですか?
― ありますね。それによって音も変わります。そう考えると、Precision Bassでシングルコイルからハムバッカーに替わることでノイズを抑えて、同時にアノダイズドピックガードが登場するということは、Precision Bassに関しては57年のタイミングでノイズ対策を始めたと。
ハマ ノイズが気になり始めたということですかね。
― だって加工は絶対に大変だから。
ハマ 手間暇かかりますしね。
― 気合いが感じられますよね(笑)。
サラダチキンがネジで立ってる!?
ハマ Jazz Bassが60年に登場しますが、それも同じべっ甲柄で4プライのピックガードです。ただ、ブロンドカラーやサンバーストではないカラーに対しては3プライ。白が透けていて緑っぽく見える通称“ミントグリーン”です。
― 3プライピックガード(白/黒/白)の真ん中の層の黒が透けて、グリーンっぽく見えているんですね。
ハマ 透けていてそう見えるという。
― 今でこそミントグリーンというカラー名がありますけど、白のピックガードが黄ばみつつ下の黒が透けているという。
ハマ 資料によると、65年初頭までの白/黒/白の3プライピックガードは、白い層が緑がかって見えることから通称グリーンガードと呼ばれ、べっ甲柄の4プライピックガードの白い層と同じ材質だそうです。ピックアップ編でも出てきたCBS以降、つまり65年以降はべっ甲模様の4プライが徐々に出始めて、3プライの白が塩化ビニール製の純白タイプに仕様変更されて質感が変わると。
― 黄ばまない素材に変わるわけですね。いわゆるパーチメントです。
ハマ そういう意味でも60年代中盤までのピックガードには、いい表せない良さがあるというか。これが僕がかねてより訴えている、昔のピックガードは再現不可能問題です(笑)。様々なモデルが出てクオリティはどんどん上がっていますが、当初のべっ甲柄のピックガードには絶対的な魅力があります。楽器自体の再現度は高くても、遠目で見ても“あ!違う!”という印象を持ちますから。
― べっ甲柄のピックガードにはロマンがありますよね。
ハマ 経年変化による微妙な湾曲も再現が難しいというか。
― 縮みますからね。
ハマ そうなんです、ピックガードは縮んでしまうので。縮むって(笑)。
― ハマさんのメインベースもピックガードが縮んで割れちゃってますからね。
ハマ まさしく。楽器を修理するときに外してそのまま置いておくと、縮んで取り付けられなくなるという衝撃の事実(笑)。きちんとビスで留めておかないと、縮んで付けられなくなるという信じられないことが起きます。
― 怪奇現象みたいですね。
ハマ 知らない人にはビックリな事実だと思いますよ。
― ずっと突っ張っていたものを緩めるので、ピックガードを外した時点で縮み始めるんですよ。
ハマ 衝撃を与えると亀裂が入ったりして割れてしまったり。なので、オリジナルでいうと、ボディの傷よりもピックガードが割れないで残っていることのほうが感動します。使用感がある傷は何も気になりませんが、ピックガードに関してはキレイに残っているとすごいなと思いますね。ピックガードは奥が深いというか、僕は一番重要な部分だと思っています。
― そもそもフェンダーのピックガードは面積が大きいですもんね。
ハマ ピッキングのガードというわりにはガードしている部分が多すぎますからね。他社のものはコンビニで売っているサラダチキンみたいじゃないですか。サラダチキンがネジで立っているというか。
― 確かにサラダチキンみたいですね(笑)。
ハマ でもフェンダーのピックガードの大きさはデザイン性ですよね?
― Stratocasterに関しては製造工程の簡略化と機能性ですね。ピックガードにピックアップなどのパーツを全部つけちゃえば、最後にそれ(ピックガード)で蓋をすればいいっていう発想。本来、楽器におけるピックガードはササミ肉程度のものだったのが、フェンダーではボディ全体の約1/2を占めちゃってる。
ハマ ピックガードにパーツがついているわけだからすごいですよね。生産過程を効率化する意味でも大きさは重要だと。
― すべて分業できますからね。
ハマ さっき褒めた4プライピックガードの初期は、経年の感じやべっ甲柄がとても素敵なのですが、70年代に近づくにつれて赤味というか、色合いや柄の細かさも変わって個人的な見解では70年代に近づくほど色が濃くなります。ピックガードを見れば何年代かわかるという境地の人も存在しますからね(笑)。
― べっ甲柄は一枚一枚柄が違うから面白いですよね。
ハマ これこそが個体差というか。僕が楽器を選ぶ上で、ピックガードは重要なポイントなので。特にベースだと余計に面積が大きいですし。
― 表情というか。
ハマ 黄ばんでいるピックガードもニュアンスが絶妙ですよね。出せない色。フェンダーのピックガードは、歴史上にあるものは全部好きです(笑)。個人的にはアノダイズドをもっとフックアップしたい。今から楽器を買う人も、楽器選びの際の引き出しにあるといいですね。最初は見た目がすべてですから。
― 形状が少し違うだけで印象がだいぶ変わりますもんね。
ハマ 正統派のフェンダーが出てきたあとに、歴史として今で言うビザールみたいな楽器が登場するわけじゃないですか。そういう楽器の魅力もピックガードが左右していると思うので、かなり大事な要素だと思います。カッコいい楽器はピックガードが変わっていたりカッコ良かったりする。かなり個性を出すパーツだと思います。
OKAMOTO'S
中学校からの同級生で結成された4人組ロックバンドOKAMOTO’S。 メンバーは、オカモトショウ(Vox)、オカモトコウキ(Gt)、ハマ・オカモト(Ba)、オカモトレイジ(Dr)。全員が岡本太郎好きで、ラモーンズのように全員苗字はオカモト姓を名乗る。
2010年、日本人男子としては最年少の若さでアメリカ・テキサス州で開催された音楽フェス「SxSW2010」に出演。アメリカ七都市を廻るツアーや豪州ツアー、香港、台湾、ベトナムを廻ったアジアツアーなど、海外でのライヴを積極的に行っている。
これまでシングル8作品、アルバム7作品を発表。2015年9月にはメンバー渾身のロック・オペラアルバム「OPERA」を発売。2016年6月3日からは「OKAMOTO’S FORTY SEVEN LIVE TOUR 2016」と題した、キャリア初の47都道府県ツアーを敢行し、ツアーファイナルは日比谷野外大音楽堂にて開催された。
2017年8月2日には約1年半ぶりとなるオリジナルフルアルバム「NO MORE MUSIC」をリリース。また、同年10月には、東京・中野サンプラザにてキャリア初のホールワンマンを開催し、チケットは瞬く間に即完。その後アルバムを引っ提げ全国23か所を回るツアー「OKAMOTO’S TOUR 2017-2018 NO MORE MUSIC」を敢行。
2018年1月28日Zepp Tokyoにてツアーファイナルを開催、大盛況の内にツアーを完遂した。
› OKAMOTO'S:http://www.okamotos.net