#FenderNews / Why We Play vol.15

Why We Play vol.15:ichika【後編】

音楽と人、そして楽器。さまざまな表現手段の中から、なぜギターを選んだのか? そんな素朴な疑問にフォーカスを当て、プレイヤーの内面に深く迫る連載企画「Why We Play」。今回は、独特の奏法と楽曲で、世界を魅了する新進気鋭のギタリスト“ichika”。SNSに演奏動画を投稿し始めてわずか2年ほどだが、インスタグラムのフォロワーはすでに8万人を超えた。しかもその多くが海外のフォロワーだ。ギター/ベースの新しい可能性を切り開こうとしているichikaへのインタビュー。後編ではフェンダーの楽器についてやギターの可能性について聞いた。

Why We Play
ギターは、自分の感情を上手く 伝えられる体のパーツのようなもの
 

―  普段、フェンダーのギターは弾いていますか?

ichika スタジオミュージシャンだった親父がフェンダーのギターをずっと使っていまして、初めて触れたギターがフェンダーなんです。

―  お父さんは何を弾いていたのですか?

ichika Stratocasterです。色は白と黒。メイプルネックでしたね。なので、ギターのきっかけはフェンダーのストラトなんです。ここ最近ですと、1年前ぐらいに川谷絵音さんから76年製のTelecasterをお借りしまして、川谷さんと組んでいるバンド・ichikoroでの演奏ではそのテレキャスを使っています。

―  フェンダーのテレキャスはどうですか?

ichika 普段は別のメーカーのハムバッカーのギターをメインで使っているのですが、そのギターとはハムバッカー、シングルコイルの違いだけじゃなくて、もう完全に違う楽器だなと思いますね。同じギターでも出せる表現の幅が違うんです。フェンダーのギターを持つと、普段使っているギターとは違う曲、違う世界に呼ばれる感じです。

―  フェンダーのギターを持った時はどんな世界に呼ばれる感じですか?

ichika 一言で言うと、温かみですね。とげとげしさがないんです。僕が普段使っているギターで作っている曲は、少し冷たくて、尖っていて、氷のような感じの音が多かったんですけど、フェンダーのギターで同じようなフレーズを弾いても、全然違う表現の曲になるんです。で、テレキャスで弾いていると、訴えかけるような郷愁感が出るんです。ガッていう強い表現じゃなくて、心にスッと入ってくる感じの、そういうニュアンスの曲を作る時に使っていますね。

―  今日はichikaさんのために、American Eliteというシリーズのストラトを用意しました。現代のテクニカルなプレイヤーに則したスペックをフィーチャーしています。指板がフラットだったりノイズレスピックアップを使っていたりと、フェンダーの中でもプレイアビリティにフォーカスしたギターです。

ichika いつも7弦や8弦ギターを弾いているので、久しぶりに6弦を触ります(笑)。(ギターを弾く)指板がフラットなので、タッピングがしやすいですね。指板がフラットじゃないと、タッピングをしようとすると弦が落ちるんです。でもこのストラトは、ちゃんと受け止めてくれるので音が鳴りやすい。そういう意味でも、今の僕の多様なプレイスタイルに向いていますね。あと、ネックも細めでマッチします。

―  このストラトでどんな音を奏でてみたいですか?

ichika 別のメーカーのギターで弾いている曲よりも、もう少し一音一音に間を置いた、休符も置いたりしてみたいですね。あと、やはりいい音を出したいなとか、いろいろ思いますね。

―  インタビュー前編で語ってもらった通り、ichikaさんはプレイスタイルも音楽の発信の仕方も、ギターの可能性を広げているギタリストの1人ですが、ichikaさんから見たギターの可能性って何だと思いますか?

ichika ギターはピアノと違って、一音一音にかけられる感情の情報量がすごく多いと思うんですよね。ピアノは極論、鍵盤を押したら音が出るんですよ。だから楽器を弾けない方でも、ピアノに熟練された方でも、一音に出せる感情の幅って多くはないんです。強弱やアタックくらいなんです。でもギターは、僕が知らないだけで、まだまだいっぱいあると思うんです。それは、一音にかけられる想い、感情の情報量がすごく多いので。単純に弦を押さえながら揺らしたり、押さえる強さ、押さえる位置、ピックの弾く位置だったり…本当に数えればキリがないと思うんです。一音に込められる情報量だけでも多いのに、そこにいろんな音を積み重ねられるので、本当に無限の楽器だし無限の音楽を秘めていると思っています。だから、まだ聴いたことがない音楽をギターなら作れるんじゃないかなと思って、ギターをやっています。でも、ただ新しいだけではダメなんです。新しい音楽・新しい奏法が生まれて、それがちゃんと音楽的であるということが大事だと思います。

―  “音楽的”とは具体的に言うと?

ichika 抽象的な言い方ですが、聴いて本当に感動できるものだと思います。ただすっと流れていくものでもなく、見た目で感動するものでもなく、音として聴いてちゃんとそれが心に伝わるものですね。

―  では、これからギターを始めようとする人にアドバイスをお願いします。

ichika ギターをこれから始める人って、まずはコードを弾いてリードを弾いて、という感じでギターを弾いていくと思うんです。でも、自分の好きなように弾いてみたらいいよって思います。弾き方だけじゃなく楽器の調整、例えば、弦高はどれだけ高くてもいいし、逆に低くてもいいんです。ピックアップの高さも同様です。作りたいと思う音の幅を、自分で狭めちゃいけないんですよ。音楽は本当に正解がないと思うんです。この枠に収まっていないとダメだとか、そういう世界ではないと思うので、言われても気にするなってことなんです。本当に好きなように音楽を奏でればいい。特にギターは手を加えられる幅が大きいので、何でもやってみてよっていう感じですね。

―  最後の質問ですが、ichikaさんにとってギターとは?

ichika これだけしゃべっておいて何なんですが、僕、口下手なんです(笑)。そんな僕にとってギターは、自分の感情を上手く伝えられる体のパーツみたいなものだと思っています。でも、自分の体ほど使い方もまだよくわかっていないんです。だから進化の余地があるし何に化けるかもわからない。そういう進化を、これから一緒に見つめていきたいし研究していきたいなって思うんです。まぁ、不思議な相棒みたいなものです(笑)。

› 前編はこちら

 
 

American Elite Stratocaster® HSS Shawbucker

Why We Play

ノイズレスかつヴィンテージスタイルのサウンドが堪能できる第4世代ノイズレス™ピックアップ、スムーズなフィンガリングを可能とするコンパウンドネックプロファイル、ローフレット部分はモダンC、ネックヒールにかけてDシェイプの形状へと変わるネックなど、高いプレイアビリティを確保しながら伝統的なスタイルとモダンなサウンドを実現。さらに、滑らかでディープなコンター加工、ヘッドストックに刻印されたブラッククロームのロゴ、パーロイド仕様のフレットマーカーなど、細部に至るまでエレガントなスタイルを追求している。
› American Elite Stratocaster® HSS Shawbucker 製品ページ

PROFILE


ichika
突如インターネットに降臨し、クリスタルのようなサウンドと研ぎ澄まされた感性で、日本のみならず海外からも高い注目を集める新たなギターマエストロichika。タイムラインの流れが急峻なInstagramにおいて、彼の投稿する動画の多くが3万再生を超え、世界に衝撃を与え続けている。フレットボードを駆け巡る彼の独創的な奇跡のテクニックによって、想像力を掻き立て感情を揺さぶる瑞々しい楽曲の数々が芽吹いてきた。
› Website:http://ichika-official.com