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SID TOUR 2019 -承認欲求- FINAL レポート

SIDが11月21日(木)東京国際フォーラム ホールAにて、全国ホールツアー「SID TOUR 2019 -承認欲求- FINAL」を開催。その模様をレポート。

SID

“あなたをあなたと認めてくれるものは何ですか 僕たちは誰ですか? あなたは誰ですか”オープニング、ステージを覆う紗幕に観客への問い掛けが浮かび上がる。ライヴがスタートすると、雑踏のSEをバックにさまざまなSNSのアイコンが表示され、自分を自分たらしめるものは何なのか、観る者は否応無しに自問する。一瞬の静寂を置いて、奏でられたのは「承認欲求」。スクリーンには鈍色の空と歌詞が映し出され、そのコンセプチュアルなステージが視覚と聴覚をダイレクトに刺激する。

紗幕が上がり、Shinjiの色気あるフレーズで始まったのは「see through」。Shinjiはイントロで粘りのあるクランチを鳴らし、歌が始まるとソリッドなクリーントーンでタイトなカッティングを刻む。手にしたギターはオレンジメタリックカラーが映えるAmerican Elite Stratocaster HSS Shawbuckerだ。こちらの愛機は2017年の『SID TOUR 2017 「NOMAD」』から導入したもので、中音域をしっかりと聴かせる音作りはSIDの多彩な楽曲において抜群の“抜け”を誇り、バンドアンサンブルにも馴染むように溶け込んでいく。HSS仕様のピックアップにより厚みのある音から歯切れの良いカッティングまで幅広く対応できるスペックは、楽曲ごとの最適なトーンを模索するShinjiにとってベストマッチと言えるだろう。

難解なキメを華麗に合わせてみせたライヴ定番曲「螺旋のユメ」では手拍子が巻き起こり、高速カッティングとスラップで高揚感をあぶり出す「MUSIC」では、盛大なシンガロングとともにフロアが波打つように揺れる。激情のパフォーマンスから一転、ミディアムテンポの「2月」「手」「淡い足跡」では流麗なメロディーを紡ぐ。情感に訴えかけるマオの歌声は、どこまでも届くように伸びやかで、弾力すら感じさせる。これらの楽曲においてもAmerican Elite Stratocaster HSS Shawbuckerの存在感は際立っており、「淡い足跡」では深淵なリバーブも相まって、純度の高いクリーントーンを響かせていた。

この日のために作ったという新曲「delete」。疾駆するビートが特徴で、セット全体に映像を投影したステージで聴き手に強烈なインパクトを残す。勢いそのまま「Trick」へ。Shinjiはここで、今ツアーから投入したフェンダーのMade in Japan Modern Stratocaster HHを手にする。オールブラックで2基のハムバッキングを搭載したモダンスペックで、重厚な音の壁を作り上げ、抜けの良いドライブサウンドがくっきりとした輪郭でオーディエンスの耳に届いていた。ライヴの景色を変えたい時など、今後もSIDにとって欠かせないギアになりそうだ。

プリミティヴな音世界に酔いしれる、アコースティック編成の「ポジティブの魔法」では、曲中にマオがメンバーを見つめたり絡んだり、“このツアーで一番ふざけました”と思わず苦笑するほどアットホームな雰囲気に。“久々すぎてドキドキする”と話した哀愁漂う「青」、メランコリックな旋律の「Blood Vessel」。牙を剥くような「プロポーズ」ではShinjiがHSS仕様にモディファイされたサンバーストカラーのFENDER CUSTOM SHOP製 Postmodern Stratocasterを手にした。「park」ではワーミーなどトリッキーなエフェクトも使い、観客もそれに応えるようにヘッドバンキング。

ケルト音楽を昇華させた異国情緒溢れる「その未来へ」ではShinjiが10年ほど前に購入した お気に入りの個体だというFENDER CUSTOM SHOP製 Telecasterが登場、歯切れの良いテレキャスターサウンドでアクセントを加えていた。メンバー全員と観客で大合唱し、一筋の光が差し込むようなドラマティックな空気を生み出す。本編ラストは「涙雨」。再び紗幕が下りると、雨の映像とともに、歌詞がまるで雨のように降り注ぐ映像が。ストリングスとピアノの音色に、和テイストを感じさせる叙情的なメロディー、“静と動”を行き来するようなサウンド。“壊れた私でも ずぶ濡れの 私でも 手離さないで”。美しくも儚いステージに誰もが引き込まれている様子だった。

アンコール、Tシャツ姿で再び姿を現したメンバー。“こんなに盛り上がる曲になるとは思わなかった”とマオも驚いていた「デアイ=キセキ」では、この日一番の多幸感に包まれ、ロックンロールな「循環」、突き抜けるような明るさを持つ「ドラマ」「エール」で盛り上がりは最高潮に。

そしてラスト、冒頭の問いかけに対する答えが紗幕に浮かび上がる。 “全てを吐き出した真ん中のまんなかに残るもの それがあなた あなたが認めたあなたに認めてほしい それが僕たちの承認欲求” メンバーの背中を押す大きなクラップの中、振り絞るように声を出すマオ。観客の想いとSIDの想いが重なり、溶け合い、色彩豊かなサウンドスケープを生み出す。

名残惜しそうに、客席へと歩み寄るメンバー。“いろいろなことがあった。でも、みんなとだったら進んでいけることが心に沁みたツアーでした”とマオは感謝を述べる。その表情には、本ツアーで得た確かな手応えがうかがえた。

2020年5月9日(土)10日(日)、河口湖ステラシアターにて「SID LIVE 2020 -Star Forest-」を開催することを発表したSID。挑戦をやめない彼らの姿に、今後も注目したい。


SID

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セットリスト
01.承認欲求
02.see through
03.螺旋のユメ
04.MUSIC
05.2月
06.手
07.淡い足跡
08.罠
09.delete(新曲)
10.Trick
11.ポジティブの魔法
12.青
13.Blood Vessel
14.プロポーズ
15.park
16.その未来へ
17.涙雨

ENCORE
01.デアイ=キセキ
02.循環
03.ドラマ
04.エール
05.君色の朝


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