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Why We Play vol.9:SCOOBIE DO ナガイケジョー インタビュー【後編】

“Funk-a-lismo!(ファンカリズモ)”を合言葉に、日本のファンクシーンを牽引する実力派バンドSCOOBIE DO。そんなSCOOBIE DOのグルーヴの要であるベーシストのナガイケジョーに、ベーシストとしての夢、そしてベース論について聞いた。

Why We Play
ベースって周りに安心感を与える楽器だと思うんです
 

―  インタビュー後編は、ベーシストとしての夢から聞かせてください。

ナガイケジョー(以下:ナガイケ)   いろんな場所で弾いてみたいですね。バンドだけじゃなくて、いろんな人と音楽でコミュニケーションを取れればいいなと思います。あとは"俺はこの音だ"っていうような譲れない境地に辿り着きたいです。

―  まだ辿り着いていない感じですか?

ナガイケ   まだ日々ブレていますね。でも、ブレてるという言い方をするとちょっと弱っちい感じがするんですけど、気持ちっていうのは常に揺らいでいてもいいものだと細野晴臣さんも言っていて。心を迷わされたり、気持ちがブレているというのは、逆に言えばどこかに中心があるわけです。なので、その中心を見つければいいことだし、実はそういう真ん中を見つけることが一番難しいっていうようなことを細野さんは言っていて。論語にも"中庸(ちゅうよう)"っていう"偏らない"という意味の言葉があるんですけど、僕自身"俺は絶対にコレだぜ! イェーイ!"っていう感じの性格じゃなくて、中庸な性格だと思っていて。だからいつも"これで大丈夫?"とか"これじゃちょっとダメかも"とか迷いながらずっとやってきたんです。続けているから言えることだと思うんですけど、いろんなところでブレながらも、自然と真ん中を歩いているから今日があるのかなって思えたりしますね。

―  その中庸こそがナガイケさんのならではのベーススタイルなのかもしれませんね。ライヴではSCOOBIE DOのグルーヴを引っ張っているナガイケさんですけど、ベースの音自体すごく優しくて、人を包み込んであげるようなベースプレイヤーだなぁって感じますし。

ナガイケ   ベースって周りに安心感を与える楽器だと思うんです。ガシガシ、オラオラって弾く人もカッコいいんですけど、今までベースを弾き続けてきて僕自身はそうじゃないなって思っています。自分ではアグレッシヴに弾いてガシガシやっているつもりでも、いつの間にか、その場所を和ませるじゃないけど、輪を作るみたいなものでありたいなって自然となってきたんです。ボーンボーンって低い音を出して『なんか気持ち良く演奏できるわ』っていう風な音を提供するのがベースだし、ベースにしかできないことでもあると思うんです。みんなが輪になって踊れる、そういう輪を作るのがベースの魅力だと思っています。

―  なるほど。

ナガイケ   そして僕自身、ベースという楽器を通じて輪の中に入らせてもらってきたし。今のつながりって全部音楽を通じて、つまりベースと一緒に作ってきたものなので。だからこれからはAmerican Originalという新しい楽器も使いながら、そういう輪をさらに広げていきたいですね。遠巻きに輪を見ている人にも"おいで"って言えるような役割を担えればいいなぁと思っています。

―  ナガイケさんらしいベース論、ベーシスト論ですね。

ナガイケ   ベースって空気感を作る楽器ですよね。ベースひとつでその場所の空気をすごく不安にもさせるし安心もさせる…そういうところに徐々に自分でも気づいていったんだと思います、今までの経験の中で。


ベースは宇宙を鳴らせてしまう気がする
 

―  そんなベースをプレイするときに一番何を大事にしていますか?

ナガイケ   大事なことは周りをよく見ることだと思います。ライヴではプレイヤーはもちろん、お客さんのことも見ていますし、スタジオだったら一緒に演奏する人のことをよく見ますね。つまり、演奏しているのは自分ひとりじゃないっていう意識をまず持つことが、全体のグルーヴを作っていく基本だと思っています。

―  そしてナガイケさんと言えば、今やフェンダーJazz Bassの顔になりつつありますよね。

ナガイケ   単純に僕が好きで使っているだけなんですけどね。ただ、使っていると楽器に似てくるんですよ。メインで使っている74年製のジャズベみたいな人に、自分がなっていっている気がするんです。メインで使っているジャズベって、白黒はっきりつけたがらない音を出すんです。だからすごく周りの音に馴染むというか、いい具合に混ざっていくんです。そういう音の柔らかさ、甘さがすごくいいなって思う時と、だからダメなのかなって思う時があります。それでもっとはっきりさせないとダメなのかな?と思ったりしつつ、結局またこれを使うんです。やっぱり空気感を損なわせないし、自分も安心するんですよね。そして、自分もそういう人間なんです。何でもはっきりさせちゃうと、面白くないなって思っちゃう人間なんです。曖昧なものにすごく興味をそそられるし、"何だかよくわからないけど、この人面白そうだな"とか"何となく好きだな"っていう、その"何となく"みたいなものに、人に対しても音楽に対しても魅力を感じるんですよ。ジャズベに関してもそういう感じが強いです。

―  その曖昧さみたいなものこそ、コンピューターにはない楽器や人の魅力ですよね。では最後の質問ですが、多くの種類の楽器がある中で、他の楽器にはないベースの魅力って何だと思いますか?

ナガイケ   いい声だなって思うんですよね。自分にとってベースが、一番魅力を感じる声質なんです。低くて人を安心させる声質…そんな感覚ですね。だから、ベースを弾いてベースの音を聴いているのが一番気持ちいいんです。あと、直接指ではじいて弾くのもベースの特徴です。直接触って音を出す楽器って、実はあんまりないんです。直接弾くことで楽器との一体感が出るというか、楽器を弾くことで全部が…自分の体も、その体が触れているステージや、その下にある土や、土から生える木や、木が伸びる空…ベースをボーンって弾くと全部が鳴っているように感じるんです。いずれにしても、指先から全部をつなげる音を鳴らせるのがベースの魅力なのかなって思います。

―  まるで宇宙を鳴らしているというか、世界を鳴らしているみたいな?

ナガイケ   ええ。そしてそういう感覚になる時って、すごくいい演奏をしている時だと思うんです。遠くまで鳴っているなっていう感じ。ちょっとスピリチュアルな話ですけど、いい演奏をした時って亡くなってしまった仲のいい友達のことを想ったりするんです、"今聴いているなアイツ"みたいな。

―  4本しか弦がないのに不思議ですよね。

ナガイケ   フレット数も少ないので音域も広くないわけだけど、自分の感覚で言うと、宇宙を鳴らせてしまう気がするんです。そして、それがベーシストとしての夢かもしれないですね。全部を鳴らせるような究極の音を鳴らしたい。漠然としていますね、これもまた(笑)。

› 前編はこちら

 
Why We Play

ナガイケジョーが所有するフェンダーコレクション

American Original ‘70S Jazz Bass®
ナガイケの新しい相棒となるか!?スラップを多用する曲を中心に使用し、これから育てていきたいとの弁。
› American Original ‘70S Jazz Bass®製品ページ

Jazz Bass®(74年製)
SCOOBIE DOに加入する際に購入したメインベース。ライヴ、レコーディングをほぼこの1本でこなす長年の相棒。

Precision Bass®(73年製)
サンバースト。フラワーカンパニーズのグレートマエカワ氏の影響で購入したもの。ファンク色の濃い曲のレコーディング等で使用。


SCOOBIE DO
95年結成。メンバーは、コヤマシュウ(Vo)、マツキタイジロウ(Gt)、ナガイケジョー(Ba)、オカモト “MOBY” タクヤ(Dr)。ROCKとFUNKの最高沸点“Funk-a-lismo!”を貫くサムライ4人衆。“LIVE CHAMP”の名に恥じぬその圧倒的なライヴパフォーマンスと、完全自主運営なインディペンデント精神があらゆる音楽ファンに熱烈な支持を受けている。
› http://www.scoobie-do.com