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SID TOUR 2017 「NOMAD」レポート

2017年11月21日(火)中野サンプラザにて行われた、『SID TOUR 2017 「NOMAD」』の模様をレポート

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3年半ぶりにリリースした最新アルバム『NOMAD』をひっさげ、9月23日の千葉・松戸公演を皮切りに北は札幌、南は福岡まで日本各地を廻った全国ホールツアー。その14公演目となるこの夜は、再会を謳った最新アルバムのオープニングナンバー「NOMAD」でスタートした。

そこからたっぷりと2時間強、曲間のMCでは、この日の会場である中野サンプラザにまつわるマオ(Vo)の思い出話などを交えながら、バンドは『NOMAD』 の全10曲に懐かしい曲の数々も織り交ぜた全20曲を披露した。そして、ステージの4人と彼らが繰り広げる熱演に声を上げ、コブシを挙げ、「Dear Tokyo」のようなアップテンポのロックナンバーでは激しいヘッドバンギングで応えるファンの交歓は、『NOMAD』同様に彼らが再び会うことを誓い合う「普通の奇跡」で幕を閉じた。

明希(Ba)、ゆうや(Dr)とともに演奏を務めたShinji(Gt)がこの日、使用したギターは「硝子の瞳」などで効果的に使っていたアコースティックギターを含め計5本。中でも一番活躍していたのは、今回のツアーから導入し、この日もフュージョンっぽい魅力を持った「KILL TIME」の他、計11曲でプレイしたフェンダーのAmerican Elite Stratocaster HSS Shawbuckerだった。

中音域をしっかり聴かせるその音作りは、印象的なオブリを織り交ぜながらリズミカルにかき鳴らした「KILL TIME」のカッティングは曲調に相応しい温もりを加えていた。また、ノスタルジックなメロディーが聴き手それぞれの遠い記憶を刺激する「螺旋のユメ」で、カッティングの粒立ちが潰れずに一音一音際立って聴こえたのは、歯切れのいいプレイに加えそんな音作りによるところも大きかったように思う。そして、「泣き出した女と虚無感」でShinjiはブルージーとも言えるギターソロを披露したが、泣きをたっぷりと含みながら、音色がウェットになり過ぎないところにギタリストとして型にはまらない個性が感じられた。

この日、彼らは大半の曲で、いわゆるウワモノとして同期のシンセを効果的に使っていたが、「MUSIC」では音色を歪ませながら、シンセのフレーズから抜けてくるファンキーなShinjiのカッティングの粒立ちの良さをアピール。続けて演奏した「V.I.P」では乾いた音色のリズムギターを小気味良くかき鳴らしながら、ソロも情感たっぷりにプレイして、今度は艶っぽい音色の魅力も印象づけた。

歪みも含め、耳に心地いい音色を作ることを重視しながら、曲調の幅広さに応える音作りを実践しているShinjiにとって、多彩な曲の数々をステージで演奏する際、曲ごとにギターを持ち替えることなく、ライブの流れを途切れさせずに演奏するなら、ハムバッキングからシングルコイルへと簡単に切り替えられるAmerican Elite Stratocaster HSS Shawbuckerは理想のギターと言えるのかもしれない。『NOMAD』におけるバンドの挑戦が楽曲の幅をさらに広げたことを考えると、1本で幅広いトーンバリエーションが可能になるこのギターは、Shinjiにとってこれからもっともっと大きな存在になっていきそうだ。

最後の「普通の奇跡」では、同期のストリングスに負けずに生音に近い音色でアルペジオを一音一音しっかりと聴かせたあと、無骨な音色でリズムギターをかき鳴らした。

ちなみにこの日、Shinjiはもう1本、新たに導入したAmerican Professional Stratocasterを「嘘」のみで使っていた。重量感のある単音のフレーズを奏でたその曲では、リズム隊の2人とともに楽曲のボトムを支える役割を担っていたのだった。


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